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14.14-14 仕上げ14

   ズドォォォォン!!

   ズドォォォォン!!

   ズドォォォォン!!


「こんな感じぃ?」どやぁ


「……相変わらず作業が早いわね……」


 ワルツに言われたとおり、ルシアは作業をこなした。"駅"の地底に3箇所ほど、水平に大穴を穿つという作業だ。

 

 サイズは、大木がすっぽりと填まるくらいの大きさで、穴の入り口には、大きな蓋が取り付けられていた。まるで密閉容器か、あるいは潜水艦の機密扉のような蓋だ。そこまでの作業を一瞬でこなしてしまうのだから、ルシアの魔法技術は大したものだと言えるだろう。


「これ、何に使うの?」


「んー、まだ本当に予想通りに使えるかどうか分からないから、ちょっと実験」


 ワルツはそう口にすると、地上から転移してきてあった大木の一本を、ルシアが開けた大穴の中に放り込む。小柄なワルツが軽々と大木を持ち上げて移動させる様子は、何かの冗談かと思えるような光景にしか見えず……。その様子を見ていたクラスメイトたちは、開いた口が塞がらない様子だった。まぁ、彼らの場合は、ルシアが高度な魔法をバンバンと連射していた段階で、既に顎関節症(?)に陥っていたようだが。


「この穴の中に、大木を放り込んで……」


 大木を一本丸々、穴の中に運び入れた後、ワルツは何度か扉の形を修正して、扉の機密具合を調整してから扉を閉じ、閂をして……。その後で、扉の表面に魔法陣を描いた。彼女が得意とする転移魔法陣だ。


「お姉ちゃん、何してるの?」


 転移魔法陣を見たルシアが、不思議そうに問いかけると、ワルツはニヤリと笑みを浮かべながら、返答は口にせずにこう返す。


「えっとさ、アーティファクトじゃなくて、普通の魔石、持って無いかしら?」


「普通の魔石?こんなの?」ブゥン……ズドンッ!


「いやいや、そんなに大きい奴じゃなくて、もっと小さいやつ。その辺の魔物から取れるくらいの小さな奴が良いんだけど……」


「その辺の魔物さんって、魔石なんて持ってたっけ?記憶に無いんだけど……」


「まぁ、小さい魔物なんて、そう狩らないし、勝手も解体(ばら)さないものね……」


 と口にしながら、ミッドエデンには、狩りから解体までを喜々として行う人物がいた事を思い出すワルツ。ワルツたちが狩りをする時は、その人物が解体をしていたので、ルシアは魔物が魔石を持っている事を知らなかったらしい。いや、知っていても、実物を見たことが無かった、と言うべきか。


 さて、どうしたものか……。悩むワルツだったが、ルシアが持ち出した巨大な魔石を見て、ふと疑問に思う。


「っていうか、その巨大な魔石、この前、迷宮を攻略したときに、スケルトンを倒して得た奴よね?どこに仕舞っていたの?」


「えっと、ポテちゃんの部屋?」


「あぁ、あの格納庫ね……。確かに、あそこなら無駄に大きいから、仕舞えるか……」


 などと、ワルツとルシアがポテンティアの格納庫(じしつ)の話していると、その持ち主であるポテンティアが近付いてくる。


『ご所望の品はこちらでしょうか?』


 どうやら彼は、2人の話を聞いていたらしく、ほどよい大きさの魔物の魔石を2、3個持っていたようだ。


 ワルツはその内の小さい方を受け取る。


「んー、多分、このくらいの大きさがちょうど良いと思うわ?ありがと。ポテンティア」


 ポテンティアに感謝の言葉を口にした後、ワルツは受け取った魔石を魔法陣の真ん中へと組み込んだ。


 余談だが、本来、魔法陣の中央部に、魔力のバッテリーたる魔石を組み込むことは無い。転移魔法陣を例に挙げれば、転移魔法が発動した瞬間、魔法陣の範囲内になる物質はすべて転移されてしまうので、魔石も転移して消えて無くなるからだ。火魔法の魔法陣も、氷魔法の魔法陣も同じ。もしも魔法の発動中に魔石が無くなってしまえば、魔法陣の動きは不安定になり、何が起こるか分からない不安定な状況に陥ってしまうのである。


 ワルツもそれは分かっているはずだった。実際、普段、転移魔法陣を使う時、彼女は魔法陣の端の方に、アーティファクトを設置するのである。


 しかしそれでも魔法陣の真ん中に魔石を組み込んだ理由はただ一つ。魔法陣を中心として、魔法が発動する——わけではないからだ。


 更に言うと、ワルツの魔法陣には、もう一つ変わった特徴があった。その変化に、ポテンティアが気付く。


『ワルツ様?これが転移魔法陣だとすると、ペアになる魔法陣はどちらにあるのでしょうか?』


 ポテンティアから見る限り、ワルツが作った魔法陣は、扉に描かれた1つ分しか見えなかった。本来、転移魔法陣というのはペアの存在のはず。ならもう片方はどこにあるのか……。


 そんなポテンティアの疑問に対するワルツの答えは、とてもシンプルなものだった。


「えっ?ここに2つあるわよ?」


『「……えっ?」』


「二重に書いたのよ。転移魔法陣。入り口と出口って、上手い具合に線を重ねること無く、二重に描くことができるのよ」


 魔法陣の動作に影響が出ない程度のレベルで、形を少しだけ変形させれば、形状的に二重に描くことが出来るらしい。


「魔力の元になる魔石は1個だけで、動く魔法陣は2つ分、ってわけ。なかなか考えたでしょ?」


『えっと……すみません。僕には、この魔法陣がどのように動くのか、想像出来ないのですが……』

「うん……」


「ふっふっふ……でしょうね」にやり


 どうやらワルツとしては、かなり自信のあるらしい。それゆえか、彼女はメカニズムを説明することなく——、


「ちょっと、ミレニア?来てもらえるかしら?」


——早速、被験者を呼ぶことにしたようだ。実際に動作を見てもらえば、理解してもらえると考えたようである。


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