14.14-05 仕上げ5
「水没が無しなら……やっぱ、爆破じゃね?」
「あっ、この前、テレサさんが作ってたようなやつを使わけね?」
「あぁ、木をなぎ倒してた時に使ってたやつな?確かに、大木が入るくらい大きな筒を作って打ち出せば、上まで届くかも知れないな」
「いや、それだと木がボロボロになるんじゃないか?爆発の衝撃で粉々になりそうだ」
「そもそも、そんな強い火魔法なんて、誰が使えるんだよ」
「それに、音がうるさいから、耳がおかしくなりそうだし……」
「筒の作りが脆かったりしたら、暴発するかもしれないよね……」
「近隣住民の迷惑にもなりそうだし……」
「ダメだな。使えないな」
「ダメね。使えないわ」
「うん、ダメだ」
「ダメダメだね」
「そんなにダメダメ言わなくたって良いのに……」げっそり
学生たちは、地底から地上まで木材を移動させる案について話し合った。しかし、どのアイディアも破壊的なものばかりで、危険が伴う可能性が高く……。あるいはトンネルの再利用が望めなかったり、そもそも実現可能性の低いアイディアが乱立するなど、散々な内容だったようである。総評するなら、最初にミレニアが出した水を使った作戦が、トンネルの再利用はできないものの、最も現実的な案だと言えた。
これなら、本来のプランを切り出せるかも知れない……。ワルツは内心でホッとしながら、事前に用意していた転移魔法陣について、話を切り出そうとタイミングを見計らった。と、そんな時。
「なぁ、ミレニア。さっきのお前の話……水を使った木の搬送のアイディアなんだが、あれ、工夫すれば使えるんじゃないかって思うんだよ」
騎士科のジャックがそんな事を口にする。
対するミレニアは、眉を顰めながら、ジャックに反論した。
「でも、一度、トンネルを水で満たしてしまったら、もうトンネルは使えなくなっちゃうわよ?」
「そりゃその通りなんだけどな……。水を排水する方法を考えれば良いだけなんじゃねぇかって思うんだ」
「「「水を排水する方法……」」」
「よっぽど、爆破とか打ち出すとか、危険な方法を考えるよりは、簡単に実現出来るんじゃね?」
ミレニアだけでなく、クラスメイトたち全員が一斉に反応して、頭を働かせる。逆にワルツの内心には暗雲が立ち込めた。
「排水する方法もそうだけど、水を入れる方法は?水魔法?無理でしょ」
「近くの川を引っ張ってくれば行けるんじゃね?」
「あ、それだ!じゃぁ、問題は、排水だけだな」
「海まで穴を掘って、捨てれば良いんじゃねぇか?」
「いやいや、ここの高さが、海の高さよりも低けりゃ、逆に海から水が入ってくることになるぞ?
クラスメイトたちの間で議論が繰り広げられて、ワルツが人知れず戦々恐々とする中、誰か影の薄い人物がポツリとこんなことを呟いた。
「……地中深くに捨てれば良い」
「「「!」」」
そのアイディアを誰が言ったのかは定かでないが、皆の頭の上にエクスクラメーションマークが浮かび上がる。水を海に捨てるよりは、確実だと思えたからだ。
「だけど、更に深い穴を掘ったとしても、いつかは一杯になるよな?」
「どうかしら?もっと深く掘ればいいんじゃない?
「もっと深く……?地下には何があるんだ?」
「知らないな。知らないけど、大きな空洞が空いてるとか、別の世界があるとか、色々言われてるな」
「なるほど。そこに捨てちゃえば良いってことね?」
「つまり——」
ミレニアが総括する。
「この"駅"に2つ水門を作って、一つは近くの川から水を流し込む水門で、もう一つはもっと地下深くに水を捨てる水門にする、と。そして、一つ目の水門を開けて水を入れて、穴の中一杯に水を満たして木を地上まで上げたら、木を水から引き上げて……それが終わったら、今度は二つ目の水門を開いて排水して、"駅"を再利用する、ってことね」
「ああ」
「良いと思うぜ」
「それが良いわね」
「それ以外に思い付かねえ」
「転移魔法が使えれば簡単なんだけどな」
「転移魔法が使えるんだったら、最初から使ってるだろ。そもそも、学院からここまでトンネルを掘る必要も無いしな」
「だよな」
「んだんだ」
「(ちょっ……完全に言う機会を失っちゃったんだけど……)」
ワルツは遂に転移魔法陣が使えることを言いそびれてしまった。
結果、彼女は開き直る。
「うん、それで行きましょ!」
「「「「『えっ』」」」」
事前に話を聞いていたルシアたちは、ワルツの発言に耳を疑った。だが、ワルツがやるというので、反論は出来ず……。皆、納得できなさそうな表情を浮かべながらも、クラスメイトたちのプランを受け入れることにしたようである。
この物語に、普通にやる、という選択肢は存在しないのじゃ。
まぁ、言うまでもないことかも知れぬがの?




