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14.13-49 売買 7

「(なんだ……これは……)」わなわな


 ドエルは、木材を前にして打ち震えた。彼が想像していた木材と、中庭に置かれた木材とは、雲泥の差で大きく異なっていたからだ。()()()学生たちが作った木材など、3流にも満たない素人が木を切っただけの丸太か何か、あるいは拾ってきた小枝のようなものだと思っていたというのに、そこにあった木材は、まるで職人が丹精込めて仕上げたように、綺麗に製材された立派な木材。いや、むしろ、芸術品とすら形容できた。文字通り、ドエルの常識の外にある代物だと言えたのだ。


「(すべての木材がまったく同じサイズに切られていて、しかも曲がりがない……だと?!どれを見ても、枝が付いていた節も無いじゃないか!しかも、シルクのように白くてキメが細やかで……)」


 口には出さずにそんな事を考えながら、ドエルは木材へと歩み寄っていく。その足取りはおぼつかない。まるで酩酊しているかのようだ。


 そして、木材へと辿り着いたドエルは、震える手の甲で木材を二度ほど叩いた。


   コンコーン……


 その音は、木材とは思えないほど、中が詰まった音だった。木のようなやわらかい音というよりも、まるで金属のように甲高く響く音だ。


 だというのに——、


「(ふんっ……ん?軽い……だと?!)」


——端を持ち上げた木材は軽く、普通の木材のようだった。


「(この世にこのような木材があるなんて……。いやはや、これは困りましたね……)」


 ドエルは悩んだ。彼の知識や経験では、目の前の木材に金額を付けられなかったのだ。


 それは商品として失格なことだった。商人が商品を見積もれないなど、品質が悪過ぎる品物であることが殆ど。逆に、良い品物を見積もれないというのは、単純に経験不足でしかなかったのである。


 ドエルは、レストフェン大公国の王城に出入りするほどの大商人。カッパー商会の会長なのである。そんな彼が見積もれないとなれば、それは、彼だけの問題では無く、商会自体の経験不足を意味していた。


 だからといって、適当に金額を決めるわけにもいかず……。ドエルは表情に出さないまま、内心で必死に頭を働かせた。


「(まさか、ジョセフィーヌ様は、目利きが出来ない私の事を、城から追い出そうとしているのですか?いえ……それは考えすぎですね……。もしも私の事を追い出そうというのなら、もっと直接的な手段に出ているはずです。……そういえば、先日、この町を、たった2人の獣人たちが襲って、無理矢理開城させたという噂を聞きましたが……もしやこの中の誰かが……?先ほどの敵襲騒ぎもそうです。おそらく、彼女たちが渦中の人物なのでしょう。そんな彼女たちと私とを引き合わせるとなると……特に裏は無く、純粋に見積もりを求めているのでしょう)」


 ドエルは一瞬で、様々なことを考え、事情を把握しようとする。どこかに落とし所が無いかを探そうとしたのだ。


 しかし、時間は無情で待ってはくれない。考えるあまり、黙り込んでいたドエルに対し、ジョセフィーヌが問いかけたのだ。


「どうなのですか?ドエル。見積もれましたか?」


 ジョセフィーヌが、どこか不安そうに、催促する。ドエルはいったいいくらで木材を買い取るのか、あるいはトンデモなく安い金額の見積もりをしないか、彼女は心配していたのだ。


 結果、上手い落とし所を見つけられなかったドエルは——、


「……申し訳ございません。私の勉強不足で、今すぐここで見積もることは困難です」


——と白旗を上げた。


「「「「「「『えっ……』」」」」」」


「……正直に申し上げます。ここまで高品質な木材を見たことがありません。素材として市場に出せば、おそらく、一般的な木材の10倍……いえ、もしかすると20倍かそれ以上の金額で売れるのではないかと思います。ただ、先に述べましたとおり、ここまで高品質な木材は、市場には出回ってはおりませんので、適正な金額を決めるには、少々お時間が必要かと思います。もしも急いでおられるようでしたら、相場の20……いえ、25倍ですぐに購入させて頂きます」


 ドエルのその言葉に、その場にいた皆が黙り込む。中でもぐうの音すら出なかったのはジョセフィーヌだ。彼女はつい先ほど、ワルツたちの木材を、市場価値の2倍で買い取ると言ったばかりだったからだ。


落ちの書き方のテスト中なのじゃ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2960/2960 ・お、オチのオチオチのテストですと [気になる点] 25倍か。すごいですね。……じゃなくてよく出せた。よくぞ倍率算出できた。おめでとうございます。 [一言] あちこち…
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