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14.13-39 伐採作業(改)4

   ミシミシミシ……ズドォォォォン!!

   バキバキバキ……ズドォォォォン!!

   メキメキメキ……ズドォォォォン!!


 学院に隣接する森の木々が、大きな音を立てながら次々に倒れていく。ワルツたちが作ったワイヤー式の伐採道具と、人力による伐採、そして魔法を使った伐採によって、昨日とは比較にならない速度で木が倒されていたのだ。


 その様子に気付いた学院の学生たちは、廊下や教室の窓から外を食い入るように眺めていた。具体的には、皆、外の景色から目が離せない様子で、口を開けたまま固まっている、といった様子だ。バッタンバッタンと、次々に大木が倒れていく様子は、誰の目から見ても異様。困惑しない方が難しかったのである。


 状況はそれだけに留まらない。倒された木材が次々にグラウンドへと運び込まれていったわけだが、その量が尋常ではなかったのである。


 大木が倒された分、グラウンドには大木が積み上げられていたわけだが、その量は最早、小山、と表現できるほどの高さがあった。現在は、授業が始まってからおよそ1時間ほど。それでも大木はかなりの高さまで積み上げられていて、建物で例えると3階ほどの高さはあった。薬学科の双子の姉妹が駆る木材運搬がグラウンドまで大木を運んでくると、それをポテンティアが持ち上げて、順次、上へ上へと積み上げていたのだ。


 授業開始から2時間ほど経過した頃には、学院中の授業が止まっていた。見慣れているはずのグラウンドの景色が、まったく見えないどころか、学院の周りの景色すら見えないほどに大木が積み上げられていて、学院内全体が大騒ぎになっていたのだ。


 それでもなお、ワルツたちの伐採は止まらなかった。大木が生えている場所は、学院外周部に限定したとしても、非常に広域。伐っても伐っても、大木は無くならないからだ。


 凄まじい量の大木が積み上げられていた理由は他にもある。ワルツたちは、ある程度、自重を止めて、伐採作業に関与することにしていたのである。


 結果、新しい伐採道具を得たクラスメイトたちは、ワルツたちからの全面的なバックアップを得て、次から次へと大量の大木を伐り倒していた、というわけだ。


「ふ……ふひっ!」ゆらゆら


「あっ……ハイスピア先生が壊れた」


 午前中の作業——もとい授業が終わり、森の中からハイスピアが戻ってくる。そこで彼女は、グラウンドに聳え立っていた光景を見て、謎の声を漏らしてユラユラと揺れ始めてしまう。どうやら、現実が受け入れられなくなり、現実逃避を始めたらしい。


 ハイスピアに続いて森から出てきた特別教室のクラスメイトたちも、ハイスピアほどではないが、彼女と似たような反応を見せていた。空高く積み上がった大木を見て呆然としたのである。いままで作業に熱中していたがために、伐った木がどうなったのか知らず、今になってようやく気付いたのだ。


 空高く積み上げられた丸太の山を見て、ミレニアが感嘆の溜息を吐く。


「随分……伐ったわね……」


 幼なじみのその言葉を聞いて、ジャックが異論を口にする。


「まてまて、ミレニア。驚くところはそこじゃないだろ。どうやって積み上げたんだ、とか、どうするんだこれ、とか、色々突っ込むところはあると思うんだが?」


「そんなこと言ったって、目に見えているものが事実でしょ?これからのことは、これから悩めば良いのよ」


「お前……順応力があるな……」


 ミレニアの言っていることは分かるが、彼女は元々、こんなにも強かな人物だっただろうか……。ジャックは内心で引っかかりを感じつつ、他のクラスメイトたちの反応を確認しようと周囲を見渡した。自分の他にも似たような考えを持つクラスメイトがいないか、探そうとしたのだ。


 だが、彼の予想とは裏腹に、大木を見上げていたクラスメイトたちの反応は鈍かった。むしろ、鈍いというよりも、目の前の光景が受け入れられずに思考がショートしていたと言うべきか。前述の通り、殆どの者たちは、大木を見上げて、驚きのあまり放心していたのだ。


 例外は、ワルツたちと、木材の運搬を行っていた双子の姉妹たち、それにミレニアとジャックくらいのものだった。そんな中で、ジャックが他の学生たちに意見を求めても、まともな回答など得られるはずもなく……。


「……俺も、順応力がある方なのかも知れないな……」


 周囲のクラスメイトたちの反応に気付いたジャックは、ミレニアに言った言葉の意味をしみじみと噛みしめたようだ。


 こうして、グラウンド全体を大木で埋め尽くすという結果を残し、2日目の伐採作業は終わったのである。

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