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14.13-36 伐採作業(改)1

 ワルツたちが教室に到着してからしばらく経ち、始業時間になり、今日も午前中のタスクである大木の伐採作業が始まろうとしていた訳だが——、


「テレサ。油圧ウィンチを作って」


「えっ」


——ワルツが急にそんな事を口にする。


 いきなり飛んできたワルツからの指示が理解出来なかったテレサは、思わず聞き返した。


「油圧ウィンチとな?何に使うのじゃ?あぁ……木材の移動かの?」


「ううん。伐採に使うのよ」


「えっ」


 テレサは必死に頭を動かした。ワイヤーなどを引っ張るウィンチで木を伐採するとはどういうことなのか、理解出来なかったのだ。


「(木と木をワイヤーで繋いで、ウィンチで引っ張って倒す、と言っておるのか?いや、無理じゃろ……いやいや、巨大なウィンチならあるいは……)」


「あぁ、小さい奴ね?クラスメイトの皆でも運んで運用できるくらい小さな奴」


「えっ」


 テレサの困惑が深まる。小さなウィンチで巨大な木を伐採するなど、どうやったら出来るというのか……。ウィンチは、大きな力でワイヤーを引っ張ることができる道具だが、その大きな力を使ったとしても、大木を切れるほどの力を作り出す事は難しかった。


「私たちは、ちょっと秘密兵器を作ってくるから、ルシアと一旦、家に戻るわ?」


「「えっ」」


 せっかく学院に来たというのに、帰ると言い始めたワルツを前に、今度はテレサだけでなくルシアも困惑する。


 と、そのタイミングで——、


   ガラガラガラ


「おはようございます!皆さん!」つやつや


——と、ハイスピアがやってきた。そんな彼女に向かって、ワルツが宣言する。


「先生、30分ほど伐採作業を遅らせて下さい。その間に秘密兵器を作ってくるので」


 ワルツはそう口にすると、ハイスピアからの返答を待たず、ルシアの手を引っ張って——、


「あ、テレサ?さっき頼んでいたジャッキだけど、10機ほど頼むわね?30分以内に」


——そんな捨て台詞(?)を残して、教室から出て行った。わざわざ学院に来たのは、ハイスピアに一言断りを入れるためだったらしい。


「いや……ア嬢を連れていかれたら、妾だけでウィンチの作成は出来ないのじゃが……」


 一体どうやって材料を確保すれば良いというのか……。テレサは内心で嘆きつつ、周囲を見渡した。ルシアの代わりとなる人物が、教室に来ているか探したのである。


 ただ、その可能性は極めて低かった。彼女——フィンは、昨日の午後、教室にはいなかったからだ。


 そんな彼女が今日の授業に参加している可能性は低いと言えたのだが……。


「…………!」

「…………!」


 どうやら来ていたようである。ワルツはフィンが来ていることに気付いていて、テレサにウィンチ作成を任せたらしい。


 部屋の片隅に陣取って一人ポツンと椅子に座っているフィンの姿に気付いたテレサは、親指をクイッと動かし、教室の外を差した。するとフィンは、テレサの意図に気付いたのか、コクリと頷き、椅子から立って外へと出る。


「ハイスピア殿。ちょっとワルツに道具を作るように言われたゆえ、妾()()も準備に取りかかるのじゃ。先にグラウンドに行って作業をしておるゆえ、30分ほどしたら皆で来て欲しいのじゃ?」


 テレサもハイスピアにそう断ってから、自身も席を立ち、部屋の外へと繰り出した。


 そんなテレサの事を見送ったハイスピアは、ふと思う。


「妾たち……?今、出ていったのって、テレサさんだけでしたよね……。誰か他に協力者がいるのでしょうか……」


 自分が頼られるならまだしも、他に頼る教師や学生がいるのだろうか……。フィンの姿に気付かなかったハイスピアは、思わず首を傾げてしまったようである。


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