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14.13-31 危険物2

 テレサの手を引っ張ったルシアが、テレサの事を連れてやってきたのは、ルシアの部屋の前だった。そこで彼女は、テレサの事を一人置いてけぼりにすると、そのまま部屋の中に入り、慌ただしい様子で何やら捜し物を始める。


   ドカッ、バタッ……


「何をやっておるのじゃ……?」


 ここまで何も言わず、ただ手を引っ張ってやってきたルシアの行動を思い出しながら、テレサは首を傾げた。紛失した尻尾のことで何か知っている事があるのなら、一言言えば良いのに……。そんな事を考えながら、テレサはルシアが部屋から出てくるのを待った。


 それから間もなくして——、


   ガチャリ……


——部屋の中からルシアが出てくる。そんな彼女の手の中にあったものは、どういうわけか、グルグル巻きになった布団だった。


「……返す」


「いやいや、布団を返すと言われても、それア嬢の……まさか、この中に妾の尻尾が巻かれておるのか?」


 テレサが問いかけると、真剣な表情のルシアが、コクリと頷いた。


「テレサちゃんの尻尾、衝撃を与えると爆発するんでしょ……?」


「そこまで敏感ではないゆえ、普通に手に持っても爆発することは無いのじゃ」


「……本当?」


「自身の尻尾を乱暴に扱ったら痛いのと同じなのじゃ。手で持つ程度なら、何も問題は無いのじゃ」


「あぁ……そうなんだ……」


 テレサの説明を聞いて、ようやく警戒を解いたのか、ルシアは自身の布団を解いて、その中からテレサの尻尾を取り出した。


「確かに妾の尻尾なのじゃ。しかしなぜ、ア嬢の所にあったのじゃ?」


「それ、私の方が聞きたいんだけど……多分、昨日、テレサちゃんが、私の部屋で眠ってた時に、忘れていったんじゃないかなぁ?」


「そういえば、そんなこともあったの。それなら、すぐに妾に返してくれれば良かったのじゃ」


「だって、気付いたのって昨日の夜で、皆が寝ちゃった後だし、その尻尾が本物だと思わなかったし、それに、もふ……ううん。なんでもない」


「まぁ、爆発しておらぬということは、酷い扱いをしておらんかったからなのじゃろう。とりあえずこれは、妾が回収するのじゃ?」


 テレサはそう言って、ルシアの手から自身の尻尾を回収しようとした。その瞬間——、


「あっ……」


——ルシアがどこか悲しげな表情を浮かべる。


「えっ?何かの?」


「……ううん」


「……まさか、これが欲しいのかの?」


「…………」じぃ


「……繰り返しになるが、これは爆発するゆえ、危険なのじゃ。人形や玩具などと同じように扱ってはならぬ」


 テレサは忠告するものの、ルシアの方は納得できない様子だった。そこには、こんな理由があったようである。


「それは分かってる。けど、こっちに引っ越してきてから、可愛いものが無いんだよ」


「そりゃまぁ、森の中にある学校に通っておるからのう。可愛いものなど、手に入るわけがないのじゃ。もう、適当に時間を見つけて、ミッドエデンの自室に取りに行くしかなかろう?」


「……向こうにはまだ戻りたくない」


「なら、召喚魔法や転移魔法を使えば良いのではないか?」


「置いてる場所を覚えてないから、呼び寄せられない」


「妾のことを召喚できるのに、人形はできn——」


「でも、テレサちゃんの尻尾があれば、しばらくは我慢出来る気がする」


「意味が分からぬ……。なら、公都か近くの町か、その辺で可愛い人形がないか探しに行くというのはどうかの?」


「……いつ?」


「……まぁ午後、授業が終わった後かの?」


「お寿司も必要」


「いやいや、レストフェン大公国に寿司が無いのは確認済みなのじゃ。寿司だけはコル経由で取り寄せるしかないのじゃ」


「じゃぁ、何か可愛いものを探しに行くから付き合ってよね?」


「しかたないのう……」


 と、不承不承といった様子でルシアの願いを聞くテレサ。ルシアの手元に、危険な尻尾を置いておくくらいなら、彼女の我が儘に付き合って買い物に出かけた方が良いと判断したようである。


 その後、2人は、ワルツたちが待つリビングへと戻って、そして、尻尾が見つかったことと、今日の授業が終わった後で町へと出向いて買い物をすることを説明した。その結果、ワルツたちは、2人に対して何故か生暖かい視線を向けていたようだが……。ルシアもテレサもその視線には気付いていなかったようである。


ワルツたちから見て、妾たちの行動がどう見えておったのか、説明する必要があるかもしれぬのう。

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