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14.13-30 危険物1

 そして、次の日の朝。


「…………」


 起床したテレサは、朝から眉間にシワを寄せていた。眠たかったから、というのも理由の一つかも知れないが、それ以外にも何やら理由があったようである。


「あっ、おはよう。テレサちゃん」

「おはよう、テレサ」

「おはようございます。テレサ様」

「おはよう、テレサ様」

『おはようございます。テレサ様。今日は珍しいですね?テレサ様が最後とか』


「……おはよう、皆の者たち。早速なのじゃが、お主たちに言わねばならぬ事がある」


 普段と異なり(?)重苦しい雰囲気を纏ったテレサに、皆の表情が硬化する。明らかに何か問題が起こっている……。テレサの様子を見て、皆、同じ直感を抱いたようだ。


 実際、問題が起こっていた。それも、かなり面倒な問題が。


「……妾の尻尾が1本、行方不明になったのじゃ」


「「「『……は?』」」」


「妾のセルモフ用としてベッドの中に隠しておいた尻尾が、忽然と姿を消してしまったのじゃ」


「ねぇ、テレサ。セルモフって……何?」


 ワルツが訝しげな様子で問いかけると、テレサではなく、何故かポテンティアから返答が戻ってくる。


『"セルフもふもふ"の略称ですね。テレサ様って夜になったら——』


「ちょっ?!ポテよ!妾のプライバシーを勝手に公表するでないのじゃ!というか、何故それを——」


「あー、なるほどね。狐をモフモフ出来ないから、自分の尻尾をモフっていた、と」


「   」


「で、そのセルフもふもふ用の尻尾が無くなったって言っても、別に問題ではないわよね?困るのって、テレサだけというか……」


 わざわざ、皆の耳に入れることでも無いのではないか……。そんな副音声を込めたワルツの問いかけに対し、テレサは文字通りに爆弾発言を口にした。


「あれは、モフり方を間違えたり、長時間放置すると、爆発するのじゃ」


「「「『……は?』」」」


「妾の尻尾は、妾の魔力の塊そのもの。エネルギーの塊と言っても過言ではないのじゃ。妾から離れれば制御を失って不安定になるのは道理なのじゃ」


「いやいや、道理じゃないわよ。長時間放置して爆発するのは、まぁ、分からないでもないけれど、モフり方を間違えたら爆発するって、何?生き物なの?」


「生き物か、と言われると微妙な所なのじゃが……例えば妾が"気持ち悪い"と思うような撫で方で尻尾を撫でられたとするじゃろ?そうすれば、ゾワゾワとして尻尾がパンパンに膨れるわけなのじゃが、本当はその瞬間、妾の尻尾は爆発しておるはずなのじゃ。普段はそれを意思の力で抑え込んでおるゆえ爆発はしないのじゃが、迷子になった尻尾には爆発を抑え込む力は働かぬゆえ、下手な扱いをすれば爆発するというわけなのじゃ」


「それもう完全に地雷よね。いえ、長時間放置すると爆発するんだから、地雷って言うか、接触センサー付きの時限爆弾と言った方が良いかしら?ちなみに爆発力はどのくらい?」


「そうじゃのう……。おそらく、部屋が一つ吹き飛ぶくらいではなかろうか。魔法として顕現するまえの、ただの魔力の暴発でしかないからのう」


「タイムリミットは?」


「幅があって、2〜3週間は猶予があるのじゃ」


「あぁ、そう……。そんなに切羽詰まっているわけではないのね。なら、ゆっくり探せば良いんじゃない?どうせ、テレサに部屋の隅っことかに落ちてるんじゃないの?ベットの下とか」


「もちろん探したのじゃが、無かったのじゃ。とはいえ、本当に無くしたのかというと、何とも言えぬところでの?もしかすると妾が寝ぼけて自分の尻尾に接吻して吸収してしまった可能性も否定できぬ……」


「どこを探しても見つからないんだったら、それしか答えは無いじゃない。誰かが勝手に持っていったわけでもないだろうし……。じゃぁ、この話はこれでおしm——」


 とワルツが話を終わらせようとしたその時だった。


   ガッ!


 今まで無反応とだんまりを決め込んでいたルシアが、突然、テレサの手を引っ張ったのだ。


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