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14.13-29 宿題5

「#$●◇」


   ボンッ!


「#$●×」


   シュッ……


「#$●&」


   スカッ……ドンッ!


 テレサは、ワルツのノートにある魔法の組み合わせを次々と試していく。1秒にも満たない間隔で魔法が連続して放たれていくので、記録を取るのも本来であれば大変なはずだ。


 だが、記録を取っていたのはワルツ。テレサが口にする符号——デジタル信号をすべて把握していた彼女は、次にどの魔法が飛ぶのかを理解して、難なく結果を表に書き込んでいく。


 そして——、


「これで終わりなのじゃ。$#%@」


   ボフッ……


「日が暮れる前に終わって良かったわね」


——魔法の実験はすべての工程を終えた。


「どうかの?ア嬢。身体に不調は無いかの?」


 実験を終えた後、テレサはルシアに対し、体調を問いかけた。テレサはルシアの魔力を無理矢理に引き抜いて魔法を使っていたので、ルシアの身体に負担が掛かっているのではないかと心配になっていたのだ。


 だが、どうやら問題は無いらしい。むしろ——、


「いや、私は問題無いけど……テレサちゃんの方が、なんていうか……」


——ルシアとしては、テレサの事が心配でならなかったようである。


 彼女の身を心配していたのはルシアだけではない。その場にいた全員が、テレサの事を心配していた。


 というのも——、


「血まみれ……」

『酷いですね……』

「そこまでして実験をする必要はなかったと思うのですけれど……」


——表を埋めるために、ルシアから度重なる魔力供給を受けていたテレサが、大量出血(?)して、血まみれになっていたからだ。ちなみに、すべて鼻血である。


「……ふっ。これは必要なことだったのじゃ。名誉の負傷なのじゃ」


 テレサがニヒルな笑みを浮かべると、ワルツがすかさずツッコミを入れる。


「えっ?何言ってるのよ。ルシアの尻尾が顔に触れる度に興奮していただけじゃないの?」


「んなっ……」


 ワルツからの指摘に、テレサはなぜか冷や汗を掻く。


 一方、彼女の事を心配していたルシアも、ワルツの指摘を聞いて困惑している様子だ。


「えっ……その血って、私から魔力を吸い取ったせいで、身体に負荷が掛かって出ちゃったんじゃないの?」


「う、うむ。その通りなのじゃ。興奮して鼻血を出すなど、はしたない事ではないのじゃ?(たぶんの)」


「本当かしら?」じとぉ


「……正直言うと良く分からぬ。鼻血は勝手に出てくるし、もとよりこの身体ゆえ、痛みらしい痛みも無いからのう……」


 テレサがそう口にすると、さすがのワルツも、それ以上、冗談を言えなくなったようである。テレサの身体に負荷が掛かっている可能性を否定できないからだ。


 姉が黙ったせいか、ルシアも疑うのをやめたようだ。そればかりか、テレサの言葉を聞いて、尚更に彼女のことを心配している様子だった。


「テレサちゃん……回復魔法いる?」


「いや、大丈夫なのじゃ。それに、この身体に回復魔法を掛ければ、逆に不具合が出るかもしれぬゆえ、遠慮しておくのじゃ」


「そう……。なんか……ごめんね……」


「何をしょんぼりとして……あぁ!もう!ア嬢がそんなしょんぼりとするくらいなら、こう言えば良いか?お主の尻尾がモフモフ過ぎて、興奮したゆえ、鼻血が出た、と」


 ルシアに気を遣わせるくらいなら、自分が悪者になればいい……。そう割り切ることにしたテレサが、事実(?)を口にすると——、


「えっ?!えっと……う、うん……そう、なんだ……」


——ルシアが妙な反応を示しながら目を逸らす。


 そんな彼女の行動が不可解だったためか、テレサは理由を確かめようとした。しかし、その理由を確かめるには、今の空気を壊して問いかける必要があり、その上、自分の立場をより悪くしてしまう怖れもあったので……。テレサはその疑問を口には出さず、そのまま飲み込んで、疑問を忘れることにしたようである。そうでなければ、藪から蛇が出てくるような気がしてならなかったのだ。


 こうして、ルシアの魔法を使った衝突実験は、特に事故が起こることもなく、無事終わったのである。


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