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6前前-18 夕食会2

カツン、カツン、カツン・・・


石造りの少々薄暗い廊下を、まるで慣れた我が家のように、全く迷う様子を見せずに歩いて行くユキ(?)。

そんな彼女の後を、着飾った仲間たち、そしていつもの姿のワルツが付いて歩いていた。


そんな中、ユリアの隣に立って、真後ろからユキ(?)の姿を眺めていたワルツは、人知れず頭を抱えていた。

どうやら、目の前のユキ(?)は、彼女の立ち振る舞いを見る限り、どうやらミッドエデンへ使者としてやってきたユキ(魔王)とは別人のようなのである。


その上、


「ワルツ様?確かに背格好が似てるからって、誰でも彼でも一緒くたにしたらダメですよ?」


ユリアたちには彼女が別人に見えているらしい。

そんな彼女の言葉を聞いて、ユキ(魔王)が変身していたことを思い出したワルツは、ふとユキ(?)の左手に眼を向けてアクセサリーを確認してみる。


すると彼女の中指にも、どこかで見たことのある指輪が()められていたので・・・恐らくは、彼女も変身しているということなのだろう。


(・・・どんな姿に変身しているのか、一度は見てみたいものよね)


変身魔法が一切効かないワルツは、目の前を歩いているユキ(?)や、自分の隣で辺りをキョロキョロ見渡しながらどこか懐かしそうに廊下を歩くユリアに対して、そんな事を思いながら内心で溜息を吐いた。

なお、その溜息には、変身魔法が見えないことに対するもどかしさだけでなく、もう少しでユリアたちにユキ(魔王)の正体をバラしてしまいそうだったという焦りによるものが半分以上含まれていたりする・・・。


ちなみに。

彼女達のさらに後ろでは、ルシア、シルビア、そしてイブのやり取りが続いていた・・・。


「やっぱり、このリボンはこっちのほうがいいと思うんだよねー」

「いやいや・・・こっちのもう少し斬新なものの方が・・・」

「たすけてー!」


なお、助けは無い模様である・・・。




一行がそんなやり取りをしながら、廊下と同じ石造りの螺旋階段を昇って、さらに暫く歩いて行くと、


「・・・こちらでございます」


とある大きな扉の前で、ユキ(?)が立ち止まった。


「ふーん。なんか、魔王がいそうな扉ね」


辺りを照らす紫色の魔法の炎。

しーん・・・と静まり返った、薄暗くだだっ広い廊下。

そして、恭しく頭を下げる雪女と、隣りにいるサキュバス・・・。


・・・正しく、ダンジョン、である。


「勇者のお兄ちゃんも、ここに来るつもりなのかな?」


「そうね・・・もしもそうなら、ホント、お伽話(ゲーム)みたいよね・・・」


本に書いてあった物語を思い出すルシアと、どこかゲームの中の世界に入り込んだような気分になったワルツ。

物語の出処は違えど、考えていることは同じのようであった。


すると、


コンコンコン


「お客様をお連れしました」


来賓室に来た時のように、ユキ(?)はノックして扉を開けようとする。

そんな彼女に対し、


「あ、ちょっといいかしら?私に開けさせてもらえる?」


ワルツがそんな事を言い出して、ユキ(?)の行動を中断させた。


「え?あ、はい。構いませんけど・・・何かありましたか?」


「いや、なんていうか・・・こういうの、一度やってみたかったのよ」


「はあ・・・」


自分で戸を開けたいと言い出したワルツに、変わったお客様ですね・・・、といった様子で、少々呆れ気味の表情を浮かべるユキ(?)。

だがワルツは、そんなユキの表情に気づくこと無く、観音開きの扉に両手をかけて・・・ゆっくりと開いた。

そう、まるで自分が勇者になったような気分に浸りながら・・・。


「・・・あれ?ギギギって言わないわね・・・」


「えっと・・・はい。いつも蝶番に蝋を付けて手入れしていますので・・・」


「あ、そうなの・・・」


ユキ(?)の言葉に、どこか残念そうな表情を浮かべるワルツ。

最早ここまで来ると、変わった客ではなく、文字通り失礼な客と表現したほうがいいのではないだろうか。


ともあれ、開いた扉から見えてきた部屋の様子は・・・


『えっ・・・?』


ワルツやルシア、そしてシルビアの想像とは大きく全く異なるものであった。


まず、何より、廊下と違って、部屋の中は明るかった。

それも、魔法や炎による明るさではない。

そう、まるで窓から太陽の光が直接入ってきてるかのような・・・というよりも、


「迷宮なのに太陽!?っていうか、今、夜よね・・・?」

「畑がちゃんとある・・・」

「どうして・・・」


太陽のように明るい光源があるのではなく、太陽そのものが窓の外で輝いていたのである。


その上、窓から見えていた景色は、紛れも無く、無傷の様子のビクセンの街とその周辺の畑や山々の姿であった。

しかも、その街の中では、人々が活発に活動をしている様子を見て取ることができたのである。

その様子を見る限り、少なくとも、窓に填め込んだ絵画ホログラムディスプレー、というわけではなさそうである。


ところで・・・。

ワルツ達は、部屋に入ってすぐに窓の()()へと驚きの視線を向けていたわけだが、実のところ、()()にもトンデモナイ光景が広がっていた・・・。


「ようこそ皆様方。我が国、ボレアス帝国へ・・・」


そんな聞き慣れた声に、一行が部屋の中にあった長机に向かって視線を向けると、ユキ(魔王)を含めた5人ほどの政府重鎮達が、既に席に付いていた。


「あ、ユk・・・・・・すみません皆さん・・・」

「も、申し訳ございません皆様方。つい外の景色に眼を奪われてしまって・・・」


ルシアとシルビアが、そんな謝罪を口にながら、座っている彼女たちに向かって頭を下げる。


なお、ユリアは、この不可思議な魔王城に慣れているのか、最初から恭しく礼をしたまま、ルシアとシルビアたちの行動に笑みを浮かべていた。

彼女の様子を見る限り、来た客人達は皆、ルシアたちと同じような反応を示すのだろう。


それともう一方(ひとかた)

一緒に付いてきたイブは・・・まぁ、空気に飲まれた挙句、真っ白になって固まっていたので、失礼云々以前の問題であった・・・。

まぁ、そのうち誰かが物理的に揺すって、正気に戻す必要があるだろう。


・・・さて。

問題はワルツである。

ルシアとシルビアが我を取り戻して、謝罪の言葉を口にしている間・・・まるでイブのように、口を開けたまま固まっていたのである。

まさに、開いた口が塞がらないというやつだろうか。

光学迷彩を展開し忘れて透明になることすら失念するほどに驚いているらしい。


そんなワルツの様子に気づいたのか、長机の一番端に座っていたユキ(皇帝)が苦笑を浮かべながら、口を開く。


「ワルツ様?如何なされたのですか?」


彼女に話しかけられることで、演算システムのフリーズが解かれたのか、徐々に動き出すワルツだったが、それでも壊れた機械のように動きがおかしかった。

・・・例えるなら、口をパクパクしている状態、といったところだろう。


そして暫くの後、ワルツは・・・ニューロチップの中で、デッドロックを起こす原因となっていたその一言をようやく口にすることに成功する・・・。


「・・・みんな同じ顔・・・」


・・・そう。

そこにいた者たちが全員ユキと瓜二つ・・・というより、ユキそのものだったのである。

まるで、テレサとコルテックスのように・・・。

イブ嬢のしゃべり方じゃが・・・実は色々と悩んでおったのじゃ。

例えば、『す』を『し』にして、


「たしけてー!!」なのじゃー


と、いったような感じにしようかと。

じゃがのう・・・なんか、安直が気がしてのう・・・。

結局、別の形でキャラクターを作り出すことにしたのじゃ。


まぁ、もう少しセリフが増えてくれば、キャラクター性のようなものが見えてくるじゃろう・・・おそらく、じゃが。




ところでじゃ。


妾のところから小麦と卵を持って行ったのは、ルシア嬢らしいのじゃ。

彼女の部屋の入口に、白い粉と、卵の黄身のようなものが付いておったので間違いないじゃろう。

一体部屋の中で何をしておるのかのう・・・?

というか卵・・・落としたんじゃろうか・・・。

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