14.13-26 宿題2
「……まぁ、こんなものかしら?」
「んー、いいのかなぁ?」
「というか、そもそも、全員揃って同じ内容のレポートを出すのは良いのじゃろうか?」
『先ほど分体が確認して参りましたが、連名で提出するのは大丈夫、とのことです』
「でしら問題はありませんわね」
「上手く確かめらればいいですね」
ワルツたちは宿題を書き上げた。魔法を属性以外の分類で分けられないか、という課題だ。
しかし、その課題は未だ完成ではなく、やらなくてはならないことが2つだけ残っていたようだ。理論を確かめるために実際の魔法を用いて行う確認作業と、結論を書く作業である。
というわけで、一行は、いつもの場所に向かうことになる。村からほど近い湖の畔だ。
◇
鬱蒼という言葉を通り越して、まるで壁のように立ち塞がる木々を、バッタンバッタンと切り倒しながら、一行は森の中を歩いて行く。午前中に伐採作業をした時にも同じように木々をなぎ倒していたなら、ものの数分で学院の周辺が更地になっているくらいの伐採速度だ。
その先頭に立っていたのは、当然と言うべきか、ワルツとルシアで、そんな2人の事をポテンティアがサポートしているといった様子だ。その他、マリアンヌは、その怪力を使い、倒木を避ける作業をしていて……。アステリアは、新しく覚えた植物操作魔法を行使し、伐採の対象にならなかった草木を退けるのに一役買っていたようである。なお、テレサだけは——、
「(……もしや妾は役立たずなのじゃろうか?)」げっそり
——特にやることが無く、地面に埋まらないよう皆に付いていくので精一杯だったのだとか。
村から出発して数分後、景色が一気に開ける。昨日のルシアの大規模回復魔法は、テレサの言霊魔法による中和の影響を受けて、湖にはそれほど降り注がなかったので、湖の周辺だけは、周辺地域に比べると、それほど木は生い茂っていなかったのである。
ただ、何も無いかというとそういうわけでもなく——、
「ここはあまり変わりありませn——あれ?あんな洞窟みたいなものって、前からありましたっけ?」
——そんなアステリアの言葉通り、湖の中央付近に、見慣れない中島が出来上がっており、その中央部にぽっかりと洞窟のようなものが口を開けていた。大地に魔力が溜まると出来ると自然に発生すると言われている迷宮の入り口だ。どうやら、回復魔法になり損ねたルシアの魔力が大量に湖へと降り注いで、迷宮が出来上がってしまったらしい。
「えっと……うん!あった、あった!」
「えっ……?」
「あったよね?テレサちゃん」
「……何故、妾に振る?」
「あ っ た よ ね ?」ゴゴゴゴゴ
「……そうじゃの」
何か目には見えない圧力でも感じたのか、棒読みで相づちを返すテレサ。
一方、ワルツは、そういった圧力のようなものは感じていなかったらしく、皆の方を振り返ってこう言った。……あるいは、テレサにトドメを刺しに来たとも言えなくないが。
「さぁ、テレサの強度確認試験を始めるわよ!」
「え゛っ」がくぜん
「えっ!」キラキラ
「冗談よ?冗談」
「その冗談はシャレにならぬゆえ、やめてほしいのじゃ。ほら、1人、冗談がきかず、目を輝かせておる者がおるし……」
「気のせいじゃないかなぁ?」
「…………」むすっ
じゃれ合う(?)2人に生暖かい視線を向けた後、ワルツは改めて言った。
「さぁ、宿題の答え合わせ……魔法の対消滅実験をするわよ?」
彼女はそう言って、鞄の中からノートを取り出した。そこには表のようなものが記載されていて、マル・バツ・三角などの実験の結果が書けるようになっていたようである。
ワルツたちが考えた新しい魔法の分類に必要な情報。それは、2つの魔法をぶつけ合って、相殺できるかを確かめるというものだった。それによって、彼女たちが実証したいことは、魔法を属性で分けることでも、効果で分けることでもなく——、
「これで相互関係での分類が出来ると良いのだけれど……」
——魔法を衝突させることで生じる現象から、種類を分類できるか確かめることだったのである。魔法をぶつけ合って相殺できるということは、それ即ち、プラスとマイナスの効果を持った同じ魔法だと分類できる、というわけだ。粒子加速器を用いた原子核同士の衝突実験に近いものがあると言えるかも知れない。
光狐「分かんないなら、ぶつけて壊しちゃえば良いんじゃないかなぁ?」
機械狐「いやいや、そんな暴力的な方法では——」
魔神「あ、いいわね。それ」
全「……えっ?」




