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14.13-24 特別授業3

サブタイトルのナンバリングを間違えたのじゃ。

 コップ一杯の水をどこからともなく取り出したマグネアは、生徒たちへと徐に問いかけた。


「炎とは何でしょう?」


 その当たり前とも言える質問に返答したのは、彼女の孫娘であるミレニアだ。


「物質を加熱することで生じる現象です」


「そう……例えば、木を加熱すれば燃えます。では、加熱とは何でしょう?」


 マグネアの質問にミレニアが答えようとするが、マグネアが首を振って、別の者に答えさせようとする。


 すると、次に口を開いたのは、ミレニアの幼なじみのジャックだった。


「熱を与えるから加熱、だと思う」


「えぇ、その通り。外から熱を加えるから加熱であり、それによって物質の温度が発火点を超えれば炎が上がって、燃焼するのです。それは火魔法でも同じ事で、火魔法によって外から熱を加えるから、物体は燃焼するのです」


 そう言った後で、マグネアは教室の中を見回した。その短い説明で、火魔法により物体を凍らせる方法を思い立った者がいないか、見つけようとしたのだ。


 そんな彼女の予想通り、何名かは答えに辿り着いているようだった。ワルツなどはその代表例だ。何かに驚いたように目を丸くしている、といった様子だ。


 マグネアが問いかける。


「ワルツさん。何か気付いた事はありますか?」


「……つまり、対象の物体よりも冷たい炎を火魔法で作り出せれば、火魔法で物体を凍らせられる、ってわけね?」


「正解です」


 マグネアは首肯すると、手にしたコップに火魔法を行使した。直後、彼女の腕から先が青白い炎に包まれるが、その腕が焼け爛れるようなことはなく、コップの中の水だけが急速に凍り付いてしまう。もしも炎が本当に冷たいのだとすれば、腕も凍り付いてしまうはずだが、そうならないのは何か特別な対策をしているからなのだろう。それこそ、彼女が今、授業で説明しているような応用魔法による対策を。


「このように、冷たい炎で炙れば、水を凍らせる事ができます。逆に氷魔法を使って物体を燃やすことも出来ることは言うまでも無いでしょう」


「じゃぁ、火魔法と氷魔法の違いって、何?加熱することに重きを置いた魔法か、熱を奪うことに重きを置いた魔法か、って違いだけ?」


 マグネアの説明に、ワルツが思わず問いかけてしまう。そんな彼女は授業に集中しているためか、敬語を使うことをすっかりと忘れてしまったようだ。


 対するマグネアは少し嬉しそうでありながら、しかし答え難そうにこう答えた。


「世間一般に使用されている魔法は、実のところ、単純に火魔法や氷魔法といったように明確に分類することは出来ないのです。ですから、ワルツさんの質問には、そういう場合もある、としか答えられません」


「そう言う場合もある……?じゃぁ、違い場合もある、ってこと?」


「物体が燃えているから火魔法だ、と主張することは出来ますが、それは飽くまで魔法を使った人、または観測者の主観的な感想でしかありません。火魔法と言っても、火球を飛ばす人がいたり、物体を直接加熱する人がいたり、あるいは爆発性の魔法を使う人がいたりします。それらを、熱を感じるという理由だけで、すべて"火魔法"と一括りに考えてしまうのは乱暴すぎで、詳しく分析すればまったく別の魔法に分類される可能性が高いのです。それこそ、本人が気付かないだけで、氷魔法を火魔法だと言い張っている可能性もあります」


「それを正しく捉えるっていうのが、応用魔法の基本的な考え方、ってことね?(応用なのに基本っていうのもおかしな表現だけど……)」


「そうです。魔法の使い方は人それぞれです。人の数だけ魔法の使い方に癖があって、誰一人として同じ魔法は使っていないのです。その癖が、魔法にどんな影響を及ぼしているのかを紐解いていけば、本当の意味での火魔法、あるいは属性魔法の姿や、使い方というものが見えてくるのです」


「なるほどね」


 ワルツはマグネアの説明を聞いて納得した。彼女は今まで、ルシアたちが使ってきた魔法に疑問を抱いていたのである。同じ属性の魔法だというのに、なぜ異なる効果を持っているのか……。その理由が、人の癖や魔法の使い方にあるかもしれないと言われて腑に落ちたらしい。


 ルシアも2人の話を理解していて、自分の魔法について改めて考えていたようである。自分の転移魔法は、なぜ自分自身を転移させる事が出来ないのか……。常日頃からそんな疑問を抱いていた彼女もまた、応用魔法に興味を惹かれていたようだ。


 その他の者たちは、大きく分けて、2種類の反応を見せていたようだ。マグネアの説明があまり理解出来ない者たちと、ワルツたちのように理解出来て興味を持った者たちだ。人数の比率は、おおよそ半分半分。理解出来ない者たちに、騎士科の学生が多かったのは、仕方のない事か。


 それからもマグネアによる"目から鱗な応用魔法"の講義は続き、ワルツたちは終始、興味を惹かれながら授業を受けたのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 2935/2935 ・なんか面白 [気になる点] 火とはいったい……炎色反応ではないな。運動エネルギー関連ですかね? [一言] 目からウロコ
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