14.13-19 大森林19
「さぁ、アステリア殿。このパイルバンカー……いや、アクセバンカーに火を入れるのじゃ!」
「…………!」キラキラ
「は、はあ……」
2人揃って目を輝かせるテレサとフィンに促されて、アステリアは筒状の道具の方へと足を進めた。
そして言われたとおりに筒の中へと火魔法を打ち込もうとした時、テレサにこう言われる。
「あぁ、そうなのじゃ。念のためアクセバンカーの横から火魔法を入れてもらえるかの?もしかすると、爆発の衝撃でアンカーが抜けて、台座ごとアクセバンカーが後ろに下がるやも知れぬゆえ」
「そ、それは怖いですね……」
アクセバンカー(?)の真後ろから火魔法を放とうとしていたアステリアは、慌ててアクセバンカーの横に移動する。
そして周囲の安全を確認した後——、
「では、行きますよ?」
——アステリアはアクセバンカーの火口を介して、その内部で爆発性の火魔法を行使した。
ズドォォォォン!!
文字通りに爆音を上げて、筒の中からマイナスドライバーのようなものが射出される。その瞬間、テレサが懸念していたとおり、砲撃の衝撃によって砲塔部分が後ろに吹き飛び、後ろに10mほどバックしてしまう。テレサが打ち込んだアンカーごとだ。
一方、打ち出されたマイナスドライバーのようなものは、砲塔から射出された瞬間、水平方向に散らばって、大木の幹に穴を開けた。たった1回の爆発で貫通するほどの威力だ。本来であれば、弾体は、実際には打ち出されず、筒から出たところでピタリと止まるはずだったが、爆発の威力が強すぎたらしく、大砲のように射出してしまったらしい。
そんなマイナスドライバー(?)の破片により、大木は——、
ミシミシミシ……!
——幹の強度を失って、ゆっくりと傾いていく。結果的には、目標を達成できたらしい。
「まぁ、こんなものか……じゃなくて、アステリア殿!逃げるのじゃ!そこにおったら巻き込まれるのじゃ!」
「えっ?!あ、はい!」
テレサに声を掛けられて我に返ったアステリアは、慌ててその場を離れた。
その直後——、
バキバキバキ……ズドォォォォン!!
——まるでスローモーションのように、大木がゆっくりと傾き、森の木々の間にその巨体を横たわらせた。
アステリアは、少し離れた場所にいたテレサたちと共に、その光景を眺めていたようである。彼女の表情がボンヤリとしているところを見るに、状況が理解できていない様子だ。自分の魔法で木が倒れたという事実を受け入れられないでいるらしい。
そんなアステリアに、テレサが話しかける。
「良かったのう?アステリア殿。これで妾たちも、役立たずとは言われぬのじゃ。まぁ、思い通りにはならなかったのじゃが、及第点ではあるじゃろう」
「…………」ぽかーん
「……ん?アステリア殿?」
「やったの……ですか?」
「うむ。まるで生存フラグのような言い方なのじゃが……間違いなく大木は倒れt——」
ガッ!
「やりました!やりましたよ!テレサ様!」
「お、落ち着くのじゃ!アステリア殿!だ、抱きつくでn…………モフモフゥ……」にへらぁ
アステリアは喜びのあまり、テレサに抱きついて飛び跳ねた。その際、テレサは、なにやら嫌がっていたようだが、まるで洗脳でも受けたかのように締まりのない笑みを浮かべていたようである。フィンも、テレサやアステリアに抱きつくことはなかったものの、嬉しそうに、倒れた大木の方を眺めていたようだ。
まぁ、それも——、
「……テレサちゃん?」ゴゴゴゴゴ
——その場にルシアが来るまでの話だったのだが。




