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14.13-16 大森林16

「……無力です……」しょんぼり


 アステリアは、自分の無力さを呪った。周囲の者たちと自分とを見比べると、劣って見えて仕方がなかったのだ。それは単に比較対象が間違っているだけなのだが、この時の彼女には、何が正しくて何が間違っているのか、理解出来なかったようだ。……まぁ、未来においても、理解出来ないのは変わらないのかも知れないが。


 何かに熱中するテレサたちに放置されたアステリアは、その場にしゃがみ込んでいじけてしまう。その際、チラチラとテレサたちの方に視線を向けていたのは、自分にも何か指示が降ってこないかと期待していたから、なのかもしれない。


 しかし、完全に自分たちの世界に入り込んでいる様子のテレサたちから、アステリアに向かって何かが飛んでくる事は無かった。だからといって、熱中しているテレサたちの間に無理矢理割り込んで、指示を請うわけにもいかず……。彼女たちの側を離れて、ワルツたちの所へと戻ったところで、何か出来るわけでもなく……。


「うぅ……」


 何も出来ない悲しみに襲われたアステリアは、段々と泣きたくなってきてしまう。


 それを誤魔化すように、彼女は土いじりに意識を集中させた。文字を書いたり、土を集めたり、石ころを並べてみたり、草木を引っこ抜いてみたり……。ついには、地面に魔力を注ぎ込んでみることすら始めたようである。


 すると、不思議な事が起こる。


   ニュッ……


 と、地面に生えていた草が、妙な動きを見せたのだ。


「……えっ?」


 もしや風のせいか……。そう思いながら周囲を見渡すアステリアだったが、今日はほぼ無風。勝手に植物が動くなど、ありえない事だった。


「(もしかして、魔力で動いた……?)」


 そう考えたアステリアは、動いた草に直接触れて、魔力を注ぎ込んだ。すると——、


   ニュゥゥーーーッ


——と植物が、不自然に横へと伸びる。例えるなら、アステリアが触れた手を避けるかのように。


「!」


 アステリアは目を見開いた。彼女はこの瞬間、自分が新しい魔法を使えることに気付いたのだ。


 ……と、彼女は思っているが、今まで彼女は、無意識のうちに、この魔法を何度も使っていたりする。彼女が元の大狐の姿に戻り、森の中を駆け回るとき、彼女は魔法を使って草木を掻き分けていたのだ。しかし、走り回っていると、草木をゆっくりと観察する暇が無く……。今まで自分の魔法の存在に気づけなかったのである。


 彼女の魔法は、植物操作魔法とも言えるような魔法だった。もちろん、一般的に知られた魔法ではない。テレサの言霊魔法や、ルシアの人工太陽、あるいはフィンの錬金魔法のように、特定の個人だけが使える固有魔法である。


「(あ、これ面白い!私が触れようとすると、植物さんの方から勝手に避けてくれるんですね!)」


 アステリアが指の表面を魔力で覆って、それを植物に近づけた。すると、雑草がザワザワと揺れながら、彼女の指を避けていく。


 その光景を見ていたアステリアが、とある考えに至るのは、必然のことだと言えた。


「もしかして……!」


 魔力を纏っていれば、大木も同じように、自分の事を避けるのではないか……。そんな発想を持ったアステリアは、不意に立ち上がると、近くにあった大木の所まで歩いていく。


「……ふふっ」


 大木の前に立ったアステリアは、たった一人で大木をなぎ倒す姿を想像したのか、不敵な笑みを浮かべた。これでワルツたちからも認められる……。一人だけが無力という状況から解放される……。そんな期待を抱きながら。


 そして彼女は、自身の手に魔力を纏わせると、目の前の大木を見据えて——、


「ていっ!」


——手刀の要領で大木を斬りつけたのである。


ワルツか妾がやると、大木に手をぶつけて、ゴキッ、と音が鳴るやつなのじゃ。

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