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14.13-03 大森林3

「……あなたたちのことです。現状をどうするのか、打開策は考えてあるのでしょう?」


 副音声で、自分たちには対応出来ないので、どうにかしろ、と問いかけるマグネア。対するワルツは、下げていた頭を上げると、マグネアの問いかけにこう答えた。


「街道については、ポt……ある人たちに伐採を頼んでいるから、もう間もなく開通するはずよ?それ以外の部分については……一旦、焼き払って更地にしてから森を再生するって方法が無いわけじゃないけど、でも、そうなると魔物たちも全部いなくなっちゃうから微妙なのよね。あとは、木材にして売ったり、木炭にして売ったりするか……それか、敢えて魔物たちが住みつくような場所を残して、訓練のための場所にするか。遠路はるばる迷宮に行くよりは、学院の目の前に迷宮があった方が、色々、都合が良いと思うしね」


 と、説明するワルツを前に、マグネアは眉を顰めた。ワルツが口にするプランは、ワルツたちだからこそ成立するプランであり、マグネアたちや他の生徒たちには真似できない内容だったからだ。


 いや、そもそもマグネアとしては、ワルツが大木を伐採して木材にする、と発言したところからして、疑っていたようである。木材を製材するようなニッチな魔法など聞いたことがないからだ。あるいは、魔法に頼らず木材を手で製材するというのか……。そんな疑問を抱いていたマグネアは、ワルツたちに向かって直接問いかけた。


「あなたのプランは、どれも夢物語のようにしか聞こえません。どうやって木を倒して木材にするというのですか?我が学院には、製材のための設備も職人もいないのですよ?」


「えっ?別に設備が無くても、普通に切り刻めば良いだけじゃないの?」


「えっ」


 さも当然と言わんばかりワルツの発言に、マグネアが言葉を失っていると——、


「ルシア?ここから見える木を、適当に製材してもらえる?」


——教室の窓から見えていた大木の方を指差して、ワルツがそんな事を口にした。


 対するルシアに否やは無い。むしろ、やる気満々と言った様子で、窓から身体を乗り出して、そして森の木の方へと指を差した。


 すると——、


   ズズズズズ……ドゴゴゴゴッ!!


——ルシアが指差した先にあった大木が、根から掘り起こされるようにして空中に浮く。それも、1本ではない。10本ほどがいっぺんに、だ。


 ルシアは木を浮かべた状態で、今度は逆の手をくるっとスナップする。すると、風魔法が木々を襲い、木の皮や葉、あるいは邪魔な枝まで一気に削げ落とされてしまった。


 その後の行程は、マグネアには理解出来なかった。ルシアが大木に使った魔法は雷魔法。それがどんな効果を生むのか、電波を知らないマグネアには理解出来るわけが無かったのだ。


 ルシアの雷魔法は、マイクロ波を使った言わば"電子レンジ魔法"と言えるような代物である。木材は乾燥させなければ、後で変形するので、ルシアは電子レンジを応用して(?)木材の内部の水分を加熱し、乾燥させたのだ。


 そして最後の行程。


   スパパパパンッ!!


 切断、である。無数の風魔法の刃が上下左右に乱舞し、大木の表面を滑っていく。その動きに一寸の狂いも無い。ワルツとのモノづくりによって鍛えられたルシアの職人技だ。


 こうして——、


「はい。製材したよ?」


——ものの数分程度で、学院の一角に山のような木材が並べられることになった。2、30軒程度なら、木造の家を建てられるほどの量の木材である。


 完成した木材を、教室の窓から眺めていたマグネアは、しばらく言葉を失っていた。とはいえ、驚きのあまり固まっていた、というわけではない。そこは流石の学院長と言うべきか、彼女は何やら深く考え込んでいる様子だった。


 そして考え込んだ末、マグネアは口を開いた。


「……非常に高度で強力な魔法が使えるというのはよく分かりました。しかし、どんなに考えても、やはり分からないのです。……あなた方は、なぜこの学院にやってきたのです?」


 強大な力も技術もあるのだから、学院で学べることなど無いはず。ならワルツたちはいったい何を目的に学院へとやってきたというのか……。


 対するワルツは肩を竦めながら、こう返答する。


「前にも言ったかも知れないけれど、学べることが勉強のことだけとは限らないわ?対人関係だったり、知らない分野の知識だったり、言語だったり、歴史だったり……。まぁ、色々よ?色々」


 そう説明した後で、ワルツは付け加えるように言った。


「あぁ、そうそう。ハイスピア先生からは、特に色々な事を学んでいるので、大変助かっているわ?」


 最近、自分たちに巻き込まれ気味な担任に事を持ち上げておくことにしたようである。


 対するマグネアが、ハイスピアに対する評価を上げたかどうかは定かでないが、彼女は再び口を閉じて、深く考え込み始めたようである。そんな彼女の視線が教室の窓の外に向けられていた所から推測するに、今回の一件をどうするのか、方針を決めることにしたらしい。


 そんな思考が続くこと1分後。


「……では、皆さん」


 マグネアは、考えた結果を口にした。

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