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14.12-40 無力?40

「だから、そこはグルグルと回すの!」


「そ、そう言われても難しいわ……」

「ルシアちゃん……実はすごいことをしてるんだな……」


 ルシアから指導を受けるミレニアとジャックだったものの、やはりそう簡単にはできず、二人とも四苦八苦した。しかも、オートスペルは元々、魔力が余りに余っているルシアのために開発された魔法技術。そのため、オートスペルの準備にも練習にも大量の魔力が必要となり、ミレニアたちには大きな負担になっていたようである。その上、2人とも、ルシアとは違い、まともに魔法を発動させるためには詠唱が必要になるのだから、尚更に大変だったようだ。


 それでも2人は諦めることなく、オートスペルの修得に取り組んだ。ジャックなどは、元々、魔法が得意ではないというのに、必死になって練習を続けていたようだ。それも、息を切らして、肩で呼吸をするほどに。


 ただ、現実は無情で……。やはり、先にコツを掴んだのは、魔力の扱いに一日(いちじつ)の長があるミレニアの方だった。


「あっ……今、ちょっとだけ出来た……気がする!」


 これまでミレニアは、オートスペルと氷魔法を組み合わせたつもりで、魔法を"設置"してきたのだが、まるでオートスペルなど無いかのように、普通に氷魔法だけが発動してしまっていたのである。ところが、ここに来てようやく変化が見られたようだ。"設置"してから発動まで、少し時間がかかるようになったのだ。


 その様子を見ていたルシアは、嬉しそうに笑みを浮かべた。


「そう!今の良い感じだったと思うよ?あとは、もうちょっとだけ魔力の量を減らせば、発動前の状態で維持できるはずだから頑張って!」


「えぇ!」


 ミレニアは再度、魔法を"設置"しようと調整を重ねた。この頃になると、ジャックは近くの岩の上に倒れ込んで、動かなくなっていたようである。魔力の使いすぎで、ついに限界を迎えたのだ。


 そして、日が傾き、西の山の上にあった学院の向こう側に沈み込もうとしていた頃。


「で……出来た!」ぜぇはぁ


 肩で息をするミレニアから歓声が上がった。


 そんな彼女の視線は、何も無い地面の上に向けられていたようである。しかしそこには、"設置"された氷魔法があるらしい。


「うん!良い感じだね!じゃぁ——」


「え、えぇ……発動してみるわ、ね」


 そう言ってミレニアが、震える手を、設置した氷魔法に向けて魔力を注ぎ込んだ次の瞬間——、


   パンッ!!


——何かが弾けるような音を立てて、周囲の地面が凍り付く。発動直前の状態で"設置"されていた氷魔法の均衡が崩れ、魔法として顕現し、一気に周囲を凍り付かせたのである。ついにオートスペルとして氷魔法が発動した瞬間だった。


「やったね!」


「えぇ、ついにやったわ!」


   パシッ!!


 ルシアとミレニアはハイタッチを交わした。


 まぁ、喜びも束の間。ミレニアの喜びは、ルシアの次の発言によって、一瞬で掻き消えてしまうのだが。


「じゃぁ、"設置"が出来たから、今度は"操作"だね。あと、"移動"と"結合"と"削除"もあるから、安定して"設置"が出来るように頑張ってね?」


「   」ちーん


 ミレニアの目から、一気に精気が抜けていった。


 一方、ポテンティアも、そんな2人に付き合って、何やら練習をしていたようである。彼の場合は魔法が使えないので、オートスペルの練習ではない。


『(ワルツ様には悪いですが、ちょっと技術を盗ませていただきますね)』


 ポテンティアは心の中で詫びを入れながら、マイクロマシンたちを操作して、とある可能性に挑戦していたのである。そんな彼の試みは、人知れず成功していたらしく、その表情には小さく笑みが浮かんでいたようだ。


 そしてテレサとハイスピアは、というと——、


「ハイスピア殿?そろそろ帰る時間なのじゃ?」


「…………」ぽかーん


「あまりのんびりしておると、夕食に間に合わなくなるのじゃ?」


「…………」ぽかーん


「……ハイスピア殿も、もうダメかも知れぬ……」げっそり


——未だ岩の上に佇むハイスピアのことを、テレサが心配するという構図を続けていたようである。この頃になると、ハイスピアの表情からは笑みが消えており、ただひたすらの無表情だけが顔に張りついているという状態。そんな彼女のは微動だにせず、静かに湖を眺めていたようだ。美しい光景が無くなった事を悲しんでいる……。そんな気配が彼女の背中から滲み出ていた。


機械狐「……やはり記憶を消すかの」


先生「?!」びくぅ

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