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14.12-39 無力?39

 一方、そのころ。


「そこはもっとこう、グルグル回す感じ!」


「ごめんなさい……。ちょっとよく分からないわ……」

「もう少し具体的に説明してもらえると助かるんだが……」


 ルシアは、ミレニアとジャックに対して、オートスペルの使い方を教えていた。場所は、ルシアたちが魔法の練習場として使用している湖の畔だ。学院内でオートスペルの使い方をレクチャーすると、騒ぎになりそうだったので敢えて湖までやってきたのだ。


 そこには、ルシアの他、ミレニアとジャック、それに、ポテンティアとテレサと、そしてハイスピアの姿があった。ハイスピアは、教師として、魔法の訓練の監督責任がある——という建前で、実際にはオートスペルの使い方を学びにやってきたようである。


 ところが、せっかくルシアがオートスペルの使い方をレクチャーしているというのに、ハイスピアは練習に参加せず、湖畔に転がっていた石の上に座り込んで、湖の姿を眺めていたようである。そんな彼女の姿を遠巻きに見れば、生徒たちの練習には参加せずに、優しく見守っているかのように見えなくなかったが、実際には——、


「えへへへ♪」」


——と現実逃避をしていたようだ。ルシアの魔法を見て驚いていた訳ではない。これまで幾度となく、ルシアたちの魔法の実験場となった湖には、もはやかつての面影はなく、荒廃の限りを尽くしていて、元の湖の姿を知っているハイスピアとしては、受け入れられる光景ではなくなっていたのである。今や、風光明媚な光景は消え去り、もはや水が溜まっているだけのただの溜め池である。


 いったい何をしたらこうなるというのか……。そんな事を考えている内に、ハイスピアは原因に気付いて、現実逃避をしてしまった、というわけだ。


「ハイスピア殿……気を確かに持つのじゃ?」


 テレサは、荒れ果てた湖を見ていたハイスピアの背中を見ている内に、彼女が泣いているような気がして、ルシアの講習会には参加せず、ハイスピアに寄り添うことにしたようである。ルシアによって破壊されるのは自然環境だけではないないことを、テレサはよく知っていたのだ。


 対してポテンティアは、ルシアの講習会に積極的に参加していたようである。何か問題が起こったときに、ミレニアとジャックを守れるのは、ポテンティアしかいないからだ。


 そしてもう一つ、ポテンティアがルシアの講習会に参加していた大きな理由がある。


『僕自身は魔法を使えませんが……つまり、発動直前の状態で魔力を循環するように"設置"しておけば、あとはちょっと小突いただけで魔法が発動する、というわけですね?』


「そうそう、そういうことだよ!さすがポテちゃん」


 ルシアはどちらかと言えば、論理的に物事を説明する人物ではなく、直感的に説明する人物。それゆえ、ミレニアとジャックでは、ルシアが言っていることを理解出来なかったので、彼女の言葉を翻訳する人物が必要だったのである。その役割がポテンティアというわけだ。


「2人とも分かった?」


「ルシアさんの説明が理解できるなんて……」

「ホント、流石はポテだな……」


 と、ミレニアとジャックは納得げな反応を見せるのだが……。その直後、2人は、ポテンティアの発言の中に聞き捨てならない言葉が含まれていた事に気付いたらしく、揃って同じ言葉を口にする。


「「……ん?魔法を使えない……?」」


 そんなわけはない……。2人は、魔法の実技の授業を思い出しながら、思わず首を傾げた。


 授業の際、ポテンティアは、皆に交じって普通に魔法を使っていたように見えたのである。具体的には火魔法だ。ポテンティアが手をかざすと、的からボウッと炎が上がったのだ。他の者たちのように火球が飛んでいくようなことはなかったものの、それ以外に違いは無く、どう考えてもポテンティアが魔法を使ったとしか思えなかった。


 対するポテンティアは、『ん?説明していなかったでしたっけ?』と首を傾げてから、事情を説明する。


『僕は魔法が使えませんよ?先ほどの授業で、僕が魔法を使っているように見えたのは、また別の力によるものです。結果的に魔法と同じように見えるので、表向きは魔法だと言っていますけれどね?』


 ポテンティアはそう口にすると、湖畔にあった岩に向かって手を向けた。すると、彼の手——正確には、彼の手を構成していたマイクロマシンたちから、一斉に不可視のメーザーが放たれ、岩を一気に加熱させて——、


   ズドォォォォン!!


——と岩を吹き飛ばしてしまう。メーザーで岩の内部の水分を一気に蒸発させて、内部から水蒸気の力で爆発させたのだ。


 その様子を見ていたミレニアたちは、最初だけポカーンと口を開けて放心していたものの、すぐに我に返って、感想を口にする。


「やっぱり、魔法にしか見えなかったわ?」

「魔法じゃなかったら、何なんだよ……」


『それはもちろん——』


 科学の力だ……。そう口にしようとするポテンティアだったものの、その一言が彼の口から出てくることは無かった。


 というのも——、


「あのさー……オートスペルと、ポテちゃんの魔法もどきと、どっちを学びに来たのかなぁ?」ぷんすか


——放置されていたルシアが、頬を膨らませていたからである。



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