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14.12-36 無力?36

前話で、マリアンヌ殿がカタリナ殿を知らぬような記述になっておったのじゃが、一度顔を合わせた事があるゆえ、知り合いなのじゃ。

その部分だけ前話を修正したのじゃ。

「何って……あれ?知らなかったっけ?カタリナのこと」


 ワルツが問いかけると、マリアンヌは首を横に振りながらも肯定するという器用な反応を見せる。


「し、知っていますわ?以前、ミッドエデンでお会いした方ですわよね?!で、でも、この臭いは……」


「「「臭い?」」」

「あぁ……」


「鼻を突くようなツーンとした臭いと……死臭がしますわ……」


 そんなマリアンヌの言葉に、アステリアが頷いた。マリアンヌは臭気魔法の使い手であるがゆえに、臭いには敏感で……。そしてアステリアは獣ゆえに、カタリナから漂ってくる死臭に気付いたのである。


 実際、世の中を探しても、カタリナほど多くの死臭を纏わり付かせている人物はそういないはずだ。おそらくは戦場帰りの英雄か、虐殺を終えた後の暗殺者くらいのものだろう。


 とはいえ、カタリナが大量虐殺をしていたわけではない。彼女は命を奪う側の人間ではなく、今にも命を落としかけて死にそうになっている人々に、手を差し伸べる側の人間だ。


 ゆえに、彼女が纏っていた臭いは、死を目前にした人々の死の臭い。そんな人々と共に、死と戦ったゆえに、身体に染みついた臭いである。


 青ざめるマリアンヌや、ピクピクと口許を引き攣らせるアステリアの言葉を聞いて、事情を察したワルツは、苦笑を浮かべた。


「臭うってさ?カタリナ」


「おっと、これは失礼しました。まだ付着物が分解しきれていないのかも知れません。今日は幸い、命を落とした方はいなかったのですが、返り血や膿などを浴びましたからね……」


 と言って、自身の白衣を撫でるカタリナ。そんな彼女の白衣は、魔力を持った菌糸で出来ており、放っておけば、汚れも返り血も分解してしまう優れものである。しかし、今日はその分解が追いついていなかったらしい。


「まぁ、私にとっては、香水のようなものです」ニコォ


 そう言って、怪しい笑みを浮かべるカタリナの姿は、どこからどう見ても白衣の天使——ではなく、マッドサイエンティストか、あるいは"白い死神"と言えるような気配を漂わせていた。そのせいか、今日、彼女から治療を受ける予定だったマリアンヌは、命の危険を感じて仕舞ったらしく、「ひぃっ」と声にならない悲鳴を漏らしながら、その場にへたり込んでしまった。


 その様子を見ていたワルツは、今度は呆れてしまう。


「ちょっと、カタリナ?治療をする前から、患者を困らせてどうするのよ……」


「あらら……ちょっと予想外です。お爺ちゃんやお婆ちゃんたちには好評なのですが……」


「それって、ただのお爺ちゃんお婆ちゃんじゃなくて、どこかの暗部の老人会だったんじゃないの?」


 いったい、どこの老人たちなら、マッドサイエンティストの笑みを見て、喜ぶというのか……。ワルツは思わずツッコミを入れたものの、カタリナから帰ってきたのは「いえ、普通の高齢者ですよ?」という素っ気ない回答だった。


「どうなっているのよ……ミッドエデンは……」


 と、思わず頭を抱えるワルツを無視して(?)、カタリナは言った。


「ところで、その方……たしか、マリアンヌさんと仰いましたね。マリアンヌさんが、慢性型魔力欠乏症なのですか?」


 対するワルツは、悩みを吐き出すように、はぁ、と小さく溜息を吐いてから、コクリと頷く。


「えぇ、そうよ?」


「それにしては、元気なように見えますし、魔力が漲っているように見えるのですが?私の知っている慢性型魔力欠乏症の方は、身動きどころか意識を失っていたように思うのですが?」


「魔力を失っても、他人から吸い取れるらしいわよ?今朝、テレサから魔力を吸い取って、つやつやしていたもの」


「……それ、何か違う物を吸い取っていません?例えば若さとか」


「まぁ、テレサって、半分は機械だし、そういうのは無いと思うけれど……」


「そうですか……。もしも"若さ"を吸い取っているというのなら、ぜひ、実験材料になっていただきたかったのですがね……」ちらっ


「ひっ?!」


 カタリナがチラリと視線を向けるだけで、ビクリと身体を緊張させるマリアンヌ。最早、彼女の心は、恐怖の気持ちで一杯になっていると言えたが、しかし、彼女の受難はこれからが本番(?)だと言えた。


「では、診察しましょうか」


 いよいよカタリナによる診察が始まったのである。



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