14.12-29 無力?29
最後の方の言い回しを修正したのじゃ。
ズバンッ!
ルシアが振り下ろした木剣から、到底、風を斬ったとは思えないような音が響き渡る。相当な勢いで風を斬ったらしく、剣の先端で衝撃波が発生していたらしい。
そしてその剣は真っ直ぐにテレサへと振り下ろされる。その瞬間、皆が確信した。……テレサは死んだ、と。
とはいえ、ルシアとしては、テレサの事を傷付けたくて、木剣を振り下ろしたわけではない。ルシアは確信していたのだ。……テレサはこの程度で傷つく事はない、と。それも、たとえ木剣で剣撃を受け止められず、身体で直接受け止めたとしても、だ。
カンッ!
木剣の衝突音が、その場に響き渡る。その音を聞いた学生たちは思わず目を見開いた。ルシアは凄まじい勢いで木剣を振るったというのに、聞こえてきた音はとても小さかったからだ。
それは、木剣を振るったルシアも同じだった。
「……なんか、叩いた感じが無いんだけど?木剣を軽くしてるから、ある程度は軽い音になるのは分かるけど……でも解せない」じとぉ
対するテレサは、「ふんっ」と鼻で笑う。
「ぶつかった瞬間に、剣を手前に引いて減速させれば良いだけなのじゃ。真っ向からぶつけ合うから、衝撃や音といったものが生じるのじゃからのう」どやぁ
「えっ……テレサちゃん、そんなこと出来たの?いつも、受けるばっかりで、減速とかできなかったよね?お姉ちゃんとか、コルちゃん辺りなら、出来てもおかしくないけど……」
「多分……ア嬢から攻撃を受けたときのみ、何か制限が外れるのではなかろうか?」
機械の身体を持つ彼女は、普段の生活に支障が出ないよう、出力制限をされているのである。しかしどうやらその制限は、ルシアが相手の場合にだけ、例外的に無くなるらしい。
とはいえ、それは、テレサの予想でしかなく……。おそらくその制限を設定しただろう人物に対して、彼女は確認のために視線を向けた。
しかし、その人物は、テレサからの視線に気付いていない様子で、どういうわけか、クラスメイトたちの間を右往左往していたようである。未だ打ち込みのためのグループ分けから溢れたままだったらしく、相手を探しているらしい。なお、余っている学生はいない模様だ。
「まぁ、良いか。……来るが良い!ア嬢!お主の剣撃など、リミッターが外れた今の妾にとって、屁でも無いのじゃ!」
「ふふーん?後悔しても知らないからね?」
テレサの煽りにルシアが乗る。その直後のことだ。
バババババッ!!
まるで、マシンガンでも撃っているかのような音がその場に響き渡る。ルシアの剣撃が、劇的に加速したのだ。
だが、テレサはそのすべてを、機械のような正確さで、すべて受け止めてしまう。
「無駄無駄無駄無駄!!」
「やるじゃん!なら!」
ルシアがそう口にすると、彼女が纏う重力制御魔法の特性が変わる。教師であるライアンを吹き飛ばしたときのように、テレサの体重を軽くし、少しの衝撃でも軽々と飛んでいくように調整したのだ。
ところが——、
「《重力制御魔法無効》!」
——テレサがそう口にした瞬間、ルシアが使おうとしていた重力制御魔法の力場が消えてしまう。テレサの言霊魔法によって打ち消されたのだ。
「ちょっ……それズルい!」ババババ
「常時魔法を使っておるア嬢には言われたくないのじゃ?」カンカンカンカン
「ぐぬぬ!」
ルシアはテレサの指摘に言い返せず、苦々しい表情を浮かべながら、テレサに斬り込み続けた。しかし、そのすべてを、テレサは難なく受け止めてしまう。
「こ、ここまで!」
5分が経過し、打ち込み練習の半分が終わった。結局、生徒たちは、ほぼ全員が、ルシアとテレサの打ち込みに意識を取られ、まともに打ち込めている者は、殆どいなかったようである。それほどまでに、2人の打ち込みは苛烈だったのだ。
そして——、
「ぐふふふ……ようやく妾の時代がやってきたようじゃのう?ア嬢」
「なんか、その笑い方、イラッとするんだけど……」
——打ち込みの攻守が切り替わり、今度はテレサが打ち込んで、ルシアが受け止める番がやってきた。
???「ハイスピア先生!打ち込みをする相手がいないので、相手になってくs——」
ハイスピア「あははは〜」
???「……さびしい……」げっそり




