表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2891/3387

14.12-22 無力?22

「さて……実技の授業を進める前に、グループを分けようと思う。慣れている奴のための"熟練者コース"と、ある程度慣れている奴のための"ひよっこコース"、あと、まったくの初心者のための"たまごコース"で、合計3グループだ。本当なら、騎士科に入ってくる学生に初心者はいないんだが……まぁ、そこは仕方ねぇ。"たまごコース"の奴らには、特別教室らしく、特別授業を行うことにする。そんなわけだから、騎士科の連中は熟練者コースな?"たまごコース"にしたいとか言うなよ?数が増えると面倒だからな」


 熟練度に応じて、教える内容が異なるためか、騎士科の教師ライアンは、特別教室の生徒を3つのグループに分けることにしたようである。魔法科や薬学科の学生に、いきなり高度な剣術の授業を教えたところで、そう簡単には覚えられないどころか、他の学生たちの足を引っ張る可能性もあるからだ。


 特別教室の生徒25名の内、騎士科の学生は6名である。その6名が、"熟練者コース"のグループになり、残り19名をどうするかという話になった。ちなみに、ライアンと打ち合ったラリーは、騎士科出身なので、"熟練者コース"だ。その他、ミレニアの幼なじみであるジャックも騎士科なので、彼も"熟練者コース"に入ることになった。


「自己申告でも良いんだが……いや、やっぱり俺が直接打ち合って確かめた方が手っ取り早いだろう。出席番号順に、俺に打ち込んでこい」


 ライアンはそう言って木剣を構えた。


 出席番号順で行くと、1番はアステリアである。彼女は周囲を見渡して、皆が自分に視線を向けているのを察してから、何かを諦めたようにガックリと肩を落として立ち上がった。そして彼女は、箱の中から木剣を手に取って、ライアンと向かい合い、頭を下げる。


「ア、アステリアです!よ、よろしくお願いします!」


 そこでようやく彼女は、木剣を構えた。


 そんなアステリアの所作を見ていたライアンは、ふと疑問に思ったのか、問いかけた。


「ふむ……。もしかして、アステリアちゃんは、剣を振るった経験があるのか?」


「はい?いえ、無いですけど……」


「そうか……。まぁ、いい。俺に打ち込んでこい」


「は、はい!」


 その瞬間——、


   ズドンッ!!


——アステリアの姿がその場から消える。目にも留まらぬ早さだ。文字通りに"一瞬"でライアンに肉薄したアステリアは、そのまま木剣を振り下ろした。


「やあっ!」


   カンッ!!


「っ?!悪くはねぇ!悪くはねぇけど……まだ原石だな。いや、すげぇ原石かも知れねぇな……これは」


 一瞬の出来事だというのに、難なく受け止めたライアンは、アステリアのグループを決める。


「うん。"たまごコースだ"」


「は、はい……」しゅん


 と、獣耳を倒して、クラスメイトたちのところへと戻っていくアステリア。そんな彼女の背中に向かって、ライアンは言った。


「落ち込むことはねぇぞ?アステリアちゃんは、ちゃんと磨き上げれば、俺なんかより遙かに強くなるはずだ。というか……下手をすれば、この国でも最強になれるんじゃねぇか?」


「「「えっ……」」」


「それだけすげぇ打ち込みだったってことだ。特に、速度はトンデモなかったぜ?まぁ、すげぇのは打ち込みだけで、剣筋は素人そのものだったけどな。だから初心者コースだ。丁寧に教えてやるから、覚悟しろよ?」


「は……はい!頑張ります!」


 そう言って、今度は獣耳をピンと立てるアステリア。この時、ライアンは、アステリアの打ち込みを思い出しながら、内心でこんなことを考えていたようだ。


「(ふふん!獣人も悪くねぇ。っていうか、よっぽど人よりも教え甲斐がありそうだ)」


 それは純然たる感心。彼はこれまで、獣人たちを取るに足らない存在だと考えていたのだが、アステリアと剣を交わし合ってからというもの、その考えを変えたようである。


 その後、出席番号が若番の者たちから次々にライアンと打ち合っていく。現状は、"たまごコース"と、"ひよこコース"で、おおよそ半分づつ。学生たちには貴族出身の者たちも少なからず含まれており、小さな頃から英才教育を受けていた関係で、魔法だけでなく、剣術を嗜んでいる者も少なくなったのだ。


 そして、生徒たちの半分ほどのテストが終わった頃。とある人物の番がやってくる。


「次は妾かの。よっこらせ……」


 テレサだ。体育座りをしながら、皆の剣撃を見ていた彼女は、けだるそうに腰を上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ