表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2884/3387

14.12-15 無力?15

最後の方の文章で、悩んでおるのがワルツのように見えたゆえ、修正したのじゃ。

「……皆さんの能力に私自身が付いていけない……そんな気しかしないのです」


『「「「「…………」」」」』


 皆、静かにハイスピアの話に耳を傾ける。中でも、アステリアは、共感することでもあったのか、真剣そうにハイスピアのことを見つめていた。


「教えられることは数多くありますが、教えられることは何一つ無い気がしてならないのです……」


 どの教科を教えるにしても、毎回、完璧以上に予習をしてくる……。そんな生徒たちに一体何を教えれば良いのか……。ハイスピアは内心で、もっと不真面目な生徒だったら良いのに、などと考えていたようである。まぁ、教師である以上、間違ってもそんな事は言えないのだが。


「座学だけではありません。先ほどの落雷など、実技についてもそう」


 その瞬間、一部の学生の尻尾がブワッと膨らむ。何か思うことがあったらしい。何とは言わないが。


「私の専門分野であるはずの薬学の授業も同じです。最早、私が学生になって、皆さんから授業を教わった方が良いとすら考えているくらいです」


 そんな切実なハイスピアの告白は授業に関することだけに留まらず、次第に授業外のことにも広がっていく。


「それにこのクラスの生徒たちは、他国の王女様ばかり。同じ国の貴族相手なら、まだ対応できますが、下手な対応をすれば国際問題に発展しかねないという大きな責任があるのです……」


 と、内心を赤裸々に暴露するハイスピアの言葉を聞いて、ここで初めてワルツがツッコミを入れる。


「えっと、ハイスピア先生?ここにいるメンバーの中に、王女様はいないからね?元王女様はいないでもないけど……」


「えっ?……えっと?マリアンヌ様は?」


「えっ?マリアンヌだったら、さっき、一人で学院長室に歩いて行ったわよ?」


 とワルツが口にした瞬間——、


   ガタンッ!!


——とハイスピアは立ち上がり、血相を変えて、教室を出て行った。


 そんなハイスピアのことを見送りながら、ワルツたちは考える。そして気付く。


「……なるほど。本来であれば、隣国の皇女様には、専属の教師か何かが付くはずで、その担当がハイスピア先生だったってわけね。なのにマリアンヌったら、教室に寄らずに一人で歩いて行っちゃったものだから、ハイスピア先生は慌てちゃった、と」


「そっかぁ……。だから、今日、ハイスピア先生は、早めに教室に来てたんだね?」


「しかし、なぜ教室で待っておったのじゃ?本来であれば、校門まで迎えに来るべきではなかろうか?」


『どうやって来るか、確証が持てなかったのでは?下手をすれば、空を飛んでくる可能性もあるわけですし……』


「ハイスピア先生……色々と考えることがあって、大変なんですね……」


 5人揃ってハイスピアのことを慮った。もはや、掛ける言葉すら見つけられないといった様子だ。


 と、そんな時。外に出ていったハイスピアと少し遅れて入れ替わる形で——、


   ガラガラガラ……


——教室にクラスメイトたちがやって来る。


「おはよう。あら、やっぱり早いわね?皆さん」

「おはよう。この調子じゃ、ミレニアが言ったとおり、今日も授業がありそうだな」


 最初にやってきたのは、ミレニアとジャックの幼なじみコンビだった。昨日も同じタイミングで登校してきたところ見るに、普段から一緒に登校しているのかも知れない。


 そんな2人に対し、皆が挨拶を返した後、ミレニアが眉を顰めながら、ワルツたちに問いかけた。


「ところで、さっきハイスピア先生が、血相を変えながら廊下を走っていったみたいだけれど……何かあったの?」


 ミレニアの質問に、ポテンティア(男子生徒バージョン)が返答する。


『マリアンヌさんの事を追いかけていったみたいですよ?マリアンヌさんはエムリンザ帝国の皇女様ですので、恐らくハイスピア先生は、彼女を案内する担当として指名されていたのだと思います』


「そう……。ハイスピア先生も大変ね。特別教室の担任教師を受け持ったり、皇女様の相手をしたり……」


 と言いつつ、遠い視線を教室の扉の方へと向けるミレニア。その視線には、明らかに哀れみの色が含まれていて、彼女もまた、ハイスピアのことを心配しているのは明らかだった。


 それからミレニアは、ワルツたちの方を振り返るのだが、どういうわけかミレニアの表情は、梅雨の空のように冴えなかった。ハイスピアのことを心配している、といった雰囲気でもなかったようである。


 一体何が起こったのか……。すこし心配になったのか、ポテンティアが問いかけようとすると、それよりも先に、ミレニアの口が開いた。


「すこし……相談事があるのだけど、良いかしら?」


 彼女もまた、何やら困っていることがあったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 2884/2884 ・可能性の暴力というかなんというか [気になる点] ワルツさんの困りごとですと。なんでしょうね。寿司ですか? [一言] 王族と狐にまみれまくったパーティー。なんぞこれ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ