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14.12-10 無力?10

「魔力が勝手に抜けていく病気を、他人から魔力を吸い取ることで克服してきた、ねぇ……」


「はい……テレサ様を巻き込んでしまい、大変申し訳なく思っております……」


 事情を打ち明けたマリアンヌの説明を聞いたワルツは、感心するように相づちを打った。彼女が知っている慢性型魔力欠乏症は不治の病であり、放っておけば死ぬ病気。自力で克服するというのはほぼ不可能だと考えていたのである。


 ワルツはそれと同時に、マリアンヌの言葉の信憑性についても考えていた。言い訳として魔力欠乏症を挙げるというのは、あまりに自然すぎたからだ。むしろ、すんなりと納得できたからこそ、念のために疑った、と言うべきか。ただ、その判断を付けるには材料が足りず、ワルツは取りあえず、話の信憑性については棚上げにすることにしたようだが。


 対するマリアンヌとしては、素っ気ないワルツの言葉を聞いて、彼女が怒っているのではないかと心配していたようである。両腕で頬杖をしながら自分に対してジト目を向けてくるワルツを見る限り、彼女が魔力欠乏症そのものの存在に疑念を抱いているように見えたのだ。


 ゆえに、マリアンヌは自分の抱える病気について、追加で説明しようとするのだが、その前に、ワルツが頬杖を正して口を開く。


「事情は分かったわ?でも、この先も他の人たちに急に抱きつかれたりしたら困るのよね……」


 そう言いながら、テレサに視線を送るワルツ。そんな彼女の視線の先では、ルシアがまるで埃でも払うかのように、自身の尻尾をテレサの顔に尻尾を叩き付けているという謎の光景が広がっていたようだ。まぁ、今回マリアンヌが魔力を吸い取った相手はテレサだったので、その程度で済んでいると言えたが、もしも今後、マリアンヌがテレサ以外——具体的には、学院の異性などを自宅に連れ込んで魔力を吸い取るようなことがあれば、家の中の雰囲気(ムード)が悪くなる可能性は極めて高かった。


 状況が悪化することが分かっているのなら、未然に防ぎたい……。そんな考えを抱きながら、ワルツは釘を刺す。


「公序良俗に反する行為は、この家では禁止よ?例えば、魔力を吸い取るために、見ず知らずの学生を自宅に連れ込む、とかね?」


「……承知しております」


 ワルツの言葉に、マリアンヌは頷くしかなかった。拒否すれば、家から出ていくしかないからだ。


 マリアンヌとしては、臭気魔法を使えば、ワルツの家以外にも頼れる場所を用意することが出来なくはなかった。しかし、現状、彼女としては、ワルツの家から出るつもりはなく、しばらくワルツたちと行動を共にするつもりでいたのである。


 そうなると問題は、誰から魔力の供給を受けるか、である。ちなみに頻度は、1週間に1回程度。あるいは、魔力がある程度減ってきたら魔力の提供を受ける必要があった。昨日は入学試験で魔法を使ったこともあり、余計に魔力が減っていたらしい。


「(この家で頼れる方は……)」


 ルシア辺りなら余剰な魔力の供給を受けられそうだが、そうなると今度は自分が魔力供給過多でおかしくなってしまいそうな気がする……。ミュータントのごとく、テレサの尻尾が30本を越えて増え続けている様子を見ながら、マリアンヌは自身の考えを否定した。


 一方、ワルツも、魔力欠乏症についてはよく知っていたので、彼女なりに対応を考えていたようだ。


「ま、仕方ないし、根本治療をするしかないわね」


「えっ?根本……治療?治療なんて出来るのですか?!」


「偶然、貴女以外にも、同じ症状を発症した人がいてね?ただ……」


「……ただ?」


「身体から抜けていく魔力の量よりも、もっと多くの魔力を作ってしまおう、っていう効果の薬だから、下手をするとトンデモない量の魔力を持つことになるかも知れないのよ」


「トンデモない量の魔力……」ちらっ


「あ、ルシアは関係ないわよ?ルシアの魔力は元々だから……」


「そ、そうですか……」


 ルシアは薬とは関係無い、と説明を受けたマリアンヌだったが、彼女の懸念は拭われなかったようである。どういう原理かは不明だが、ルシアから無理矢理魔力を注ぎ込まれていたテレサの尻尾が、いよいよ50本を越えて、ついには頭から生え始めているのを見ていると、いくら関係無いと言われても、気にせざるを得なかったのである。


 魔力が増えすぎると自分もあのようになってしまうのだろうか……。そんな懸念に頭を悩ませるマリアンヌだったが——、


「あ、そうそう。実は魔力欠乏症の治療薬には問題があって、たくさん食べ物を食べないと、どんどん痩せていくっていう副作用があるのy——」


「飲みます!飲ませて下さいまし!」ガタンッ


——ワルツの説明を聞いたマリアンヌは、コロッと考えを180度反転させた。莫大な魔力を持つことによる懸念は綺麗さっぱり無くなって、別のことで頭がいっぱいになっていたようである。


「そ、そこまで言うのなら……」


 ワルツはそう口にすると、コルテックスに目配せした。すると、姉からの視線の意図を読み取ったコルテックスは、無線機を手に取って、とある人物の名前を口にしたのである。


何という事じゃろう……。

12月が終わり、2022年も終わってしまうのじゃ。


……そして正月休みも半分が終わってしまったという……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 爆食いフラグ。 [気になる点] いったい何人前になるんでしょうね
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