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14.11-45 登校45

サブタイトルのナンバリングが間違っておったゆえ、修正したのじゃ。

「はぁ……もうダメかも知れぬ…………もふ……」わなわな


「鼻血出して、ダメかも知れない、って言っても、ニヤけてたら何の説得力も無いからね?」


 ルシアから魔力の充填を終えたテレサは、それはもう、酷い顔をしていた。色々と認めたくないので、感情を表に出したくないのだが、どうしても零れてしまう、といった様子だ。ちなみに、鼻から下は血だらけである。


 そんなテレサの姿を見たワルツたちは、この時、純粋に心配していたようである。ただし、テレサが鼻血を出していたからではない。彼女の尻尾が、数え切れないくらいに増えていたからだ。しかも、テレサは、ルシアから魔力を流し込まれたというのである。ワルツたちから見るかぎり、テレサは、身体の限界を超えて魔力を詰め込まれたようにしか見えなかったのだ。


 しかし、どうやら、見た目に反して問題無かったらしい。テレサは学生服の袖の中からハンカチを取り出すと、口許を拭いて……。そして、何事も無かったかのようにルシアに対してこう言った。


「これだけ魔力があれば問題は無かろう。ほれ、やるが良い。ア嬢よ。重力制御魔法で空中のあれを浮かべるのじゃ」


「じゃぁ、行くよ?」


 ルシアは、無限落下する森の一部を重力制御魔法で受け止めた。その瞬間、森に急ブレーキが掛かり、空気の流れが大きく乱れる。


   ドゴォォォォッ!!


「ふむ……ブレーキを早く掛けすぎではなかろうか?森本体には加速度は掛かっておらぬようなのじゃが、大気がすごいことになっておるのじゃ」


 というテレサの言葉どおり、空の空気や雲が、自然現象ではあり得ないことになっていた。高速に無限落下する森が作り出す大気の流れによって、空にはドーナッツ型の積乱雲が出来上がっていたのだが、森が急停止した影響で、積乱雲が崩れてしまい、今度は町を中心に円形に暗雲が立ちこめるという謎の天候になっていたのである。それも分厚い暗雲だ。まるで空に壁が出来上がったかのようだった。


「んー……拙いかなぁ?」


「分からぬ。もしもあの雲が雨雲だとすれば、集中豪雨の一つや二つくらいは降ってくるかも知れぬのう」


 そんなテレサの発言を裏付けるように、ラニアの町の周囲に広がっていた森に、靄のようなものがかかり始める。相当量の雨が降り始めた証拠だ。ラニアの町の上空には、浮島と化した森が浮かんでいるので、雨が降ってくるような事はなかったが、それも時間の問題。雲が風に流されれば、町にも豪雨が降り注ぐ可能性は高いと言えた。まぁ、森に降った雨が、濁流となって、町に流れ込んでくる可能性の方が高いかも知れないが。


「えっと……どうしよ?」


「……仕方ないのう」


 テレサは再び溜息を吐くと、二言ほど、ボソッとつぶやいた。


「『雨よ、上がるが良い』『雲よ、消えるが良い』」


 その直後、まるで嘘のように雨と雲が消える。これ以上無いほどの快晴だ。それと同時に、無数にあったはずのテレサの尻尾が、一本を残してすべて無くなってしまう。


「ふん!妾に掛かればこんなものなのじゃ」ぷるぷる


「えっと……純粋にすごいと思うよ?だけどさ……」


「……何かの?」がくがく


「……ものすごく言い難いんだけど、なんで震えてるの?」


「それは、あれなのじゃ。……魔力切れ」げっそり


「燃費悪すぎだし……」


 ルシアは呆れた様子で、再びテレサの顔に尻尾を叩き付けた。すると、1本まで減っていたテレサの尻尾が、再び急激に増えていく。


 そしてルシアが尻尾を外すとやはり——、


「……人生一片の悔い……いや、悔いしか無いのじゃ……」たらぁ


——テレサは鼻血を出し始めた。


「ちょっと、鼻血出過ぎなんじゃない?大丈夫?」


「血圧と心拍数が上がっておるだけなのじゃ。問題はないのじゃ」


「それ、大丈夫って言わないし……」


 と指摘しつつも、テレサ本人が大丈夫だというので、ルシアはそれ以上深くは考えなかったようである。なにしろ、テレサは人ではなく、機械の身体を持った狐娘なのだ。例え人間にとっては致命的なダメージでも、テレサにとっても同じとは言えないのだから。


 そんなやり取りをしながら、ルシアは定期的にテレサへと魔力を融通して、迷宮の振動が収まるまでの間、宙に浮かんだ森をそのまま魔法で持ち上げ続けた。どんなに強大な魔力を使っても、テレサが痕跡を隠蔽するので、少し離れた場所にいた冒険者の身心に異常をきたすことはなかったようである。


 ただ……。ワルツには一つだけ、気になる事があったようだ。


「(ルシアったら……たまにブルッと震えているようだけど……なんか寒気でも感じているのかしら?)」


 ルシアは本来、身体が弱いのである。そのせいか、ワルツは妹の事を心配したようだが、彼女はその場でルシアに対して直接問いかけることはしなかった。


 というのも——、


「少し良いか?」


——ワルツの所に、グランドマスターがやってきたからだ。


たとえア嬢がもふもふな尻尾をもっておろうとも、キツネそのものではないゆえ、モフリティーを感じるというのは認められぬことなのじゃ!


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