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14.11-39 登校39

「ビームサーベル……?そんなのいつ作ったの?!」


 妹が手にした光の剣(?)を前に、ワルツは目を疑った。彼女も見るのは初めてだったらしい。


「この前、コルちゃんに貰ったやつだよ?なんか、この剣を使うと魔力がたくさん減るらしいし、それに、前に持ってた聖剣は使わないだろうから、って渡してくれたの。聖剣の柄を改造して作ってくれたみたい」


「聖剣の柄だけって……それ聖剣って言わない……まぁ、いいけど……」


 ワルツには何やら言いたいことがたくさんあったようだが、彼女はそのまま言葉を飲み込んだ。ツッコミ始めると、終わりが見えなくなると思ったらしい。


 そんなワルツの前で、ルシアが新たな行動に出る。光の剣を仕舞い込んで、両手を大きく開くと——、


   ブゥン……


——彼女の身体に直接装着される形で、装備が転移してきたのだ。


「あと、服の上から着る魔道具も作ってくれたんだけど……これ、正直言って、可愛くないんだよね……」


 ルシアの身体を包み込むように現れたのは、身体の半分ほどを隠す金属の鎧のようなものだった。しかし、一般的な女性用の鎧とは異なり、スカートの部分に円筒状の筒が取り付けられていたようである。それも大量に。


 それが気になって、ワルツが問いかけた。


「えっと……何それ……?その筒状のやつ……」


「なんか出るやつ?」


 鎧を身につけたルシアが、重力制御魔法で少し空中に浮かんだ、その瞬間——、


   バシュッ!


——と筒が小さな爆発を起こし、ルシアの身体が一気に加速する。


「バ、バーニア?!」


「今は上手く使いこなせないんだけど、魔力を消費するには()()()()()だから、ってコルちゃんが言ってたんだけど……やっぱり、可愛くないよね。パンパン五月蠅いし」バババババ


「……まぁ、うん……。確かに、可愛くはないわね……っていうか、それ以前の問題だと思う」


 コルテックスはいったいなんてものを妹にプレゼントしてくれたのか……。ワルツは内心で憤ったようだが、口に出来る言葉ではなかったらしく、ただピクピクと目尻を痙攣させていたようだ。どうやら、ルシアにプレゼントする前に、自分にプレゼントしてほしかったらしい。


「私はこれで準備OKだよ?」ババババ


「……じゃぁ、行きましょうか。……っと、その前に、私も装備を付けようかしら?」


 妹がバンバンと小規模爆発を起こしながら空中を漂っている様子を見ている内に、ワルツの方も"目立たないように行動する"という方針が変わったららしく、彼女はポチッと鞄の横のボタンを押下した。すると、鞄がメカメカしく変形して、以前、学院の試験で使われた簡易機動装甲がワルツの身体を包み込んだ。


「これでお揃いね?」


 と、ワルツが口にすると、今度はポテンティアがやれやれと言わんばかりに口を開く。


『では、僕も変身させて頂きますね』


 ポテンティアが首を振った直後、彼女(?)の身体に何か砂鉄のようなものが纏わり付く。マイクロマシンたちだ。結果、ポテンティアもワルツたちと同様に、何やらメカメカしい見た目に変わる。


 彼の場合、目を引いたのは、腕に取り付けられた筒状の物体だ。もちろん、ルシアのようなバーニア(?)ではない。


「……その装備、敢えて何なのか聞かない方が良いのかしら?」


『えっ?"ポテンティア"に付いているものと言えば、あれしか無いじゃないですか』


「レールガン……」


 ポテンティアにしても、エネルギアにしても、メインと言える武器は、船体上部に取り付けられた巨大な2門のレールガンなのである。人の姿のポテンティアは、その短いバージョンをマイクロマシンで再現したらしい。当然、威力は落ちるはずだが、対生物戦闘をするのであれば十分な効果を発揮することだろう。


 そして、もう一人。


「じゃ、じゃぁ、私も……!」ボフンッ


 アステリアも変身した。まぁ、彼女の場合は変身と言うよりも、元の姿に戻ったと言うべきだろうか。


 彼女は、黒い毛並みの巨大な狐の魔物に戻ると、まるで身体に付いた水を吹き飛ばすように、身体をブルブルと震わせた。窮屈だった人の身体から、元の姿に戻って、心地が良い、といった雰囲気だ。


 ちなみにワルツたちは——、


「ふーん。アステリアは獣スタイルで行くのね?」

「アステリアちゃんの変身ってすごいよね。本物みたいだもん」


——といったように、アステリアのことを魔物ではなく、飽くまで人が魔物に変身したのだと考えていたようである。ポテンティアとテレサは、アステリアの正体に気付いていたようだが、2人とも人間ではなかったためか、わざわざ話題にしようとは思わなかったようだ。


「さて、準備は良いわね」


 装備が終わったワルツは、意気揚々と出発を宣言するが……。約1名だけ、険しい表情を浮かべる者がいた。


「……のう、ワルツよ」


 テレサだ。とはいえ、彼女だけ、装備や変身の類いが無かったから、というわけではない。


 彼女は眉間に皺を寄せながら、地面に視線を向けて、そしてこう言った。


「……迷宮の中にある赤い魔石というのは……これのことではなかろうか?」


「「『「……あっ」』」」


 どうやら、迷宮探索を始める前に、目的のものを見つけてしまったようだ。

いつもの展開、なのじゃ。

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