14.11-24 登校24
ドゴゴゴゴゴッ!!
地響きと共に、迷宮の入り口が隆起して、地面が割れる。それも大規模に。何かが地面を押し上げて、表に出てこようとしていたのだ。もしもラニアの町を転移させていなかったなら、今頃大惨事に発展していたに違いない。
「お姉ちゃん。あれ、どうする?本当に危険そうなら、お月様か太陽辺りに転移させちゃうけど……」
「ルシアってホント半端ないわね……。まぁでも、今はまだ転移させなくて良いわ?ちょっと考えていることがあるのよ」
「「「『考えていること?』」」」
ワルツの発言に、ルシアたちは一斉に訝しげな表情を浮かべた。ワルツが何かを考えていると発言するときは、それなりの確率で碌な事を考えていないからだ。
実際、ワルツは、こんなことを言い出した。
「ポテンティア。貴女があれの相手をしなさい」
『はい?僕が、ですか?何故です?』
「考えたんだけど、魔石って、お金になるわけじゃない?で、私たち、そんなにお金を持っているわけじゃないじゃない?じゃぁ、せっかくだし、魔石を回収して売ったら良いんじゃないかな、って思って」
『あぁ、なるほど』
そうは言いつつも、ポテンティアは内心、ワルツの言葉に否定的だった。というのも、ポテンティアはワルツのように一文無しというわけではなく、むしろ、国家予算クラスの資金を持っていたからである。先日、エムリンザ帝国に報復攻撃を加えた際、国の貨幣という貨幣を、自身のマイクロマシンを使ってすべて回収した結果だ。
『(まぁ、かの国の資金を手元に回収したというだけで僕自身が使うわけではないので、自由に使えるお金が多くないというのは確かなのですからね……)』
ポテンティアは、エムリンザ帝国から資金を奪ったものの、いつか返そうと思っていたのか、資金に手を付けるつもりはなかったようである。
故に、彼女(?)は、ワルツからの指示に従うことにしたようだ。
『わかりました。僕が相手をしましょう』
と、ポテンティアが口にすると、ワルツがこんなことを言い出した。
「助かるわ?あと、もう1つだけ注文を追加しても良いかしら?」
『はい?どんな注文でしょうか?』
「大した事じゃないんだけど——」
ワルツがそう口にした瞬間——、
ズドォォォォン!!
——と迷宮の入り口にあった岩や土が、空に向かって吹き上がる。さながら噴火のようだが、そういうわけではない。
地面から出てきたものは、白くて丸い球状の物体。直径は10m程だろうか。
球体の半分ほど頭(?)を覗かせた謎の球体に視線を向けながら、ワルツはまったく怯むことなく、ポテンティアに対してこう言った。
「あれを人の姿で倒してほしいのよ。できれば、ラニアの町の人たちに見せつけるようにして、ね。多分、彼ら、今頃立ち直って、町からこっちを観察しているはずだから」
『……なるほど。つまり、ワルツ様は、先ほど大きな魔石を回収したために、皆さんの注目を浴びているから、僕を目立たせることで有耶無耶にしてしまいたい、と言うわけですね?』
「そ、そ、そういうわけでは……なくないかも知れないんだからね?」そわそわ
「「「『…………』」」」
ポテンティアの問いかけに対し、妙な言い回しの肯定を返すワルツを前に、皆が微妙そうな表情を見せた。思った通りだった、と言わんばかりの表情だ。
その間も——、
メキメキメキ!
——迷宮の入り口からは、白い何かが出てこようとしていたようである。どうやら、地面から見えていたものは単なる球体ではなく、頭頂部に当たる部分だったらしい。
そして更に見えてきたのは——、
「なるほど。巨大なスケルトンだったわけね……っていうか、むしろ、がしゃどくろ?」
——頭幅10m、推定身長200m近い、巨大なスケルトンの姿だった。




