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14.11-23 登校23

「うん!帰りましょうか!」


「「「『えっ』」」」


 大きな音が聞こえた直後、ワルツは帰還を決断した。これ以上、この場に留まっていても、碌な事にはならないと思ったらしい。


 しかし、周囲にいた者たちは、やはりと言うべきか、ワルツの発言に疑問を抱いていたようである。


「お姉ちゃん、まだ終わってないみたいだよ?」

「放置して帰ったら、この町は無くなってしまうのではなかろうか?」

『この大陸の魔物は、人に比べてかなり強いという話ですからね……』

「私は帰りt……皆さんの決定に従います……」しゅん


「……やっぱ、ダメかな?」


「「「『…………』」」」こくり


「……仕方ないわね」


 ワルツは仕方なく帰還を断念した。


 それから彼女たちは、周囲を見渡して、何が起こっているのかを確認し始めた。そこにいたルシア、テレサ、ポテンティア、アステリア、そしてワルツの5人以外は、皆がその場の地面に伏せっているという状況で、屈強な冒険者たちも立ち上がれない様子だった。


 皆、いったいなぜ伏せっているのか……。ワルツは町の人々の発言を思い出す。


「そういえば、誰だったかが、魔力が云々って言っていたわね……」


「わ、私じゃないよ?!……た、多分だけど……」しゅん


 自分の魔力のせいだと否定できなかったルシアは、耳と尻尾をぺたりと倒す。


 そんなルシアの行動に反応したのは、普段から彼女の魔力を幻影魔法で隠蔽しているテレサだ。


「うむ。妾の魔法は間違いなく発動しておるのじゃ。もし、幻影魔法が上手く発動しておらぬと言うのであれば、今頃、アステリア殿はげっそりとしておるはずじゃからのう」


「えっと……テレサ様の近くにいる分には、魔力で気持ち悪くなることはないです。……なんか、変な手の握り方をしてくるときは、違う意味で気持ちわr……いえ、なんでもありません……」


 とアステリアが口にすると、テレサが、がーん、という効果音を上げんばかりに唖然とした表情を浮かべる。まさか、自分が気持ち悪るがられているとは思わなかったらしい。


 そんな彼女の足を、ルシアが何故か、ガッ、と踏みつけた。この時、ルシアは、何も言わない。彼女は、ただ頬を膨らませて、顰め面をテレサに向けていた。


「……2人とも何やってるの?」


『さぁ?色々とあるのだと思いますよ?それより——』


 首を突っ込み過ぎると厄介なことになると思ったのか、ポテンティアが脱線した話題を元に戻す。


『まずはこの場から皆さんを避難させるべきではないでしょうか?何が出てくるのか分かりませんが、何をするにしても、皆さんに退いて貰わなければ、足手まといになると思います』


「そうね。避難場所は——」


『ひとまず、迷宮から遠ざけられれば良いと思うので、町の外で良いのでは?』


「だってさ?ルシア」


「おっけー。町ごと移動させれば良い?」


「できるなら」


 と、ワルツが口にした直後——、


   ブゥン……


——という音を響かせて、町が消えた。もちろん、町の人々やハイスピアたちも一緒に。


 そして、少し離れた場所でまた同じ音が聞こえてくる。ルシアが転移魔法を使って、町ごと水平移動させたのだ。なお、町を転移させる前にあった森がどこに消えたのかは不明だ。


「流石ね」


「ちょっと横にズラすくらいだから簡単だよ?どうせだから、このまま迷宮もどこかに転移させちゃう?月とか」


「「『あー……』」」

「えっ……月?!」


 ルシアならやろうと思えばできるのだろう……。事情を知らないアステリア以外の全員が同じ声を上げた——その瞬間の事だ。


   ヲ゛ォォォォォンッ!!

   メキメキメキッ!!


 迷宮の入り口が、地割れを起こし、不自然に隆起を始めたのである。


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