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6前前-08 旅路(ミッドエデン-ボレアス)1

ユキの一人称を修正

晴れ渡った空の下で、街道を北に向かって歩くワルツ達。

流れていく雲は遥か上空にあり、暫く天気は崩れそうにない。

そんな天候だと、気温も高くて然るべきだが・・・近くにユキがいるためか、ワルツ達を取り巻く空気はそれほど温かくなかった。

周囲の気温のマイナス5度くらいだろうか。


「・・・ユキ?」


王都を離れてから、ルシアと取り留めのない会話をしていたユキに対して、ワルツが口を開く。


「もしかして貴女、機動装甲が見えて・・・って言っても分かんないわよね・・・私の本当の姿が見えてたりする?」


「え?あ、はい。見えてますよ?どうしたんですか、急に」


「あー、やっぱり見えてるんだ・・・」


どうやらユキには、ドラゴンたちと同じく、光学迷彩の効果が無いらしい。


「いやね、ホログラムが直った次の日・・・えーと、ルシアの洗礼式の次の日に、議長室で会ったじゃない?」


「えぇ、確かに会いましたね。メルクリオ王国の国王様がいらっしゃっていた時のことですよね?」


「そうそう。カノープス達がいたときのことね。あの時、貴女、初めて見るはずの私の顔を見て、なんにも驚いてなかったなーって、今更だけど思い出したのよ」


つい先日まで、ワルツのホログラムは壊れていたのである。

にも関わらず、ホログラムの姿を知っているとすれば、神や天使、あるいはアルタイルの回し者ということになるだろうか。

・・・尤も、ユリアやシルビアから、ユキとの出会いの話を聞いていたので、その可能性は限りなく低いとワルツは考えていたのだが。


「そうですね・・・確かに知らない人だと一瞬思いましたけど、後ろにワルツ様が立っていらっしゃいましたし、それに声も聞こえていましたので、変身してるってすぐに分かりました」


「やっぱり、そうだったのね・・・」


(思ったよりも光学迷彩が効かない人って多いのかしらね・・・)


そう思いながら、魔族の知人の中に、ユキと同じく光学迷彩が効かなかった人物がいたことを思い出すワルツ。


「ところでワルツ様?」


首を軽く(かし)げながら、今度はユキが尋ねてくる。


「まさかと思いますけど、このまま歩いて行くのですか?」


「まぁ、歩いていくっていうのも嫌いじゃないんだけどね・・・」


「もしも陸路を歩いて行くのでしたら、途中で『大河』を超える方法を考えなくてはなりませんよ?」


「大河?何?大河って・・・」


ワルツがそんな疑問を呟くと、


「あ、もしかしてワルツ様知らないんですか?人間の領域と魔族の領域を隔てている河のことですよ?」


ユリアが口を挟んでくる。

他、ルシアやシルビアも興味深げに聞き耳を立てているところを見ると、2人も『大河』について詳しく知らないのかもしれない。


「えぇ、知らないわ。でも、ただ大きいだけの川なら普通に渡ればいいんじゃないの?(吸血鬼でもあるまいし・・・)」


「いや、それが渡る方法が無いから、大変なんですよ。まぁ、そのおかげで、人間と魔族が大規模に衝突しなくて済んでいるとも言えるんですけどねー」


「ふーん・・・で、どんな川なの?」


「・・・全く知らないんですね?それなら、行ってからのお楽しみということで・・・ということでどうでしょうか?ユキ様?」


「そうですね。そのほうが良いかもしれません。きっと驚かれますよ?」


「・・・じゃぁ、楽しみにしておこうかしら?」


そう言いながら、見たこともない景色を思い浮かべて、笑みを浮かべるワルツ。


「それで、普通に歩いて行くと、大河まで時間もかかるし、渡るにも『川渡し』を探さなくてはならないので、結構大変だと思うのですが・・・」


そしてユキは、最初の質問に戻った。

普通に考えて、1000kmを超える路程を徒歩で進むというのは、無謀としか言いようが無いのである。


「・・・一応、聞いておきたいんだけど、貴女はどうやって移動してきたの?」


「そうですね・・・時には徒歩、時には馬車、時には・・・魔物に乗ったこともありましたね・・・」


ボレアスからミッドエデンへの路程を思い出しながら語るユキ。


「中でも大河を渡るときは大変でしたよ。魔法が使えないですから、凍らせるわけにもいきませんでしたし・・・」


「ふーん・・・そんな特殊空間があるのね・・・」


「特殊空間というか・・・まぁ、その詳しい話は着いた時にしましょう」


「気になるわね・・・ま、いいけど。さてと・・・この辺でいいかしら?」


辺りに人の姿が無くなったことを確認して、ワルツは言った。


「じゃ、飛んで行くわよ?」


「はい?あの・・・ユリア様やシルビア様が飛べるっていうのは分かるんですけど、流石に2人がボクたちを連れて飛ぶというのは難しいのではないですか?」


そんなユキの言葉に、彼女を除いた全員が笑みを浮かべる。


「・・・もしかして、ワルツ様もルシアちゃんも飛べるんですか?!」


「えぇ。むしろ私の場合、重力制御を使って移動してるから、何か特別な理由がない限り、歩いて移動することなんて殆ど無いんだけどね・・・」


「はあ・・・」


ワルツの言葉が理解できない様子のユキ。

実のところ機動装甲は、某ネコ型ロボット張りに、数mmほど常に浮かんでいるのである。

そうでなくては、建物に入った途端、自重で床を抜くことになるだろう。


「というわけで、皆?飛ぶわよ?」


「うん!じゃぁ競争だね?ユリアお姉ちゃんとシルビアお姉ちゃん!」


そんなルシアの言葉に・・・


ブフッ!!


「ちょっ・・・ちょっと待ってねルシア・・・ちゃん」

「え、えっと、ティッシュ、ティッシュ・・・」


そう言いながらハンカチで鼻を押さえて、ティッシュで詰め物を作るユリアとシルビア。


「・・・どうして二人共、鼻血を出してるの?」


「・・・・・・季節柄、乾燥しているからですかね・・・」

「はい。実は鼻血が出やすい体質なんですよ」


「なんか大変そう・・・お大事にね?お姉ちゃんたち?」


『大丈夫です!』


ユリアとシルビアは2人同時に返事をした。


「・・・2人共?そろそろ茶番は良いかしら?」


『あ、はい』


「・・・茶番なのは否定しないのね・・・」


ともあれ、全員、準備は整ったらしい。


「じゃぁ、ユキは私が連れてくわ。・・・ルシア?あんまり飛ばし過ぎちゃダメよ?貴女は良いかもしれないけど、ユリアたちが追従できるとは限らないんだから」


だが、そんなワルツの忠告を聞いたユリアとシルビアが抗議する。


「ワルツ様・・・空でこそ、翼を持つ私たちの真価が発揮されるのですよ?」

「その通りです。まだ、空に上ってから日の浅いルシアちゃんには負けませんよ?」


どうやら2人ともやる気満々らしい。


「んー、まぁ、程々にね。それと、後で高速飛行に移るから、みんな体力は温存しておいてよ?」


「うん、分かった」


「かしこまりました」


「お任せ下さい!」


そして、


「それじゃぁ、行っくよー!」


ドゴォォォォン!!


いの一番で、ルシアが砲弾のごとく空へ上がっていった。


「あ、フライングですよ!ルシアちゃん!」


ドゴォォォォン!!


シルビアも同じような勢いで飛び立っていく。

彼女の翼が真っ白になっているところを見ると、一時的に天使化しているらしい。


「・・・うん、どうやっても追いつけない気しかしないので、私はワルツ様に付いてゆっくり飛んでいきますね」


2人が上げた土煙を前に、死んだような眼をして早くも戦意を失ったユリアが言った。


「あら、そう?まぁ、無理はするものじゃないわね」


そう言うとワルツは、機動装甲の腕で、ユキとユリアを掴む。


『ひゃん?!』


「ゆっくり飛んでたら、いつまでたっても2人は追いつけないわよ?・・・とぅ!」


ドゴォォォォ・・・!!


・・・こうして、ルシアを先頭とした、超音速レースが始まったのである。

何か補足することはあったかのう・・・。


もしも何も無かったら、味噌汁に豆腐とお揚げと高野豆腐を入れた話でもしようかと思ったのじゃが・・・誰得になるので自重するのじゃ。


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