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14.11-18 登校18

   ドゴォォォォンッ!!


「さて、お昼ご飯を食べたら、迷宮探索に行きましょうか」


「「「いやいやいや」」」

「それはおかしい」


 鳴り響く轟音を完全に無視して、ワルツは昼食を提案した。まるで彼女の耳には轟音が聞こえていないかのようだ。


 ワルツがグループメンバーの反応を無視して、バッグの中から弁当を取り出そうとしていると、ラニアの町の方から大きな黒煙が上がる。何かが断続的に爆発しているらしい。


 空に向かって勢いよく突き抜けていく煙を指差しながら、ミレニアは言った。


「ほら、ワルツさん!何か問題が起きてますよ?!」


 対するワルツは「はぁ」とあからさまに溜息を吐いて、逆に問いかける。


「じゃぁ、貴女は私にどうして欲しいのかしら?問題を解決してこいと?」


「それは——」


 ミレニアは考える。ワルツたちは学生ではあるが、この国の人間ではない。それも、外国の政府高官とも言える人物だ。にも関わらず、今、ラニアの町の中で起こっている出来事に首を突っ込ませると、政治的な問題を生じさせることに繋がるのではないか……。学生の模範たるために、困った者たちに手を差し伸べるというのは当たり前のことだと反射的に考えてしまったミレニアは、冷静になって考えを巡らせて……。そして苦々しく歯を食いしばった。思い通りにならない現状に悔しさを感じているらしい。


 一方。


「ワルツ!行こうぜ!」


「ちょっ?!」


 ジャックはミレニアよりも遙かに単純だったようである。


「町で困ってるやつがいるかも知れないんだ。助けられる内に助けられなきゃ、あとで後悔するだろ?」


 ジャックはそう言ってワルツの事をジッと見つめた。


 対するワルツは、"後悔"という言葉に反応していたららしく、「んー」と言って黙り込む。


「(まぁ、色々言い訳を付けて争いごとに首を突っ込まないようにすることは出来るけれど、後悔しないかと言われれば、絶対に後悔するのよね……)」


 これまでもワルツは、できるだけ厄介ごとに関与しないようにしてきたものの、結局は何だかんだと首を突っ込んできたのである。その背後にあったのは、人(?)としての正義感でもなければ、力あるものとしての義務感でもなく、ただひたすらに後悔したくないという気持ちだけ。


 ゆえに、ジャックの指摘はワルツの思考へと突き刺さり……。後悔することを否定できなかったワルツは、その重い腰を上げることになる。


「そうね……。確かに。後悔するかもね……」


 ワルツはそう言って弁当を鞄の中に仕舞った。


 そんな彼女の行動を見たジャックは満足げな表情を見せていた一方で、ミレニアとハイスピアは驚いたような表情を見せていたようである。なぜワルツがジャックの言う通りに動こうと思ったのか、2人とも理解出来なかったのだ。少なくとも、論理的な行動には見えなかった。


 そんな2人に気付いて、ワルツは振り返る。


「ん?何?」


「「…………」」ふるふる


「ふーん。まぁ、いいけど」


 言いたいことがあるなら言えば良いのに……。そんな事を考えながら、ワルツが町の方へと歩いて行こうとすると、同行後初めて、グループメンバーのラリーが、疑問らしい疑問をワルツへと向けた。


「……ワルツ。何故行く気になった?」


 論理的ではない行動を見せるワルツを前に、ラリーもミレニアたちと同じような疑問を持っていたらしい。


 対するワルツには、ぶっきらぼうに問いかけるラリーの言葉使いを気にした様子ない。彼女はラリーの方を振り返ることなく、町の方を見つめながらこう言った。


「さぁね。強いて言えば……気分、かしらね?」


 ワルツのその非論理的な返答に、ラリーは尚更に眉を顰めるが、彼はそれ以上、ワルツに問いかけることはしなかった。問いかけたところで、期待するような返答は戻ってこないと思ったのか、それとも単に納得しただけなのかは定かでない。


 こうして一行は、ラニアの町へと向かって歩いて行くのだが……。その際、ハイスピアが——、


「あのー……保護責任者としては……あまり同意できないのですが……」ぼそっ


——何かを言っていたようだが、ワルツたちの耳には入らなかったようだ。


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