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14.11-06 登校6

 教室にいた生徒(?)の内、マリアンヌだけは入学試験を受けるためにハイスピアによってどこかへと連れていかれた。ハイスピアが早めに教室に来たのは、ワルツたちに教室の変更を伝える事だけが目的ではなく、マリアンヌのことを連れて行くことも目的の一つだったらしい。


 結果、ワルツたちは、次にハイスピアがやって来るまでの間、教室で待機することになったわけだが——、


「あぁ……憂鬱だわ……」


——待ち時間の間、ワルツはぐったりと机につんのめっていた。余程、見知らぬ生徒たちと一緒に授業を受けることが気に入らなかったらしい。いや、気に入らないと言うよりは、ストレスフルに感じていたと言うべきか。


 そんなワルツ以外の者たちは、大体、前向きな反応を見せていたこともあり、彼女の反応は、教室の中でも、かなり目立っていたようである。皆、にこやかに明るい表情を浮かべているのに、ワルツだけがどんよりとした気配を纏っていたのだ。それも、クラスメイトたちに囲まれたその中心で。


「お姉ちゃん、気にしなくても大丈夫だと思うよ?最悪、何か取り返しのつかないことをしたとしても、テレサちゃんがどうにかしてくれると思うから」


「そうなのじゃ。もしも癇癪を起こして教室を壊してしまったとしても、ポテがおる故、何も問題はないのじゃ」


『えぇ、お任せ下さい。一瞬で教室を直して見せましょう!それに……もしも空気が良くない方向に向かったとしても、ここにはムードメーカーのアステリアさんもいらっしゃいますから、彼女に任せておけば大丈夫です!』


「え、えっと……頑張り……いや、やっぱり無理です!」


 アステリアにとっては、流石に無茶が過ぎたらしい。


 ただ、皆のワルツに対する心配は、ちゃんと本人に届いていたようだ。


「……まぁ、そうね。起こってもいない事を心配するなんて、確かに無駄よね。……うん!分かったわ!私、覚悟を決める!」


「「「『…………』」」」


「……うん?何?」


「「「『…………』」」」ふるふる


 ワルツが急にやる気を出した様子を見たルシアたちは、先ほどとは180度異なり、今度は何故か難しそうな表情を浮かべていた。ワルツの事を心配するかのようだ。どうやら、皆、元気になったワルツの反応に心配を覚えてしまったらしい。これまでの経験から、テンションが上がった様子のワルツをこのまま放置しておくと、トラブルが起こるような気がしてならなかったのだ。


 しかし、せっかく元気になったワルツのテンションをまた落とすのもどうかと思ったらしく、4人は思わず顔を見合わせた。その結果、彼女たちが辿り着いたのは様子見。それこそ、問題が起こりそうになった時には、自分たちが火消し役になろうとアイコンタクトを交わしていたようである。まぁ、伝わっていたかどうかは微妙な所だが。


「変なの」


 一人だけ状況が理解出来なかったためか、ワルツは首を傾げていると——、


  ガラガラガラ……


——教室の扉が開く音が部屋の中に響き渡る。


 その音を聞いたワルツは、教師のハイスピアが戻ってきたのかと考えるが、そこにいたのはハイスピアではなく、本来であればこの教室には来るはずのない生徒たちだった。


「あら、皆さん、おはようございます。早いわね?」


 最初に教室に入ってきたのはミレニアである。何食わぬ顔で教室に入ってきた彼女は、空いていた席に腰を下ろした。まるでこの教室が自分の教室であるかのようにだ。


 そんな彼女に続いて——、


「おはよう……お?今日はその格好か!ポテンティア!」


——ミレニアのクラスメイトであるジャックも入ってくる。彼もまた、自分が教室を間違っているとは微塵も思っていない様子で、席に腰を下ろす。


 もしかして、自分たちが教室を間違えたのだろうか……。ワルツたちがそんな心配に襲われ始めていると——、


「えっ……ええっ?!」


——何やらミレニアが奇声を上げ始めた。それも、ポテンティアのことを真っ直ぐに見つめたままで。


 というのも、女装している(?)ポテンティアの姿を見るのは、ミレニアにとって今日が始めてのことだったのである。そのせいか、ミレニアはそもそもポテンティアの存在に気付いておらず……。二重の意味で驚いてしまったらしい。


 その間にも、あまり知らない生徒たちがどんどんと教室の中へと入ってくる。その様子を見たワルツたちは、事情が飲み込めていなかったこともあり、困惑を隠せない様子だった。


 そんな彼女たちの混乱が解決するのはハイスピアが戻ってきた後になるのだが……。それまでの間、教室の中にカオスな空気が立ちこめたのは、いうまでもないだろう。


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