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14.11-01 登校1

 そして次の日。


 今日から再び授業が始まる。ワルツたちにとっては普通の登校日だ。


 しかし、第一皇女マリアンヌにとっては、入学のための試験がある日である。彼女にとって、人生で初めての試験だ。


   コンコンコン……


『マリアンヌさん。そろそろ時間ですが、準備はよろしいでしょうか?』


 ポテンティアがマリアンヌの部屋の扉を叩く。試験や授業が始まる時間と移動時間、それに食事の時間を考えても、優に1時間ほど時間が余る計算だったが、ポテンティアたちにとってはそれが普段の登校時間。特段、早いというわけではなかった。


 マリアンヌもそのことは事前に話を聞いていて知っていたようである。しかし、今、この時点における彼女は、慌てに慌てているようだった。


「ああああああ!」バタバタ


『あの……マリアンヌさん?』コンコンコン


 何やら、部屋の中でバタバタとしているマリアンヌのことが心配になったのか、ポテンティアは更に扉をノックした。しかし——、


「ちょ、ちょっ……ふべっ?!」ドスンッ


——部屋の中にいるマリアンヌから明確な返答は無く……。何やら大きな音すら聞こえてくる始末。


 いったい何が起こっているのか……。心配になったポテンティアは——、


『えっと……開けますね?』がちゃっ


——何か想定外のことが起こっているのではないかと思い、マリアンヌの部屋の扉を開くことにした。


 その結果、ポテンティアの目に入ってきたのは、どこから持ち込んだのか、山のように積まれた大量の服と、そこに埋まっていたマリアンヌの姿だった。


『あの、何をされているのですか?』


 ポテンティアが心配そうな様子で問いかけると、マリアンヌはポテンティアを見て固まった。理由はただ一つ。


「み、み、み——」


『み?新手の鳴き声でしょうか?』


「見ないで下さいましっ!」


 服に埋もれるマリアンヌが、ほぼ全裸状態だったからだ。


  ◇


『……なるほど。ドレスコードで悩んでいたと』


 顔を真っ赤にしたマリアンヌを前に、ポテンティアは急遽、少女の姿に変わることにした。性別というものをあまり気にしないポテンティアでも、流石に、マリアンヌが羞恥で顔を赤らめていると気付いたのだ。


 その結果、マリアンヌの反応は大きく変わり、羞恥から一気に戸惑いの表情へと変化する。ポテンティアがまさか、少年から少女に変わるとは思っていなかったらしい。


 それゆえか、マリアンヌはほぼ全裸状態のまま、半分呆然とした様子でポテンティアに対して事情を説明することになる。彼女曰く、空間魔法で荷物を亜空間に収納する事が出来るらしいのだが、その中に仕舞ってあった服の内、どれを着ていこうかと悩んでいる間に、いつの間にか山のように服を取り出してしまったという話だ。そこにポテンティアがやってきて、大混乱に陥り、現在に至ったのだという。


「え、えぇ……。普段は侍女がお洋服を着せてくれていましたの。だから、何を着て良いのかよく分からなくなってしまって……」


『そういうことでしたか。でしたらこれでいいと思いますよ?』


 と言いながら、床に落ちていた服の中から適当に選ぶポテンティア。清楚感漂う白のワンピースだ。なお、ポテンティアの趣味かどうかは不明である。


 そんな彼女(?)に向かって、マリアンヌは問いかけた。それも恐る恐るといった様子で。


「あの……ポテ様?失礼な事かも知れませんけれど、ポテ様は……男の子なのですの?それとも、女の子なのですの?」


 ポテンティアの見た目は、基本的に中性である。あとは髪が長いか、短いか。服が男物か、あるいは女物か……。それだけの違いで、ポテンティアの見た目は、男の子にも女の子にも見えたのである。


 対するポテンティアは、『僕が着ても良いかも知れませんねー』などと、マリアンヌに差し出した服を自分の肩に宛がいながら、くるりとその場で一回りして、そしてマリアンヌにこう答えた。


『僕は僕ですよ。見れば分かりますよね?』にこっ


 花が咲くように可憐な笑みを浮かべるポテンティアを前に、マリアンヌは再び顔を赤くしながら悩んだようである。


「(……結局、どっち?)」


 疑問を顔に浮かべるマリアンヌだったものの、ポテンティアはその様子に気付いているのか、いないのか……。まるで、話の内容を誤魔化すかのように、『やっぱりこれですね』と言いながら、服をマリアンヌへと手渡した。


 結果、ポテンティアの性別の話は有耶無耶になり……。この日からマリアンヌは、ポテンティアの性別について悩むことになったのである。


ああああああ!10月が終わるのじゃぁぁぁっ!!

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