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14.10-11 研究11

   ドゴォォォォォ……!!


 莫大な魔力にモノを言わせ、空を超高速で移動するルシア(とワルツ)の姿は、地上から見ると、さながらロケット、あるいはミサイルのようだった。音速を超えて大気を赤熱させながら移動する彼女たちの姿は、光点のように輝いていて、爆音と爆風、それに魔力をまき散らしながら、真っ白な直線を空に描いていたのである。


 その様子は、彼女たちの進路上にあったレストフェン大公国の公都でも観察出来たのだが、公都では当然ながら大騒ぎになっていた。具体的には、学院が()()何か新兵器を開発したのではないか、と。


 この時、公都では、先日のエネルギアの件や、砲撃の件などもあり、ジョセフィーヌを匿う学院に対して敵対的な行動を取るべきだと考える者たちは少数派となっていて……。ルシアたちの姿——もとい空飛ぶ光点を見た公都の重鎮たちは、慌ててジョセフィーヌとの和解の道を模索しようとしていたようである。彼らには、どう頑張っても、短時間で空飛ぶ新兵器(?)の開発など出来ないからだ。


 一方、ルシアとワルツは、自分たちが地上でどう思われているなど知る由もなく……。呑気に空の旅を楽しんでいたようだ。


「公都って、空から見ると真ん丸なんだね」


「丸い町って多いけれど、どうして四角い町は無いのかしら?五角形とか六角形もありそうで無いし……」


「そういえばそうだね。多分……線を引くのが大変だからじゃないかなぁ?」


「丸の方が面倒臭いと思うけれど……」


 そんな取り留めの無い会話をしながら、ワルツとルシアは空を進んでいく。


 2人は、公都を通過して数秒後に、海へと到達する。音速を遙かに超えた速度で移動していたために、国を横断するのはほぼ一瞬と言える時間であり、海を越えるのも10分程度しか掛からない見込みだ。


 その圧倒的な速度を体感しながら、ワルツは納得出来なさそうに「んー」と唸った後、ルシアに対して問いかけた。


「ちょっと、ルシア?前より速くなったんじゃない?」


 まだワルツに機動装甲があったとき、彼女たちは共に空を飛んで競争したことがあったのである。その際、ルシアのトップスピードは、およそマッハ3。しかし今は、その3倍以上の速度が出ているようだった。


「また最近、魔力が強くなってきてるんだと思う(テレサちゃんに魔力を融通し始めた頃からかなぁ……)」


「……身体、大丈夫?」


「うん?全然問題無いよ?」


「(本当かしら?ミッドエデンに戻ったら、ついでにカタリナに見て貰った方が良さそうね……)」


 と、思いながらも、ワルツは悩む。公都に戻って、カタリナの診察を受ければ、レストフェン大公国に戻して貰えなくなる可能性を否定できなかったからだ。


「(まぁ、レストフェンに戻ってから呼んでも良いかしら?今日中には見てもらえるでしょ)」


 どうせカタリナは、コルテックスの"どこ()でもドア"を使っていつでも好きなときに移動出来るのだから、レストフェンに戻って落ち着いた時に呼べば良い……。彼女にルシアの事を診て貰うのはそれでも遅くない、とワルツは判断したようだ。これがもしも、ルシアの身体に不調や異常があったなら話は別だったはずだが、本人が問題無いというので、大きな問題とは捉えなかったようだ。


 そうこうしているうちに、ミッドエデンのある大陸が見えてくる。


「やっぱ、速いわね……」


「もっと上げる?」


「いや、十分速いからこのままで良いわよ。っていうか、下手をすれば、他の人たちの転移魔法並の速度で移動しているわよね?これ」


「転移魔法は一瞬だから、流石に転移魔法の方が速いんじゃないかなぁ?」


「魔法を唱えてから発動するまで時間は掛かるんだし、それにみんな、ルシアみたいに長距離の転移魔法を使えるわけじゃないんだから、こっちの方が速いわよ。絶対」


「そうかなぁ?」


 などと口にしている間に、2人はミッドエデンの領空内に侵入する。現在の移動速度はマッハ10以上。四捨五入して秒速10kmで移動しているとしても、10秒で100km。ちょっとした会話を交わしている間に、大陸間を横断できるほどの速度だ。


 その結果、瞬きを何回か繰り返すだけで、ミッドエデンの王都が見えてくる。2人はその様子を空から眺めていたわけだが——、


「「……え゛っ」」


——彼女たちは揃って驚いたような声を上げてしまう。どうやら目を疑ってしまうような光景が、そこに広がっていたようだ。

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