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14.9-51 遭遇51

「ポテ様とどんな会話をしていたか、ですか……」


 マリアンヌは思い返す。艦橋に机と椅子を用意してお茶をしながらワルツたちを待っている間、自分はポテンティアたちとどんな会話をしていたのかを……。


「……取り留めのない会話でしたわ?町に近づいてきた兵士たちをどうするのか相談したり、夕食は何がいいかについて話し合ったり……」


 マリアンヌは、ジョセフィーヌに対し、ポテンティアたちとお茶をしながら待っていたことを言わずに伏せた。彼女は直感したらしい。ポテンティアとお茶をしていたことを口にすると、何か良からぬことが起こる気がする、と。


 対するジョセフィーヌは、「そうですか……」と安堵したかのような反応を見せながら、マリアンヌに対し、こう口にした。


「正直に申しますと、マリアンヌ様について、良からぬ噂を耳にしたことがあるのです」


「……それは、いったいどのような噂でしょう?(……まさか……)」


 マリアンヌは、内心で冷や汗をかいていた。まさか、自分の所業がワルツたちにバレる前に、ジョセフィーヌ本人にバレてしまったのではないかと思ったのだ。


 しかし、どうやら違ったらしい。ただし、彼女の予想とは違ったからと言って、答えやすい話題というわけではなかったようだが。


「人間関係の噂です。宮殿では、多くの殿方を侍らせていたとか……」


「えっ……」


 マリアンヌの皇族としての仮面が剥がれる。寝耳に水といった様子だ。


 そんなマリアンヌの反応を見たジョセフィーヌは、怪訝そうに眉をひそめたようだ。どうやら、彼女にとっても、マリアンヌの反応は、予想外のものだったらしい。


「そのようなことはない、と?」


「まったく身に覚えはありませんわね。そのようなことを言われたのは、今日が初めてですわ?」


 マリアンヌは、本当に身に覚えがなかったので、ジョセフィーヌの問いかけを真っ向から否定した。


 そんなマリアンヌが、魔法で第一皇女の座を得てから何をしていたのかというと、端的に言えば好き勝手をしていたのである。ただし、そこに、男たちを侍らせて遊んでいた、という事実は無い。


 彼女は魔女であり、遊んでいる暇があるくらいなら、研究に没頭していたい人物なのである。皇女の座を得たのも、自分の力だけでは手に入れられない様々な研究材料を集めるためなのだ。その研究材料に男性に関係するものはいっさい含まれておらず……。マリアンヌが頭を悩ませる限り、どう考えても男を侍らせるなどという噂が立つとは考えられなかった。


 ゆえに、マリアンヌはジョセフィーヌに対して逆に問いかける。


「ちなみに、どんな噂ですの?」


「そうですね……私が聞いたのは、ポテンティア様くらいの貴族たちを集めては、夜な夜なパーティーを開いている、とか」


「それは私ではなくて、家老が私の結婚相手を探すために勝手にやっているだけです。私自身は参加しておりませんわ?」


「あるいは、何か行事があるときは、常に殿方が一緒について回る、とか」


「未婚だと、周りの方々が放っておいてくれないのですの。とはいっても、私自身は無視するのですけれど」


「……言い寄ってくる大勢の殿方を、うまく言いくるめては、大量の貢物をさせている、とか」


「くれるというのですもの。もらうのは当然ではなくって?」


「なるほど……」


 マリアンヌの説明を聞いたジョセフィーヌは、何やら察したようである。


「つまり、求婚をしてくる殿方に対して、明確な返答はせず、貰うものだけ貰っていた、ということですね?」


「……言い方には少し棘がありますけれど、おおむねその認識で相違ありませんわ?」


 と、肯定するマリアンヌに対し、ジョセフィーヌは言った。


「では、なおさらにポテンティア様には近づいてほしくはありません」


「……えっ?」


 ここまでの話の流れで、なぜポテンティアに近づくなという展開になるのか……。理由が理解できなかったマリアンヌは、ただ唖然とするしかなかったようだ。


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