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14.9-46 遭遇46

 ワルツたちの一方的な鬼ごっこ(?)が一段落付いた頃。


「〜〜〜♪」

「…………?」

『何か嬉しいことでも?』


 空中戦艦ポテンティアで留守番をしていたポテンティア、アステリア、そしてマリアンヌは、艦橋に小さな円卓を用意して、同じく用意した椅子に腰を掛けながら、お茶を楽しんでいたようである。


 その際、マリアンヌは、とても嬉しそうな表情を浮かべていた。そんな彼女の姿を見ていたアステリアは、何かあったのかと首を傾げ……。そしてポテンティアも理由が分からなかったのか、マリアンヌに対し、直接事情を問いかけた。何でもないのにニコニコしているのが気になったらしい。


 すると、マリアンヌは茶を鼻で楽しみ、口に含んで味も楽しんでから……。艦橋に映る周囲の景色を眺めつつ、こう口にした。


「空中に浮きながらお茶を楽しんでいるようなものですもの。このような景色、皇女をやっていた頃では決して見ることなど叶いませんでしたわ?魔女も捨てたものではありませんわね……」


『飛んでいないのに良いのですか?』


「飛んでいなくても、良いものは良いですわ?」


「確かに景色は良いですよね」


 2人のやり取りを聞いていたアステリアが、マリアンヌの言葉に首肯する。


 そんなアステリアは、繰り返しになるが、ふっさふさの毛に覆われた狐の獣人で、この大陸においては蔑まれる対象だった。一般的な貴族であれば、獣人は不浄の存在として近付く事すら許さず、話をすることなど以ての外のはずだった。


 しかし、元第一皇女であるはずのマリアンヌは、アステリアに対して冷たい態度で当たるようなことはしなかった。自身も人間ではなく魔女だったためか、獣人という理由で蔑むつもりはなかったらしい。むしろ、人間社会に溶け込んで生きる異種族同士ゆえの親近感すら感じていたようだ。


「えぇ、このような景色、1000万ゴールドを出しても見られませんわ?」


「……1億ゴールドなら?」


「そこまで行けば、騎竜に乗せてもらえるかも知れませんわね」


「『きりゅう?』」


「ワイバーンのことですわ?」


『ワイバーン、ですか。見た目は凶悪に見えるのに、実は温厚で、毎朝、家の屋根の上でチュンチュン鳴いているあの魔物のことですよね?』


「えぇ……あの魔物のことですわ?まぁ、家の屋根の上で鳴いているかは、ちょっと分かりませんけれど……」


『ミッドエデンでは、家の屋根の上で良く鳴いていますよ?たまに飛竜さんが彼らの真似をして屋根に上がり、怒られているのを思い出します』


「「……えっ?」」


『あぁ、すみません。飛竜さんというのは……ほら、この方です』


 と、ポテンティアが口にすると、ミッドエデンの王城代替施設でマスコットキャラ化している飛竜カリーナの変身後(人の姿)と、彼女の変身前の姿が、3Dモデルで並べて表示される。その他、ミッドエデンの王都にある住宅の屋根でワイバーンの真似をしている姿や、王城代替施設の屋上でドラゴンブレスを放っている姿、あるいは、とても良い笑みを浮かべるカタリナに、半べその表情で追われている姿なども、スナップショットのように表示され……。飛竜カリーナがどんな人物なのか、画像を見るだけで分かるかのようだった。


 そんな画像を、アステリアとマリアンヌは、当初、驚いた様子で見上げていたようだが、次第に2人の表情が2つ別々の方向に分かれていく。


「飛竜さんって……本当に名前の通り飛竜なのですね。人の姿に化けられるのですか?(私みたいに……)」


 そう興味を持って問いかけたのはアステリアである。彼女からすれば、自分と同じように変身できる飛竜が、仲間のように思えたのかも知れない。


『えぇ、変身できます。たまに空の飛び方を教えて貰う、姉や妹のような方です』


 そんなポテンティアの発言に不満げな(?)反応を見せたのはマリアンヌだ。


「……それはご紹介いただきたいものですわね」ビキビキ


 彼女は笑みを浮かべていたようだが、額には青筋のようなものが見え隠れして、カップを握る手がプルプルと震えていたようである。相当に力が入っていたらしい。


 対するポテンティアは、マリアンヌの反応には気付いていないのか、彼女の反応に気にした様子なく、肩を竦めて、こう返答した。


『機会があればその内、ご紹介しますよ。ただ、彼女の場合はミッドエデンの王都民からの人気が高いので、こちらにやって来るのは難しいかも知れませんけれどね』


 彼がそう口にすると、どういうわけかマリアンヌは、ホッとしたような表情を浮かべた。彼女の目に飛竜の姿がどう映っていたのかは不明だが、飛竜が来ないというポテンティアの発言を聞いて溜飲が下がったらしい。


 そして、マリアンヌが茶を再び口に運ぼうとした時のことだ。


『……おや、お客さんのようですね?』


 ポテンティアが不意にそんな言葉を口にしたのは。



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