14.9-27 遭遇27
「じゃぁ、さ」
見知らぬ人々がどうしても苦手だという姉のために、ルシアは考えを巡らせた。どうすれば姉は、見知らぬ者たちと仲良く出来るのか……。
「目の前にいる人たちが、全部、イモ……じゃなくて、テレサちゃんだと思えば良いんじゃないかなぁ?」
「ちょっ……なぜそこで言い直すのじゃ?!というか、妾はイモと同じなのかの?!」
せめて、"イモ"と言わずに自分の名前だけを言えば良かったのに……。テレサはそんな憤りを感じながら抗議の声を上げる。
しかし、彼女はふと考える。
「……ん?妾がたくさん……?」
ルシアはどうしてそんな例え話を口にしたのか……。テレサが頭にクエスチョンマークを浮かべていると、ワルツの方から爆弾が投下される。
「それはちょっと気持ち悪いわね……」
「え゛っ……」
「だって、ほら、ただでさえ私に向かっていやらしい視線を向けてくるテレサが、もっと増えるって事でしょ?確かに、緊張はしないけれど、別の意味で遠慮したいわ?間違いなく、気持ち悪すぎよ?それ」
「 」ちーん
テレサは真っ白になった。ワルツから容赦の無い感想——という名の言葉の銃弾を受けて、精神をボロボロにしてしまったのだ。彼女のハートは、今や、蜂の巣状態になっていたと言えるだろう。
一方、ルシアは、自分の言葉がテレサを傷付ける原因になっていた事にまったく気付いていないのか、悪びれた様子無く、新たな犠牲者を作り出そうとする。
「んー、テレサちゃんじゃ例えが悪かったかなぁ?じゃぁね、目の前にいる人たちが全部……」ちらっ「アステリアちゃんだと思う、とかどうかなぁ?」
「え゛っ」
直前に、ルシアがテレサに対して言葉の暴力を叩き付けていた(?)ことを見ていたアステリアは、自分の名前が出てきたことで、思わず身構えてしまう。次は自分の番……。そんな懸念が彼女の脳裏を過る。
しかし——、
「まぁ、アステリアなら、全然問題無いわね」
——どうやらワルツとしては、テレサではダメだが、アステリアなら良かったらしい。
そんなワルツの発言を聞いて、テレサが再起動する。
「わ、妾は良くて、アステリア殿が良いというのは何故なのじゃ?!尻尾か?!それとも獣耳が良いのかの?!ほら、妾にも付いておるのじゃ!フサフサの尻尾と、獣耳が!」
「「いや、そういう問題じゃないし」」
「んなっ……」
「テレサの場合は、見た目が云々と言うより、まずは気持ち悪がられている理由を自分の心に問いかけてみるべきね」
「そうそう、心に問いかけてみるべきだよ。テレサちゃん」
「ふ、二人揃って、妾を追い詰めよって……。いったい妾の何が悪くて、アステリア殿の何が良いというのじゃ」
その原因を探るため、テレサはアステリアへと視線を向けた。
「……」じぃ
「なっ……何ですか?」
「…………」じぃ
「は、恥ずかしいので、こっち見ないで下さい!」
「………………」にやぁ
「うっ?!」ぶるっ
何も言わずに笑みを浮かべるテレサを前に、たじろぐアステリア。するとすかさず、ワルツとルシアがツッコミを入れた。
「そういうところよ!」
「そういうところだよ!」
「……?」
しかしテレサは気付いていない。どうやら、彼女にはワルツたちの言いたいことが伝わらないらしい。
そんな彼女にワルツとルシアが抗議の声を上げようとすると、なにやら廊下の先が騒がしくなってくる。ポテンティアたちが部屋(?)から戻ってきたのだ。




