14.9-25 遭遇25
サブタイトルのナンバリングが間違っておったゆえ、修正したのじゃ。
ジャックとミレニアは、ルシアに謝罪したつもりが、逆に彼女のことを追い詰めるというトラブルに見舞われて、冷や汗を掻いていたようである。ルシアが強大な魔力を持っていることを2人とも知っていて、彼女の機嫌を悪くすると言うことが生死に直結することを理解していたからだ。とはいえ、テレサとアステリアのフォローもあって、ルシアを宥め、どうにか謝罪を受け入れて貰えることになったようだが。
だからといって、仲良く話そうか、というわけにもいかず……。ポテンティア一行と、ルシアたちは、居間で別れることになった。ジャックとミレニアの元々の目的は、ルシアたちに謝罪することではなく、ポテンティアとの交友を深めることなのである。ルシアたちとの関係改善を急ぐ必要は無かったのだ。
「あの子……いなかったわね」
「あの子?ワルツ様のことですか?」
「あぁ、確かにいなかったな。どこか行ってるんだろうか?」
『ワルツ様ですか?彼女は……えぇ、今はちょっと外出中です。むしろ内出中?』
「「「えっ?」」」
ミレニア、マリアンヌ、それにジャックが、ポテンティアとそんなやり取りをしながら長い廊下を歩いていると——、
『どうぞ、こちらです』がちゃっ
「ここが、ポテくんの部y…………は?」
「……いや、ポテ。これは無いだろ……」
「なに……ここ……」
——3人はポテンティアの部屋へと辿り着いた。
ポテンティアに自室を案内されたジャックとミレニア、そしてマリアンヌは、そこに広がっていた光景を見て、度肝を抜かれた。ただし、何か黒い虫のようなものが、床一面でカサカサと蠢いていた、というわけではない。
「「「広っ……」」」
途方もなく巨大な空間が、そこに広がっていたのだ。
というのも、ポテンティアの家、もといワルツたちの家は、地下大空間の中でも壁寄りにあって、家から壁までは廊下が延び、隣の地下空間に繋がっていたのである。そう、地下大空間は、固い岩盤の壁を隔てて2つあったのだ。地底湖を含めるなら、3つと言うべきかか。
『ようこそ、僕の部屋へ。実は、ワルツ様やルシアちゃんたち以外の方々をここにお招きするのは初めてなのですよ』
奥行き1km、幅1km、高さ300m……。ワルツたちの家があった地下大空間よりも面積にして4倍ほど巨大な空間が、ポテンティアの私室だったのである。床や壁、天井は、むき出しの岩盤というわけではなく、まるで磨いた大理石を敷き詰めたかのように、真っ平らで均一。天井には巨大なガントリークレーンが装着され、何か重いものを吊り上げられるようになっており、直視できないほどの眩い照明が、天井や壁に無数に設置されて、部屋の中を隅々まで明るく照らし出していた。
それはまさしく格納庫。地球なら、大型旅客機やロケット、あるいは宇宙船あたりが格納されているようなサイズだ。ポテンティアの正体が空中戦艦であることを考えるなら、これでも狭いくらいなのだが、彼の正体を知らない一行は、その広さにただただ唖然として、開いた口が塞がらない様子だった。
そんな、個人の部屋とは思えない大空間を前に、ミレニアからツッコミが飛ぶ。
「いやいやいや、ポテくん?!ここって部屋と言うより、地下空間そのものよね?!」
ジャックも声を上げる、
「お前の部屋広すぎって、っていうか表かよ?まぁ、天井はあるけど……」
マリアンヌも2人に続く。
「さすがにこれは……無いですわ……」
そんな感想を口にする訪問者たちに対し、ポテンティアは困ったように苦笑を浮かべた。
『そうですか?僕にとっては狭いくらいなのですが』
「「「はあ?」」」
明らかに1人の人間が暮らすには巨大すぎる空間だというのに、ポテンティアは、なぜ狭いというのか……。一体何故、ポテンティアは、そこまでして部屋に広さを求めようとするのか、その理由を問いかけようとする3人だったが、その直前でポテンティアが話題を変えた。
『まぁ、それはさておいて。お茶をご用意しますので少々お待ちください』
とポテンティアが口にした瞬間だった。
ウィィィィン……
床からモーター音が聞こえて、ゆっくりとせり上がってくる。10m四方の床が、だ。
そして3mほどせり上がって見えてきたのは——、
「「「キ、キッチン?!」」」
——ユニット型のキッチンだった。その様子は、まるでキッチンのショールーム。3人は再び言葉を失った。
そんな友人たちを前にしても、ポテンティアの反応は変わらない。
『何かご入り用な事がありましたら、気兼ねなく仰ってください。実は他にも——』
その後もポテンティアが合図をすると、いろいろなものが床からせり上がってくる。洗面台や風呂場、クローゼットや冷凍庫などなど……。何も無いように見えて、実は床には様々なものが格納されていて、ポテンティアにとってはまさに自室と言える場所だったのである。
……尤も、ベッドやトイレなど、人が暮らす上で必ず必要と言えるものが、抜けていたり欠けていたりしたようだが。




