14.9-24 遭遇24
「あれ?」
「あなた方は……」
「お主らは……」
ポテンティアが引き連れてやってきた"友人"たちを見た住人3人組は、率直に驚いていたようである。ポテンティアがジャックとミレニアのことを自宅に連れてくるとは思っていなかったのだ。
特にポテンティアは、ミレニアのことを嫌っているはずで、事あるごとにミレニアから魔法攻撃を受けたり、自分たちのクラスを探しにやってきたミレニアのことを妨害したりと、ミレニアとは犬猿の仲のはずだったからだ。日頃、ミレニアと共に行動しているジャックについても、概ね似たようなもののはず……。そう考えていたルシアたちには、2人の来訪が予想出来なかったようである。
ところが、ポテンティアは言う。
『お二人のことは、みなさんご存じですよね?実は、兼ねてから交友を深めていたのですよ』
そんなポテンティアの発言を聞いて、ルシアたちは思う。……ポテンティアがレストフェン大公国にやってきてから、まだ1週間も経っていないというのに、いったいいつから交友を深めていたというのか、と。
しかし、3人とも、その言葉を口にすることは無かった。せっかくポテンティアが"友人"を作ったのだから、その関係に水を差すというのはどうかと思ったのだ。
「(もしかしてポテちゃん……)」
「(好きな女の子に素直になれない方……なのでしょうか?)」
「(さては、ジャックとかいう少年を踏み台にして、仲良くする腹づもりかの?)」
「(でも、ポテちゃんだし……)」
「(でも、ポテ様ですし……)」
「(でも、ポテじゃからのう……)」
絶対に上手くいかなそう……。ルシアたちがまったく同じ事を考えていると、ジャックとミレニアが急に頭を下げた。
「こ、この前はすまなかった!その……この村で初めて会ったときのことだ」
「ごめんなさい。まだ、皆さんの事をよく理解していなくって……失礼な態度を見せてしまったわ?」
そう口にするジャックとミレニアに、毒気は一切、見られなかった。2人とも、今日まで色々な事が超圧縮されたかのように目まぐるしく襲ってきてたせいか、今ではルシアたちに対する考えが大きく変わっていたのだ。
対する3人は、驚いたように一時的に目を見開くが……。中でも一番早く元の表情に戻ったルシアは、「ふーん……」と口にした後で、こんな問いかけを口にする。
「それは、私たちが獣人だったから下に見てた、ってことかなぁ?」
ルシアを含めてそこにいる3人は、3人共が獣人なのである。そして獣人たちは、この国において忌み嫌われているのである。つまり、ジャックとミレニアは、ルシアたちが獣人であるがために、敵対的な行動をとったのか……。謝られても、それが何故なのか分からなかったルシアは、謝罪の対象をハッキリとさせておきたかったようである。
対するジャックとミレニアは、頭にクエスチョンマークを浮かべるかのように困ったような表情を浮かべつつ、こんな返答を口にする。
「いや、そういうわけじゃなくて、ヤバいくらい大きな魔力を持ったやつが、学院近くの村に住みついたから、ビビっちまったっていうか……」
「えっ」
「それに見たことがない立派なお家をごく短時間の内に建てたり、村の人たちを怖がらせたり……」
「あ、うん……」
「あと、気配もスゴかったよな……。見るだけで人が殺せそうっていうか……」
「突っ込んだジャックたちが殺されないか、本気で心配したわよ」
「うぅ……デレザぢゃん゛!2人の言いようが酷いよぅ!」ぶわっ
「そんなの、妾に言われてものう……(自業自得じゃろ……)」
何を今更なことを言っているのか……。テレサは内心でそう思っていたものの、泣きそうになっていたルシアの事を流石に突き放せなかったらしく、妹(?)の頭をスリスリと撫でた——いや、撫でる以外に対応が思い付かなかったようである。
……下手な事をしたり、言ったりすれば、藪蛇になるのは目に見えていたからだ。




