14.9-21 遭遇21
地下空間にやってきた結果、ポテンティアはジャックとミレニアから質問攻めに曝される。
「あの川ってどこに流れてってるの?」
「あの太陽って太陽じゃないよな?」
「こんな空間、前には無かったわよね?」
「まさか地面を掘ったのか?」
マシンガンのごとく、ポテンティアへと質問が飛んでくるが、核心に迫る疑問についての彼の回答は——、
『国家機密です』にこっ
——実質的な回答拒否だった。2人とも、国家機密と言えば、それ以上聞いてこなくなるので、万能な返答だったと言えるかも知れない。
とはいえ、すべての回答を撥ね除けるというのも気が引けたのか、ポテンティアは可能な限りの説明を口にする。
『地底にあるあの川は言わば地下水です。下水も兼ねていて、生活排水もあの川に流されます。その後は、地底のさらに地下にある地底湖に一旦溜められてから、然るべき処理をして綺麗にした上で、地上の川へと排水されています』
「「「ち、地底の下に地底湖……」」」
ポテンティアは何を言っているのか……。ジャックとミレニアとしては、その言葉の意味は分かっても、頭が理解を拒否してしまう。
『えぇ、地底の下にある地底湖です。排水は、電気ポンプによるものと、ルs……転移魔法によるものがありますが、最近は専ら、ポンプを使って排水されています。……まったく僕の核融合炉をなんだと思っているのか……』
「「「…………?」」」
『いえ、何でもありません』
と言ったように、ポテンティアは、途中、愚痴をこぼしながら、ジャックとミレニアの質問に答えていった。その際、マリアンヌも驚いたような反応を見せていたのは、彼女も地下大空間に来たのはつい最近——どころか、昨日のことだったので、地下空間維持のメカニズムを殆ど知らなかったからからか。
一通り説明を終えた後、ポテンティアは、その場にあった鉄の箱に乗り込んだ。
『さぁ、皆さん、こちらです』
「「えっ……?」」
ジャックとミレニアは困惑する。2人ともエレベーターを知らないからだ。マリアンヌは一度乗ったことがあったので、ポテンティアに誘われるまま、彼の隣に立った。
そんな彼女の姿を見て、ムッとしたミレニアが、ポテンティアの隣に立つ。マリアンヌとは逆側の位置だ。その際、彼女は、ポテンティアの肩に自分の肩がぶつかるくらいギュッと密着したようである。ちなみにエレベーターは、それほど小さくはない。そんな幼なじみに続き、ジャックも、苦笑しながらエレベーターに乗り込んだ。
『ミレニアさん?あまり燥ぐとエレベーターから落ちてしまいますから、気をつけてくださいよ?』
「お気遣い、ありがとうございます。もしも私が落ちそうになったら、その時は——」
助けてくれるだろうか……。といった旨の言葉を口にする前に、エレベーターが動き出す。
ミレニアは、まさかエレベーターが動き出すとは思っていなかったせいか——、
「きゃっ?!」
——と驚きの声を上げて、慌ててポテンティアの腕にしがみついた。
『おっと、大丈夫ですか?』
「え、えぇ……」
と言いつつ、ミレニアは何故かポテンティアの腕を放さない。
そんな彼女の姿を見て、今度はマリアンヌが頬を膨らませた。
「……不快ですわ」ぼそっ
「『えっ?』」
「いえ、何でもありませんわよ?本当に良い景色ですわね!」
マリアンヌはそう口にすると、ポテンティアにギュッと身を寄せ、彼の腕に自分の腕を絡ませる。すると、ミレニアも躍起になって、ポテンティアの肩にしがみついた。
結果、ポテンティアの姿は、端から見ると両手に花状態。しかし、今の彼は、花が云々という状態ではなく——、
『ちょ、ちょっと、僕がバラバラになりそうですので、お二人とも、もう少し離れていただけると助かるのですが……』
——いまにも自壊しそうな状態で……。ミレニアたちには正体を知られたくなかったポテンティアとしては、人知れず焦っていたようである。




