14.9-17 遭遇17
村に到着したジャックとミレニアは、そこに広がっていた光景を見て、思わず立ち止まるほどに困惑した。2人が知っている村と、今、そこに広がっていた村の姿が、大きく異なっていたからだ。
「お祭り……じゃないわよね?」
「この村出身の人たちが一斉に帰省した……ってわけでもなさそうだな」
普段は閑散としている村の中に人が溢れていて、活気に満ちていたのである。それこそ、祭でもするかのように。
それほど大きくはないはずの村の中には、縁日のような屋台も出ていたようである。昼食を売る屋台だ。人数が限られた村では、屋台が作られるなど、それこそ祭の時くらいのものなので、何でもない日に屋台が出るというのは、本来ありえない事だった。
やはり祭りが行われているのではないだろうか……。そんなことを考えながら、2人が村の中を歩いて行くと、彼女たちは村にいる人々が大きく分けて4種類の人々で構成されていることに気付く。
1つめは村に定住する人々だ。彼らについては言うまでも無いだろう。
2つめは戦士らしき体格の良い者たちである。ミレニアたちとしては、彼らがなぜ村にいるのか、一番疑問に思えた人々だと言えるかも知れない。
3つめは獣人たちである。ただ、彼らは、他の町の獣人たちのように差別を受けている様子は無く、普通に村人たちや他の村の者たちと会話をしている様子だった。その顔には笑みすら浮かんでいて、村人たちと隔たりがあるようには見えなかった。
そして4つめは、前述以外の者たち。ミレニアたちのような学生たちのほか、他の町から来たと思しき行商人たちなど、村に広がっていた光景が受け入れられず、少し離れた場所から村の中を興味深げに眺めている者たちが少なからずいたようだ。
「なんか変わったなー、この村」
「いやいや、なんか変わった、って言葉じゃ足りないくらい変わってるでしょ……」
そう言って呆れるミレニアの言葉通り、村は大きな変貌を遂げようとしていた。ほんの数週間前には無かったはずの新しい建物が次々と建築されていて、村を取り囲んでいた壁も立派なものに作り替えられつつあったのである。まるでここに新しい町を作るかのようだ。
村の人口が増えつつあるのは確か。村の規模も大きく鳴りつつあるのも確実。しかし、何故こんなことになっているのか……。ミレニアたちには不思議でならなかったようである。
彼女たちが抱えていた一番の疑問は、どこからこれほどまでの人々がやってきているか、という点だった。村には新しく建物が建てられている最中であり、未だ住めるような状況ではないのである。では、どこか別の場所から来たのかというと、それも考えにくかった。最寄りの村までは丸一日以上の時間がかかり、大きな町(公都)に出るにも3日はかかるのだ。そんな場所から遠路遙々、大した荷物も持たずに軽装で来るなど考えにくく……。2人の頭を混乱させたのである。
ただ、2人がその理由を知るまでに、それほど時間は掛からなかったようである。2人はあることに気が付いたのだ。
「んん?なんか、あの家……ほら、ポテくんのクラスメイトの子たちが住んでる家から、たくさん人が出入りしてるみたいよ?」
木造建築が多い村の中で、唯一、石(?)を削って作られたような白い建物。その中からひっきりなしに人々が出入りしていたのだ。例えるなら、巣に出入りするアリのように。
「ホントだ……でも、なんでだ?どう考えたって、あんなに多くの人なんて家に入れないよな?」
「んー……あとは……文献でしか見たことがないけど、転移魔法の効果を持った転移魔法陣が室内にあって、どこかに繋がってる、とか……」
「どこかに……あっ!まさか……海の向こうにあるっていう国か?!」
「流石にそれは……」
「「…………」」
ジャックもミレニアも無言になる。自分たちの予想を否定する材料が見つからなかったらしい。
「い、いや、流石にそれはないでしょ」
「そ、そうだな……」
2人はそれぞれに自分たちの推測を否定して、思考を止めた。考えれば考えるほど、明後日の方向の推測が湧いて出てくる気しかしなかったのだ。
その結果、2人がワルツたちの家に乗り込もうかどうかを悩み始めた頃。家の中から見知った者たちが現れた。




