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14.9-16 遭遇16

 一方、その頃。


 学院から、ワルツたちがいた村へと真っ直ぐに架けられていた陸橋の上には、2人の学生たちの姿があった。幼なじみの2人組、ジャックとミレニアである。


2人は陸橋を歩きながら、キョロキョロと周囲を見渡すなど、戸惑いが隠せない様子だった。2人とも最近、学院から出ておらず、陸橋を歩くのは初めての事だったのだ。噂に聞いてはいても、その巨大な構造物には度肝を抜かされていたらしい。尤も、ミレニアに限って言うなら、エムリンザ帝国の冒険者たちに誘拐された際、意識が無い状態で陸橋を通過したことはあるのだが。


「こんな立派な橋を作っちゃうなんて、本当にポテくん……何者なんだろ……」


「この橋を作ったのはポテじゃないって話だぞ?えっとな……誰だったか……。まぁ、とにかく、あの獣人三人組のうちの誰かが魔法で作ったって話だ。なんたって、ポテから聞いたからな!」


「ジャックって細かいところ、適当すぎ。ちゃんと覚えておいてよ……。橋を作ったのが、実はポテくんでした、ってなったら、私たち赤っ恥を掻くことになるかも知れないじゃない」


「悪ぃ悪ぃ。()()、ポテに会ったら聞いとくわ」


 そんな2人の会話の通り、2人は今からポテンティアに会いに行くつもりだった。訪問の約束をポテンティアに取り付けた訳ではないが、2人とも、村に行けば偶然会えるだろうという安易な考えを持っていたようである。


 ようするに2人は暇だったのだ。学院の敷地内にいても、やることは勉強くらい。それはそれで重要だと言えたが、2人は試験で高得点を叩きだしたので、どこかの誰かのように追試の勉強をする必要もなく……。また、特別教室への配属が決まっていたので、予習をしようにも、予習の範囲が分からず……。せっかくの休みなのだから勉強は一時休止にして、ポテンティアの所に会いに行こう、という話になった結果、"村"へと向かって歩いていたというわけだ。


「そもそも、ポテのやつ、村にいるんかな……」


「今日は学院で見かけてないから、多分いると思うわ?ただ、他の女の子たちはいたのよね……」


「ん?ポテはいないのに、他の取り巻きはいたのか?」


「いや、あの4人はポテくんの取り巻きではないと思うけれど……」


 そう口にするミレニアは、少しだけ不機嫌そうに目を細めていた。何か気にくわない事があったらしい。


 そんな彼女の様子には気付かない様子で、ジャックはふと思い浮かんできた疑問をミレニアへと投げかける。


「ところで、あいつら、どこに住んでるんだ?」


「全員、同じ村に住んでるんじゃないの?」


「5人とも?もしかして同じ家だったりしてな?」


「……知らないわよ」


 ミレニアの言葉に、明らかにトゲが出る。どうやら彼女としては、ポテンティアがワルツたちと近い距離で生活していることに不満を感じているらしい。


 流石にジャックも、ミレニアが不機嫌そうな様子だったことには気付いていたようで——、


「あー、そうだよな……」


——と、ほとんど内容が無いと言えるような相づちを口にした。これ以上、他の少女たちの話をすると、ミレニアが怒ってしまう直感があったらしい。


 結果、2人の間で会話が途切れてしまう。下手な事を言えば藪蛇になるのは不可避。ジャックはそんな直感を持っていたようである。


 そんな彼には一つ、とても言いたいことがあった。ポテンティアの性別についてだ。ミレニアはポテンティアのことを男子だと思っているが、ジャックは逆に女子だと思っていたのである。一瞬で変身するかのようにポテンティア男子学生スタイルから、女子学生スタイルに変化した際、ジャックは確信したのだ。……ポテンティアは男装をした女子だ、と。


 しかし、そんなことを言えば、ミレニアが怒り出すかも知れず……。彼は大人しく、その言葉を飲み込むことにしたようである。ただ、いつか真実を知ったとき、ミレニアが悲しむことになるのではないか……。そんな予感を抱きながら。


 そして、2人は陸橋を渡りきり、ワルツたちが住居を構える村へと到着した。


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