14.9-10 遭遇10
そして——、
「…………」
——目を覚ましたマリアンヌが、ポテンティアに説明を受け、2階の客室から1階へと降りてくる。その隣にはポテンティアがいて、彼女の事を恭しくエスコートしていたようだ。
そんなマリアンヌは、1階のリビングにやって来て、そこにいた住人たちを見たとき、何故か目を見開いた。そしてそのまま、なぜか暗い表情を浮かべてしまう。まるで、何かに裏切られたと言わんばかりの表情だ。
いったいどういった理由でマリアンヌがそういった表情を浮かべたのか……。ポテンティアは首を傾げてしまうものの、いつまでも悩んでいる訳にはいかなかったらしく、彼はひとまずマリアンヌに対して、リビングにいるメンバーの説明を始めた。
『彼女たちが僕の同居人で、この方がワルツ様。この家のやぬs——』
「お姉ちゃんたちの妹です!」キリッ
『……は?』
ポテンティアは事情を知らなかったためか、思わず聞き返してしまう。
しかしワルツは譲らない。
「妹、です!」キリッ
そんなワルツの態度に、ポテンティアは事情を察したようだ。
『……なるほど。そういうことですか。えぇ、彼女は僕たちの妹です』
また何か面倒な病気(?)でも患ったのだろう……。ポテンティアはワルツの意図通り、彼女についての説明をスルーすることにしたようだ。
『次……この方がルシアちゃん。怒らせるととても怖いので、絶対に……いいですか?絶、対、に、怒らせてはいけません』
「ちょっとポテちゃん?それ、どういうことかなぁ?」
『他意はありません。仲良くしましょうということです』
ワルツの説明を簡単に済ませたためか、ポテンティアはルシアについての説明も簡単に済ませることにしたらしい。あるいは、ルシアに会話のボールがあると、このままでは自分の立場が悪くなる一方だと思ったから——なのかもしれない。
『彼女はアステリアさんです』
「えっと、よろしくお願いします!」ぺこり
『このようにとても礼儀正しく、お優しい方なので、仲良くして頂けると幸いです』
ポテンティアはそう言ってマリアンヌの方を振り向いた。その際、ルシアが不満げに頬を膨らませていたようだが、ポテンティアは努めてルシアと視線を合わせなかったようである。
ちなみに最後の1人であるテレサは、キッチンの方に立っているので、今のポテンティアのたちの位置からは見えていない。ポテンティアとしては、後ほど紹介するつもりなのだろう。
そんな彼の視線の先では、マリアンヌが、やはり暗い表情を浮かべていた。ゆえに、ポテンティアは問いかける。
『どうかされたのですか?』
するとマリアンヌは、ポツリと内心を吐露した。
「……ずいぶん、たくさんの女の子たちと暮らしていようですわね?ポテンティアさん?」
その一言を聞いたポテンティアは、「?」と頭にクエスチョンマークを浮かべた後、ポンッ、と何かを納得したように手を合わせてから、こんなことを言い始めた。
『なるほど。マリアンヌさんは、僕が彼女たちと一緒に生活していることに嫉妬しているのですね』
「えっ?!ちょっ?!」
歯に衣着せぬダイレクトな発言に、マリアンヌは顔を赤く染め上げるほどに慌てたようである。どうやら図星だったらしい。
そんな彼女の様子を見たポテンティアは、肩を竦めて苦笑を浮かべると、どこか言い難そうにこう言った。
『マリアンヌさんは多分、僕の性別を勘違いしていると思います』
「……えっ……ええっ?!」
『実は僕……男の子じゃないんですよ』
「そ、そうでしたの?!」
『まぁ、女の子でもないですけどね?』
「……は?」
目を点にして固まるマリアンヌの前で、ポテンティアはニッコリと笑みを浮かべると、その場でくるりと一回転した。すると、男子学生の服装をしていたポテンティアの姿が一瞬で変わり、今度は女学生の姿になる。
『こんな感じで、どちらにもなれます』
「…………」
その様子を見ていたマリアンヌは、もともと唖然としていたというのに、それに輪を掛けて驚いたせいか、ついには石像のようにピタリと動かなくなる。とはいえ、そんな彼女の内心は、石像のように硬くはなく……。荒れ狂う嵐のごとく乱れに乱れていたようである。
ポテの絵もそのうち描きたいのじゃ。
……ただし、Gスタイル以外の絵を。




