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6前-19 嵐編5

翌日の天候は雨。

最高気温の予想は22度。

この時期としては、随分と低い気温と言えるだろうか。


そんな天候の中、嘗て魔女裁判の被疑者として連れてこられた教会で、国教会教皇によるルシアの洗礼が行われようとしていた。


『・・・?!』


・・・聖職者の中には、ルシアの姿を見て、驚愕の視線を向ける者や、


『あぁ・・・』


と、感動した様子を見せながら指を組んで祈りを捧げる者。

さらには、


『・・・』


バタッ・・・


どういうわけか、気絶する者までいた。

・・・嘗ての記憶でも思い出したのだろうか。


そんな者達に対して、ルシアは笑みを送りながら歩いて行く。

もちろん、彼女の一人というわけではない。

ルシアの後ろを、テレサ(議長)コルテックス(秘書)、それに狩人が続いていた。


彼女達が歩みを進めていた教会は、数カ月前に、ワルツによってほぼ完全に破壊されたが、その後、議会から教会再建築のための予算が組まれ、ごく短時間で完全に修復されていた。

短時間で修復するために、ミッドエデンのGDP換算で1%にも及ぶ予算が再建築のために捻出されたのだが、それだけの資金が一体どこから沸いて出てきたのか。

・・・ワルツが貯め込んでいたポケットマネー(金属材料)(?)である。

お布施と言えば聞こえはいいが・・・実際のところは、破壊したことによる損害賠償金であることは言うまでもないだろう。


それはさておき。

ルシア達が、用意された控室に入り、扉を閉めると、音が遮断される作りになっているのか、急に辺りを静寂が包み込む。

そんな中、最初に口を開いたのは、狩人だった。


「ルシア。本当に良いのか?もしも逃げ出すなら、手助けをしたって構わないんだぞ?」


仲間の中ではワルツに並んで長い付き合いになっている狩人が、先程まで群衆に笑顔で手を降っていた()に、心配そうな表情を浮かべながら問いかける。


「ううん。大丈夫。だって、私は、お姉ちゃんや狩人さんの妹だもん」


「・・・すまん」


そう言ってルシアを抱きしめる狩人。


「何を今生の別れのようなことをしておるのじゃ。狩人殿」


既に立ち直ったのか、テレサには、狩人のように思いつめた様子は既に無い。


「何かさ・・・ルシアが遠い所に行ってしまう気がして・・・」


「ほう?ならば、問おう。お主、エンデルシアの勇者についてどう思う?」


「・・・そう考えると、元気が出てきたな」


今日も地下大工房のどこかで気絶しているだろう勇者のことを思い出しながら、苦笑を浮かべる狩人。


「うむ。それで良いのじゃ」


そんな狩人の表情を見て、テレサは満足気に微笑んだ。


「テレサちゃん、元気になったね」


「当たり前じゃ。ルシア嬢が元気なのに、妾がしょぼくれておってどうする?」


「そうだね・・・ありがとう。テレサちゃん」


そう言って笑みを浮かべるルシア。

だが、緊張からか、彼女の笑みが少々硬かったのは気のせいだろうか。


「では、ルシアちゃん。そろそろお化粧や着付けの準備を始めますよ〜?」


「うん。お願い、コルちゃん」


・・・そして、ルシアの勇者デビューの晴れ舞台に向けた準備が始まったのである。




「どうですか〜?」


一通り、メイクと着付けが終わったルシアに、コルテックスは問いかけた。


「うん!何かすっごく、勇者!って感じがする!」


彼女に合わせて特注で作られたライトメイル(ミスリル製)と今まで使ってきたマント、それに、ミッドエデン共和国の国章が刻まれたロングソードを手にして、鏡の前でポーズを取るルシア。


「でも、私、剣士じゃないよ?」


「形式的な物なので、そのまま身に着けていて下さい」


「ふーん。分かった」


コルテックスの言葉にルシアは(うなず)く。


「こう見ると、本物の勇者みたいじゃのう?」


「おい、テレサ。みたいじゃなくて、本物の勇者だぞ?」


「そ、そうじゃった・・・」


・・・テレサの中では、未だルシア=勇者という構図が出来ていないようである。


そんな折、


コンコンコン・・・


部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。


「どうぞ?」


既に着替えは終わっていたので、ルシアが扉に向かって声を投げると、


「今、時間あるか?」


エンデルシアの方の勇者が現れた。

どうやら今日はカタリナの邪魔をしなかったらしい。


「あ、勇者・・・さん」


「・・・無理して『さん』付けする必要はないぞ?っていうか、今度からはルシアちゃんも勇者だから、お互いに『勇者』なんて呼び合っていたら訳が分からなくなりそうだな」


そう言いながら勇者は苦笑した。


「じゃぁ、レオさんだね」


「レオさん・・・か。悪くないな」


「それで、どうしたの?レオ?」


「・・・『さん』はどこに行った・・・」


自分で『さん』付けしなくていいと言いながら、いざ付けられないと、どこか居心地の悪くなる勇者。


「・・・いや、突然、国のお偉いさんに勇者にされて、戸惑ってないかと思って様子を見に来ただけだ。その調子だと問題は無いみたいだな」


「うん、大丈夫だよ?勇者さんはいいの?こんな所にいて・・・」


本来、彼は、リアの側でカタリナの邪魔をしているはずだが・・・


「あぁ。今日はカタリナの代わりにルシアちゃんの晴れ姿を見届けに来たんだ」


事情があってリアの側を一時も離れることが出来ないカタリナの代わりに勇者がやってきた、というわけである。


「そっかぁ・・・ありがとう、レオお兄ちゃん!」


「!?」


「ん?どうしたの?」


「・・・いや、何でもない。まぁ、何か分からないことがあったら、何でも聞いてくれ。勇者の先輩として答えられることなら何でも教えてやるから」


「うん。ありがとう」


「・・・」


笑みを浮かべるルシアの姿を見て、何となくむず痒くなった勇者は、苦笑を浮かべながら頭を掻くのであった。




「さて、時間ですね〜。そろそろ行きましょうか〜」


部屋の中にあった時計に眼を向けたコルテックスが、時間の到来を告げる。


「うん。じゃぁ、みんな。行ってくるね?」


「あぁ、頑張ってこい。今日はルシアの好きなごちそうを作ってやるからな」

「あまり気を入れるでないぞ?何か失敗しても、もみ消すからのう」

「何、大丈夫だ。単に教皇の有り難いお言葉を聞いてくるだけだからな」


「では、行きましょうか」


「・・・ねぇ、その前にちょっといいかな?」


部屋を出るギリギリの所で、ふとルシアが口を開く。


「・・・何で一緒にいくのが、テレサちゃんじゃなくて、コルちゃんなの?」


「それは・・・アレじゃ。ボディーガードというやつじゃ。まぁ、お主には要らぬかもしれんがのう」


「・・・うん、多分要らないかもね」


そう言いながら、新しく作った青白いバングルに視線を向けるルシア。


「念のためですよ〜?」


「そっかー。うん、分かった。・・・それと」


そう言ってから、一瞬、ルシアの表情が曇る。


「・・・ううん、何でもない」


そしてルシアは、小さく溜息を付いてから表情を切り替えた。


「じゃぁ、行こっか?」


「では、付いてきて下さい」


「うん!」


こうしてルシアは、コルテックスに連れられて、大聖堂へと足を向けたのである。


『そんな』を文中で多用しておるのが気になる今日このごろじゃ・・・。

まぁ、よいか。


ところでじゃ。

・・・中々執筆活動が進まぬのじゃ・・・。

主殿が、

『おい○○!ハイレゾアンプ作ったから耳貸せ!』

と煩くてのう・・・。

おかげで、今日昨日と、ずっと付き合わされておったのじゃ。

ん?そういうことは、活動報告に書け?

・・・面倒じゃ。


それともう一つじゃ。

狩人殿の名は普段『リーゼ』と言う名を使っておるのじゃが、話の中で『エリザベス』という名も使っておる。

これはエリザベスの略称がリーゼだからなのじゃが・・・普通、分からぬよのう?

というわけで、近いうち、『エリザベス』→『リーゼ』に変更しておくのじゃ。

ん?『狩人』と『リーゼ』も統合しろ?

・・・面倒じゃ。

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