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14.9-05 遭遇5

『あのー、ご飯が冷えてしまうのですが……。マリアンヌさん?マリアンヌさーん?まさか死んでしまったのでは……』ぺしぺし


「……はっ?!」


 ポテンティアがマリアンヌの肩を叩くと、彼女が再起動する。


『あっ、生きていましたね。もしかして、眠いのですか?僕が喋っているのに、白目を剥いて眠っていましたよ?』


「…………」


 それは眠っているというのだろうか……。そんなことを思うマリアンヌだったが、記憶があやふやだったせいか、正しい判断は付かなかったようである。


「(……たしか、この()が2人現れて、1人に……うっ……頭が……!)」


『ん?どうかされたのですか?やはり体調が……』


「……いえ。大丈夫です」


『そうですか。では、暖かい内にご飯を食べてしまってください』


「……えっと……食欲が……」


『えっ?!ぼ、僕()作った食事を召し上がらないのですか?!』


「……食べます」


 押しに弱いのか、それとも生殺与奪の権利がポテンティアにある事を自覚しているのか、マリアンヌは、ポテンティアに言われるがまま、食事を食べることにしたようである。


 その際、彼女はベッドから立ち上がって、食事のある机の方に向かおうとした。しかし、一歩目を踏み出そうとしたところで——、


「あうっ!」ぐらっ


——体勢を崩してしまう。本人は体調に問題は無いと言っているが、身体(?)にはダメージが蓄積していたようだ。


 そんな彼女の事を、ポテンティアは——、


『おっと!危ない』すっ


——と崩れ落ちる前に支えた。そして彼は、人とは思えないような力を発揮し、軽々とマリアンヌを持ち上げてしまう。所謂お姫様抱っこで。


「っ?!」


『無理はいけません。ベッドでもお食事ができるよう準備しますので、少しお待ちください』


 ポテンティアはそう言って、マリアンヌをベッドに戻した。


 そしてポテンティアがベッドから離れて机の方へと向かった直後。彼がいたベッドの横から黒い机のようなものが自動的にせり出してくる。黒く艶のある高級感溢れる机だ。ベッドのフレームが木製で出来ているというのに、机だけ黒光りしていることが、マリアンヌとしてはとても気になっていたようだが、彼女は細かい事を気にするのをやめることにしたようだ。気にすると碌なことにならないと本能的に察したらしい。どうやら彼女は、短時間の内に、ポテンティアの非常識な生態(?)に適応したようである。


 それからマリアンヌが、再び死んだ魚のような目になりながら、思考を止めてボンヤリとしていると、ポテンティアがベッドに出来た机の上に、食事の載ったお盆を置く。食事はミッドエデンの食材と、近くの森で採れた山菜を使って作った日本食で、キノコの味噌汁、白いご飯、焼き魚とだし巻き玉子というメニューである。


『もしかしたら口に合わないかも知れませんが、その時はご容赦ください。あと、お味噌汁……このスープはまだ熱いので、飲む際は注意してください』


 と言いつつも、どういうわけか、ポテンティアは手にした箸を離さない。


 そもそも、"箸"というものの存在を知らなかったマリアンヌは、スプーンもフォークもナイフも無い食事をどうやって食べれば良いのかと悩んでいたようである。彼女が困惑の表情を浮かべていると、ポテンティアは徐にこんなことを言い始めた。


『恐らく手も上手く動かないと思いますので、僕がお食事のお手伝いをさせて頂きます』


「えっ……いや……手くらいは……」


『いえいえ、お気になさらずに。この家に滞在している間は、是非甘えてください』


「……」


 マリアンヌは困惑した。ポテンティアが何を考えているのかまったく分からなかったのだ。……自分はレストフェン大公国を裏から操り、国に混乱を(もたら)した張本人。そのことをポテンティアも知っているというのに、何故か彼は自分に対して優しく接しようとする……。そんなポテンティアの言動が、マリアンヌには理解出来なかったのである。


 しかし、拒否権は無いと思ったのか……。マリアンヌは渋々、ポテンティアに任せることにしたようだ。


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