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14.8-38 試験38

「で、この人、どうするの?」


 まさか、このままここに放置するのか……。ルシアがテレサに対して問いかけると、テレサは街の中央に立っている大きな建物の方を見ながら、アイディアを口にする。


「転移魔法であの建物の中に送り込んでおけば良いのではなかろうか?」


 それに対し、ルシアが難色を示す。


「逆にあの中から逃げてきた人かも知れないじゃん。それなのに元に戻すとか、可愛そうじゃないかなぁ?」


 すると今度はアステリアが口を開く。


「ですが、このまま見なかった事にするというのは危険ですので……やはり、衛兵のところに連れていくのが打倒なのでは?」


 アステリアのその発言に、ルシアとテレサが「「んー、それしかない(よね)(のじゃ)」」と首肯すると、ワルツがこんなことを言い始めた。


「いや、ルシアの回復魔法で怪我は治ったとはいっても、こんなボロッボロの服装のままで帰したら大問題になるんじゃない?もしもルシアが、こんなボロボロになって家に帰ってきたら、私、世界を滅ぼす自信があるわよ?」


「お姉ちゃん……(私、転んだり、木の枝に服を引っかけたりして、服を破ったりしたら、世界を滅ぼしちゃうの?)」


 ルシアが、妹思いのワルツの発言を聞いて、嬉しいような厳しいような複雑そうな表情を浮かべる一方。テレサとアステリアはワルツの言葉に同意見だったらしく、それぞれこんな言葉を口にする。


「ア嬢がボロボロになるようなことがあるかどうかはさておくとしても、確かに、服がボロボロになったままでこの者を帰すというのは、問題に発展する恐れがあるかもしれんのう」

「そうですね……。たとえ、自分で服を破いてしまったのだとしても、この方の関係者の間では、大騒ぎになるはずです」


「じゃぁ、どうする?」


 ワルツが問いかけると、ほかの3人がそれぞれ考えを口にした。


「服を着せ替える?でも、こんなドレス、どこにも置いてないと思うけどなぁ……」

「誰の目も届かぬところに転移させるというのはどうかの?たとえば他の街の憲兵に突き出す、とか」

「服がボロボロなのが問題なんですから、全部脱がせて、お城の自室に戻しておけば良いんじゃないですか?」


「アステリアのアイディアは、それはそれで問題になりそうだから却下ね。テレサのアイディアは、まぁ、悪くないと思うけど、もし、この人を連れていった先の街が、この人にとって敵対的な派閥の町だった場合、面倒なことになりそうだから、そのままじゃダメだと思うわ?あとルシアの考えるとおり、着せ替えは無理でしょうね」


 ワルツはそう口にした後で、険しい表情をすると、自身の考えを口にする。


「……やっぱ、連れて帰りましょっか」


 ワルツのその発言に、3人がそれぞれ反応を見せる。


「えっ……連れて帰るの?まぁ、お姉ちゃんがそう言うのなら……」

「ジョセフィーヌ殿みたいに誘拐するのかの?」

「あー、なるほど、別に衛兵に預けなくても、自宅にいる近衛騎士の人たちに預ければ良いって事ですね?」


「そういうこと。もう既にジョセフィーヌのことを誘拐してるんだし、1人や2人、令嬢が増えたところで問題は無いかな、って」


「「「いや……それは……」」」


「……まぁ、問題にはなるでしょうね」


 しかし、穏便に(?)事を済ませるためには誘拐するしかない、と判断したワルツに考えを改めるつもりは無く……。彼女はアステリアに対し、手の平を向けながら、こんな事を口にする。


「仕方ないから、誘拐した旨を紙か何かに書いて、衛兵か誰かに渡しましょ?アステリア?紙とペン、持ってるわよね?」


「えぇ、ありますよ」スッ「はい、どうぞ」


「……あなたのその空間魔法、ホント便利よねぇ……。自動杖で再現できないかしら……」


 ワルツはアステリアの魔法に感嘆してから、紙に文章を書き込む。


「えっと……テレサ参上、っと……」


「あぁ、身代金はとして、稲荷寿司100年分をよこせ、と書いておいて欲しいのじゃ。さもなくば、この地を未曾有の災厄が襲う、ともの?」


「ちょっとテレサちゃん?その災厄ってどういうこと?誰のことを言ってるのかなぁ?」


「……寿司は欲しくない、と?」


「いや、欲しいけど、別に、人を攫ってまで欲しくないし」


「ちょっ?!ワルツ先生?!本当に書いてるのですか?!」


 と、慌てるアステリアの言うとおり、ワルツは冗談なのか、本気なのか、テレサを犯人に仕立て上げて、稲荷寿司を要求するという旨の脅迫状(?)を書いたようだ。


 そして実際、ワルツは、ルシアの転移魔法を使って、脅迫状(?)を衛兵の詰め所に転移させたのだが……。しかし、彼女が書いた手紙は、程なくして破り捨てられることになったようである。本物の脅迫状だと思って貰えなかったのだ。


 なにしろ、ワルツが書いた手紙には、姫(?)のことが一切書かれておらず……。テレサがただ稲荷寿司を要求するだけという、意味不明な文章になっていたからだ。文を書いている内に、元々の目的を忘れてしまう、というやつである。


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