14.8-24 試験24
一部、単語を修正したのじゃ。
その日の午前中、ハイスピアが事前に伝えていたとおり、面談が行われることになった。あらゆる意味で尖っているワルツたちを前に、ハイスピアには伝えたいことがあったのだ。
ちなみに、面談とは言え、1人1人面と向かって話し合うというわけではない。ハイスピアが言いたかったことは、そこにいた全員に共通だったからだ。
「……皆さん。皆さんは自覚が無いかも知れませんが、このクラスは他のクラスに比べて非常に浮いています」
「まぁ……そうね」
「うん……そだね」
「努力はしておるつもりなのじゃがのう……」
『物理的には地面に足を下ろしているつもりだったのですが……』
「ポテ様。それは意味が違うと思います」
「やることなすこと、一つ一つが飛び抜けていて、とても目立つのです」
「ア嬢じゃな」
「ルシアね」
『ルシアですね』
「皆さん!ルシア様が可哀想です!」
「……いいの。分かってたことだから。でもテレサちゃんが言うのだけは許せない」ガッ
「は?!」
「いえ、ルシアさんだけの話ではありません。アステリアさんの抹消魔法などは、超特殊で超危険な魔法ですし——」
「そ、そうなのですか……?」
「テレサさんの幻影魔法も、完全に禁忌レベルの魔法です。複数の人々を一斉に騙すとか、おとぎ話の中くらいでしか聞いたことがありません」
「そうかの?ミッドエデンには妾よりもよほど幻影魔法に精通しておる者がおるがのう……」
「それはそれ。これはこれです。ここはレストフェン大公国なのですから、レストフェン大公国の常識も少しは考えて下さい」
「う、うむ……」
「そして、ポテンティア君。あなたの調合はどうなっているのですか?その辺に生えてる薬草から、エリクサーを作らないで下さい。エルフの秘薬が形無しになります!」
『とは仰いますが、出来るものは出来てしまいますからね……。まぁ、善処しますが……』
「是非、善処して下さい。そしてワルツ先生は……」
「……?」
「……いったいどこから突っ込めば良いものか……」
ハイスピアはワルツに対して苦言を呈する前に、頭を抱えて考え込んだ。ツッコミどころが満載過ぎて、どこから言って良いのか分からなくなっていたらしい。
そしてもう一つ、彼女が悩んでいた理由がある。ワルツにブレーキを掛けると、ミッドエデンの技術をレストフェン大公国に吸収するという学院の目的に暗雲が立ちこめる可能性があったからだ。
ゆえにハイスピアは、こう口にした。
「研究をされるのは結構です。私やマグネア学院長に見せるのも大いに結構。ですが、あまり無関係な生徒や教師たちに見られるのは避けるべきだと思うのです」
と、ハイスピアが口にすると、ワルツが珍しく行間を読もうとする。
「……つまり、ハイスピア先生は、私が学院外の誰かに引き抜かれるのを怖れているのですね?この学院にいる生徒は、学院側——つまりジョセフィーヌ側の立場にいる者たちばかりではなく、彼女に敵対する者たちもいて、そんな連中に私たちが目を付けられたりすれば、引き抜かれるかも知れない、と」
「……そうですね。確かにその通りです。私たち学院関係者の我が儘と言えるでしょう。ただ、これだけは知っていて欲しい。私の本心は損得勘定ではなくて、あなた方には自分の好きなように、学生生活を謳歌したり、研究に勤しんだりして欲しいのです。そのためにはある程度、静かにすることも必要ではないか……。それが私の言い分です」
と言って、ハイスピアはワルツの目をジッと見つめた。
対するワルツは怪訝そうな表情を見せるものの、「はぁ」と溜息を吐いて折れることにしたようだ(?)。
「……分かりました。あまり見られないよう努力はします。ですが、今回のような試験——特に魔法の試験の時は、どうにもならないと思うので、他の生徒たちとは別の場所でテストを行って欲しいです」
それはワルツからの交換条件だった。というよりも、彼女たちが平穏な学生生活を送る上で必須条件と言うべきか。次回も同じような魔法の試験があれば、ワルツは今回と同じように、簡易機動装甲を使って試験に挑むほか無いのだ。それを隠すためには、他の生徒たちとは別の場所で試験をするほか無かったのである。
そんな中で、ポテンティアが——、
『はい、先生!僕にアイディアがあるのですがよろしいでしょうか?』
——などと口にし始める。そしては彼はトンデモないことを言い出した。




