14.8-22 試験22
テストが終わった後。ワルツたちは帰宅の途についた。
その際、長い陸橋を歩く5人のメンバーの内、2人がゲッソリフェイスを浮かべていたようである。ワルツとルシアだ。どうやら彼女たちには、テストで何か気になったことがあったらしい。
ちなみにテレサは、珍しい事にゲッソリしていない。彼女にとって不安なことは何も無かったからだ。
「〜〜〜♪」
とテレサが上機嫌な様子で鼻歌を歌いながら歩いていると、彼女に向かってルシアが、恨めしそうな視線を向ける。
「随分とご機嫌だね?テレサちゃん」イラッ
「まぁ、特に問題と言える事は無かったからのう」
「ふーん……。答案用紙に名前が書かれてなかったりするんじゃないかなぁ?」
ビクゥ……
なぜかアステリアの尻尾がパンパンに膨れ上がる。
しかし、テレサたちに気付いた様子は無い。
「ふん!3回確認したゆえ、それはないのじゃ」
「じゃぁ、裏面に回答欄があることに気付かなかった、とか」
ゾワゾワッ!
なぜかポテンティアの身体の表面にいたマイクロマシンたちが、毛羽立つように波打った。
しかし、テレサたちに気付いた様子は無い。
「そんな初歩的な間違いを妾が犯すはずがないじゃろ?」
「だったら、回答欄が1つずつズレてるとか?」
「それはお主ではなかろうか?」
「そ、そんなことは無いよ?…………た、多分」
ルシアは自分で言って不安になってきたのか、顔を青ざめさせ始めた。
結果、5人中4人がゲッソリフェイスを浮かべる中、テレサは言う。
「もしも妾に問題があるとすれば、それは……単純に学力の問題だと思うのじゃ。ア嬢たちとは違って、強制学習帳の効果は妾には無いからのう。しかし、点数が低くて、何が悪いというのじゃ?学院に入学して1週間も経っておらぬのに、中間試験をやろうとしておる学院教師たちが悪いのじゃ!妾たちの点数が低くとも、何も問題は無かろう?当然の結果なのじゃ」
そんなテレサの言葉を聞いたルシアたちは、はっ、と顔を上げて、救われたような表情を浮かべた後、ある事を確信した。……テレサのテストは、決して良かったわけではなく、かなり酷かったのだろう。彼女は単に開き直っただけなのだ、と……。
なお、ワルツは、テレサとルシアの会話に大きな反応を見せることはなかったようだ。彼女はありがちなミスを犯さないよう、何度も見直したからだ。そもそも、ワルツの場合は、ミス以前の話。色々な試験で大事故(?)を起こした自覚があったので、ケアレスミスどころの話ではなかったのだ。
◇
次の日の朝。初等学科の教員たちと学院長のマグネアが集まり、会議が開かれた。議題は、中間試験において点数が高かった者たちについての報告。ようするに、特別教室に参加可能な資格を持った者たちを選抜しようというわけである。
マグネアはワルツたちに期待していたようである。彼女たちの行動はどれ一つを取っても目を見張るものがあり、授業中の態度も良好だという報告を受けていたからだ。
一通り報告を聞いた後、マグネアは一番最後にハイスピアへと水を向けた。
「では早速ですが、ハイスピア先生。あなたのクラスから報告をお願いできますか?」
しかし、ハイスピアは、マグネアの問いかけに答えない。
一体何故かとマグネアがハイスピアのことを確認すると、椅子に座っていたハイスピアは——、
「えへへへ」ゆらゆら
——どういうわけか、現実逃避モードに入っていたようだ。どうやら彼女のことを受け入れがたい何かが襲っていたらしい。




