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14.7-24 侵略24

国名を間違えておったゆえ修正したのじゃ。

リムエンザ→エムリンザ

 その頃。


「……よく聞こえなかったから、もう一度言ってもらえるかしら?」


 レストフェン大公国の隣国にある首都。その中央に位置していた大きな城の一室に、緊急の情報がもたらされていた。レストフェン大公国に潜んでいる軍の者たちから、レストフェン大公国で昼間に何が起こったのか、その情報が断片に集まってきていたのだ。


 それらの情報をまとめると、こうだ。


「学院が遠距離攻撃可能な新兵器を開発。その威力は一撃で町一つを軽々と吹き飛ばすほどで、射程は……この国どころか、この大陸全土と推測される……との報告です」


「……このタイミングで、なんてものを作ってくれるのかしら……」


 女性は机に肘をつき、頭を抱えた。なにしろ、レストフェン大公国でクーデターが起こったのは、彼女たちの暗躍があったからであり、今や彼女たちの国——エムリンザ帝国は、レストフェン大公国の大公ジョセフィーヌが潜むレストフェン中央学院と敵対関係にあると言えたからだ。つまり、学院側に、今回の反乱の影で自分たちが暗躍しているとバレると、新兵器による砲撃がいつ飛んできてもおかしくない、というわけである。


「その新兵器の情報は?」


「調べてはおりますが、学院に近付いたすべての者たちと連絡が途絶えておりまするゆえ、現状では何とも……」


「すべての者たちと連絡が途絶えた、ですって?どういうこと?皆、やられたってことなの?」


「どうも、学院の森に凶暴な魔物が住みついておるようで、雇った冒険者たちも下の者たちも、誰一人として戻ってこんのです」


「学院でいったい何が起こってるっていうのよ……。すぐに調べさせなさい!どんな手段を使っても!」


 女性は焦った様子で、大臣に対し指示を出した。下手をすれば、次の瞬間には、自分たちが"学院の新兵器"に攻撃されるかも知れないのだから、気が気ではなかったようだ。


 そんな彼女の懸念は、国の外からの攻撃だけに留まらない。


「(今はまだ情報を抑えているけれど、陛下や他の者たちに知れたら、大騒ぎになるわ……)」


 父親である皇帝や、他の皇子、皇女たちも、彼女がレストフェン大公国で暗躍していることを知っていたのである。ゆえに、学院が新兵器を開発して、それが自国の脅威になるというのであれば、それを未然に排除できなかったどころか不用意に刺激してしまった"女性"の責任を追求してくるのは必至。普通であれば、打ち首では済まないはずだった。まぁ、立場が立場なので、処刑される可能性は限りなく低いはずだが。


「(どうにかして火消しを……いえ、そうだわ!学院の新兵器を奪取出来ないかしら?そう考えれば、これは窮地と言うよりチャンス。学院は今、疲弊していて落とすのは難しくないはずなのだから、向こうが動くよりも先に新兵器を奪ってしまえば良いのよ。そうすれば、我が国にとっては大きな功績とも言えるのだし、レストフェンも私たちの手に落ちるもの!)」


 そう考えた途端、女性の顔から憂いの色が消える。


 対する大臣は、女性のその様子に気付いていたためか、目を細めながら彼女に向かって問いかけた。


「……殿下。また何か、良からぬアイディアを思い付きましたな?」


「あら?よく分かっているじゃない。学院のその新兵器なのだけれど、奪うことは出来ないかしら?」


「……そう来ましたか。しかし問題が一つあります。学院の森に潜むという凶暴な魔物をどうやって大人しくさせるのか。それさえどうにかなれば、新兵器の奪取も可能でございましょう」


「レストフェンに兵を向かわせるという話だったわよね?彼らに完全武装させて、精鋭だけを差し向ければ、魔物の1匹や2匹くらい、どうにかなるんじゃない?」


「学院の近くで大規模な戦闘を行えば、学院側に知られて、新兵器とヤらに狙い撃ちされる可能性を否定できませぬ……が、確かに、精鋭だけで近付けば、すぐにバレる事はありますまい。承知いたしました。すぐに手配いたしましょう」


「頼むわね。私の首は、あなたの手腕に掛かっているのだから」


「御意に」


 大臣はそう言って、恭しく頭を下げると、女性の部屋から立ち去っていった。


 その後で女性は窓の外に視線を向けながら、はぁ、と溜息を吐いて——、


「……潮時かしら……」


——そんなことを呟いたのだが、その声が誰かに聞かれることはなかったのであった。


 

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