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14.7-23 侵略23

 そんなこんなで大波乱がありつつも、エネルギアによる物資の輸送作業は完了した。エネルギア姉妹たちはワルツたちと離れてミッドエデンに帰ることを嫌がっていたようだが、同行していたビクトールやカタリナに諭されて、仕方なく戻っていったようである。もしかすると、彼女たちの事を派遣してきたコルテックスは、最初からエネルギアたちが戻りたくないと言い始めることを予想して、ビクトールたちのことを同行させたのかも知れない。


「ふぅ……。なんとか終わったわね」


 夜になって地下の自宅へと帰宅したワルツは、心底疲れた様子で椅子に座ると、そのままグッタリと机に突っ伏した。コミュニケーションに難のある彼女にとっては、誰かに見られている中で何らかの作業をすると、精神的に大きな負担が掛かるらしい。


 そんなワルツに対し、ルシアが珍しく苦言を呈する。


「お姉ちゃん、流石に皆のことを傷付けるような威嚇はダメだと思うよ?」


「ん?傷付ける?」


「ギアちゃんの砲撃。皆、鼓膜が破れてたよ?この国の貴族さんたちに対する威嚇射撃なのは分かるけど、ちょっとどうかなぁって思う」


「あー……うん。そうね……。あれは確かに判断ミスだったわ。警告はしたけど、まさか本当に鼓膜が破れるとは思わなくって……。だって普段、勇者とかビクトールとか、エネルギアの砲撃を近くで聞いてても、ピンピンしてるじゃない?」


「普通の人たちと、勇者さんたちを比べたらダメだよ……」


 身体のつくりがそもそも違うのだから……。ルシアはそんな副音声を言葉に込めて、肩を落とした。女装メイド勇者レオナルドは当然として、ビクトールの方もエネルギア姉妹のマイクロマシンたちが取り憑いている影響で、普通の人間と言い難いのは明らか。"人間"という種族の基準にするにはあまりに例外的な者たちだと言えた。


 ただ、ルシアはワルツの発言の理由を何となくは理解していたようである。ワルツの中にある常識や尺度といったものが、人から大きくズレている事は分かっていたからだ。何しろ、ルシア自身が人からズレた存在なのである。そんな彼女の事を受け入れている姉の尺度がズレていないわけがなかったのだ。


「そうね……次はもう少し考えてから行動するわ?」


「うん、そうした方が良いと思う。学院長先生に何か言われたんじゃない?」


「…………ちょっとね」すっ


 ルシア自身は荷物を運んでいたためにその場にいなかったものの、ワルツの所に学院長のマグネアがいる事は分かっていたので、彼女に何か言われたのではないかと想像していたようである。そして何を言われたのかについても。問いかけた疑問に対するワルツの反応が予想通り過ぎて、ルシアは思わず苦笑した。


 一方で。


 そんな彼女たちの家に、ポテンティアの姿は無かった。同じ学生をする——正確には受験をすることになったというのに、彼は同居していないかのように見えていたのだ。


 結果、アステリアが、テレサに対して問いかける。


「テレサ()()。ポテンティア()はこの家にはお住みにならないのですか?」


 どうやらアステリアの中にある序列は、テレサよりもポテンティアの方が上らしい。


 しかし、細かい事を気にしない寛大な心を持った(?)テレサは、アステリアの妙な言い回しを指摘する事なく返答する。


「ポテかの?ポテならいつでもどこにでもおるゆえ、常に同居してると言えなくもないのじゃ。……まったくもって忌々しいことにの」


「えっ?」


「お主も見たじゃろ?教室に現れたポテの姿を」


「……もしや……」


 アステリアが何かに気付いた様子で表情を曇らせると、話題の人物(?)が冷蔵庫と床の隙間から現れた。


『お呼びになりましたか?』かさかさ


 Gスタイルのポテンティアだ。なお、Gスタイルの"G"が何の略称なのかは説明を省略する。


「ほら、同居しておるじゃろ?」


「まぁ、確かに……確かにこれは受け入れがたいですね……」


『ちょっと、何ですか?二人して、そんな汚いものを見るかのような視線を僕に向けて……』


 ではいったいどういう視線で見ろと言うのか……。テレサもアステリアも同じ事を思ったようだが、2人がその言葉を口にすることはなかったようである。


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