14.7-20 侵略20
サブタイトルの番号を間違えておったゆえ修正したのじゃ。
「……至って健康です」
「は、はあ……」
診察が終わって、ミレニアがエネルギアから降りる際、カタリナはミレニア本人と、その場に偶然居合わせたミレニアの祖母のマグネアに対し、診断結果を伝えた。結果は、極めて健康。悪い場所はどこにもなかった。
「では何故、意識を失ってしまうんでしょう?」
健康だというのなら、自分はなぜこうも頻繁に意識を失ってしまうのか……。ミレニアが問いかけると、カタリナは少し離れた場所にいるワルツたちの方へとチラリと視線を送って……。そして、少し悩んでから、事実を伝える。
「可能性として最も高いのは、環境の変化や魔力の影響に敏感、というものです。ここにはワルツさんやルシアちゃん、テレサ様やポテンティアがいるので、4人の行動の影響を大きく受けている可能性を否定できません。あの4人は、その場にいるだけでトラブルを巻き起こす体質ですので」
端的に言うと、原因はワルツたちにある……。カタリナはそれをオブラートに包み込んで説明した。
果たして、本当の事を言って良かったのだろうか……。少々心配になりながら、カタリナが2人からの返答を待っていると、ミレニアが複雑そうな表情を浮かべて、とある人物の名前を口にした。
「ポテン……ティア……?」
何故、今、その名前の何に反応したのか。それともポテンティアとの間で何かあったのだろうか……。カタリナが思考を巡らせて、そういえばポテンティアの名を口にする時に、彼の名前だけ敬称を付けていなかったことを思い出すと——、
「ミレニア!」
『おやおや、診察は終わったのですね?丁度良いタイミングです』
——その場にエネルギアの艦内の見学をしていたジャックとポテンティアが現れた。艦内を一巡して戻ってきたらしい。
そんな2人がやってきた途端、ミレニアの反応に大きな変化が生じる。
「ポ、ポテンティアさま……!」そわそわ
急に顔を赤らめて、服の裾を正し、緊張した面持ちでポテンティアのことを見つめ始めたのだ。
そんな彼女の反応を見たカタリナは、何と声を掛けて良いのか悩んだようだが、心の底から湧き上がってきたとある言葉を、どうしても口の中で抑えられなかったようである。
「いや……ポテはやめておいた方が良いと思いますよ?」
『はい?カタリナ様、いま何か仰いましたか?』
「……ポテ。まさか、ふざけている訳ではありませんよね?起こりますよ?」
『えっ……何の話ですか?僕はいつでも真面目ですが……』
「……いえ、それなら止めるつもりはありません。お友達を大切にするんですよ?」
カタリナにはそれしか言えなかった。ポテンティアの正体を知っているがゆえに、彼が人間と仲良くすることがどれほどの困難をはらんでいるのか心配にはなったのだ。しかし、そのことを直接的に指摘するわけにも行かず……。彼女は遠くから見守ることにしたようだ。……いつかシュバルも同じような境遇になるのだろうかと心のどこかで考えながら。
『お友達……えぇ、もちろんですとも!』
ポテンティアは、カタリナの"お友達"発言に、少しだけ戸惑うような素振りを見せたものの、すぐにニッコリと笑みを浮かべたようだ。
そんな彼に対し、今度は学院長のマグネアが問いかける。
「そういえば、あなた、見ない顔ですね?」
『おっと、これはご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。僕の名前はポテンティア。とある国で、賢者様の弟子をさせて頂いている者です。……あっ、もしかして、学生でもないのに制服を着ている事を怒っておられるのでしょうか?もしもそうでしたら、お詫び申し上げます」
学生ではない者が学院内をうろついていれば問題になるかも知れないので、ポテンティアはマイクロマシンを使い、制服を模していたのである。それを学院長のマグネアに見つけられれば、大問題になるかも知れない……。そう考えるポテンティアだったものの、何も彼は、考え無しに制服を着たままでマグネアの前に姿を見せたわけではなかったようである。むしろ、彼は、こうしてマグネアと会話が出来る機会を見計らっていたようだ。
『お詫びついでに、実は、マグネア様にお願いごとがあるのです。僕の学院への入学を許可して頂けないでしょうか?』
どうやらポテンティアも学生になりたかったらしい。マグネアはもちろんのこと、ポテンティアが学生だと思い込んでいたミレニアとジャックも目を丸くする。しかし一番驚いていたのは——、
「ちょっ?!なにそれ、どういうこと?」
——少し離れた場所で、ポテンティアたちの会話を聞いていたワルツだった。
学院がカオスに染まるのじゃ……!




