14.7-19 侵略19
サブタイトルの番号を間違えておったゆえ修正したのじゃ。
レストフェン大公国の国民の中で、一番驚いていたと言えるのは、ミレニアの幼なじみであるジャック少年だったと言えるかも知れない。エネルギアが砲撃した際、彼がいたのはエネルギアの艦橋の中。そこで起こった出来事を、彼は誰よりも事細かに目撃することになったからだ。
時は数分ほど前まで遡る。
「なんだ……これ……」
先ほどまで薄暗かった半球状の壁や天井は、今では全方位を表示するモニタへと変貌していて、エネルギアのレールキャノンの動きを間近で観察する事が出来た。さらには、弾体の予想弾道、落下予測地点、そして惑星の精細な地図までモニター上に表示されている状態で……。
「なんだこれ……」
ジャックは驚きのあまり、それ以外の言葉が言えなくなっているようだった。
そんな時だ。
ズドォォォォン!!
と、レールキャノンから巨大な弾体が射出されたのは。
「なっ?!」
大きな音と共に何だかよく分からないものが発射され、遠くの空に消えていく……。その光景は、レストフェン大公国の人々の中では、ジャックにしか見ることの出来ない光景だった。唯一、弾体が見える位置は、弾体が遠ざかっていく発射点か、逆に弾体が近付いていく着弾点のどちらかのみ。しかも、弾体の速度はマッハ50を軽く越えていて、横から見ていたのでは、一瞬で通り過ぎるために目で追うことは困難。ゆえに、ジャックがいたエネルギアの艦橋から出なければ、弾体の姿は見えなかったのである。まぁ、それも一瞬のことで、ジャックには、黒い点か何かが飛んでいった程度にしか分からなかったようだが。
ただ、何が飛んでいったのか、ジャックにはハッキリと把握できていたようだ。というのも、弾体の情報が艦橋のモニター上に映し出されていたからだ。ルシア製フルエンチャント済みタングステン-オリハルコン合金。硬く強靱で耐熱製も高いというトンデモ弾体だ。1発辺りの金額は、レストフェン大公国を購入できるほど高価なのだが、製作者はワルツとルシアだったこともあり、実質的な費用はゼロ。もしもモニター上に1発辺りの金額を表示していたなら、ジャックはまた別の意味で絶句していたいに違いない。
とはいえ、ジャックは、現在の状態でも、驚きのあまり動けなくなっているようだった。そんな彼の視線は、モニター上に表示されていた弾体の予測位置を示す情報に釘付けになっていた。
発射された弾体は、歩けば数日かかるはずの公都の上空に2、3秒程度で到達して、そのまま海上を飛行し、"ミッドエデン"と太文字で書かれている国の上空を通過して、その後はグルグルと惑星の衛星軌道上を回り始める。発射されてから衛星軌道に到達するまではかなりの秒数が掛かっていたが、その間、ジャックは身動ぎひとつする事なく、モニターに釘付けになっていた。
そんな彼の後ろにいたポテンティアは、その間、別のことを考えていた(作業をしていた)事もあり、ここまでジャックに話しかけるようなことはしなかった。しかし、10分ほど動きがないのは流石に拙いかと思ったらしく、ジャックが無事かを確認する事にしたようだ。
『ジャックさん、大丈夫ですか?息、されてます?』
ごく稀に、驚きのあまり本当に息を止めて死んでしまう者もいることを思い出し、少々放置しすぎただろうか、と心配になりながらポテンティアが問いかけると、ジャックはポテンティアに背を向けたまま、ワナワナと肩をふるわせて……。そしてグルリとポテンティアの方を振り向いてこう言った。
「格好いい!!」キラキラ
『えっ……あ、そ、そうですk——』
「なんか色々すげぇ!!かっけぇ!!」
『まぁ、何だかよく分からないですよね……』
「何が飛んでったんだ?これ地図か?知らねぇ大陸の地図まである!椅子も浮いてるし、めっちゃ景色が良い!どうなってんだ?!」
大混乱しながら大興奮。そんなジャック少年を前に、ポテンティアはどこからどう説明して良いものかと悩んだようだ。だが、的確と思えるような答えは見つけられなかったらしく……。彼はただただ苦笑するしか無かったようだ。




