14.7-18 侵略18
サブタイトルの番号を間違えておったゆえ修正したのじゃ。
ズドォォォォン……
「……ん?エネルギアの砲撃……?」
エネルギア艦内の医務室で、ミレニアの診察をしていたカタリナは、診断書に診断結果を記入していた。そんな中で聞こえてきた音に、彼女は聞き覚えがあったらしく、実際の光景は見ていないが、すぐさまエネルギアの砲撃だと気付いたようだ。
「ワルツさんがまた何か始められたのですね」
「…………」にゅる
カタリナの呟きに、彼女の隣で大人しく診断書を覗き込んでいたシュバルがコクリと首肯(?)する。彼自身もエネルギアの砲撃や、ワルツの行動を見ていたわけではないが、状況的にそれ以外に考えられなかったらしい。
「今度は何を始められたのでしょうね」
「…………」かきかき[せかいせいふく、なの!]
「なるほど。では私たちも診断書を書き上げて、参加しましょうか」
「…………」にゅる!
果たして冗談なのか、本気なのか……。端から見る限りでは、2人の会話の真偽は不明。ただ、幸いその場には、2人の会話を聞いている者はいなかったので、問題にはなることはなかった。もしも、マグネア辺りが聞いていたなら、2人の会話を本気に捉えていたことだろう。
そんなタイミングで——、
「うぅん……」
——今まで意識を失っていたミレニアが、エネルギアの砲撃の音を聞いたためか、意識を取り戻した。
「こ、ここは……私はいったい…………っ?!」ビクッ
ボンヤリとした様子で、ベッドの上で身体を起こしたミレニアは、そこにいた黒い物体——もといシュバルに気付いて、硬直した。
そんなミレニアの視線に気付いたシュバルは、慌てて手にしていたスケッチブックに言葉を書き込む。
「…………」かきかき[我が輩はsy]
「…………」ごしごし、かきかき[わたし、シュバル!わるいシュバルじゃないよ!]
どうやらシュバルは、当初、何か別のことを書こうとしていたようだが、空気を読んで当たり障りのない挨拶を書くことにしたらしい。
しかし、それでもミレニアの硬直が解ける様子はなかったので、カタリナがフォローする。
「この子は私の家族です。イジメたりしない限りは良い子なので、出来たら仲良くして上げてください」
「は……はい……」
仲良くしてやって欲しいと言われても、シュバルの姿が得体の知れないもの過ぎて、ミレニアとしては、すぐに仲良く出来るとは思えなかったようだ。知らぬ間に意識を失って、起きたら目の前に謎の生物がいたのだ。大混乱の中でシュバルと仲良く出来る者がいるとすれば、それはきっとトンデモない適応力の持ち主に違いない。
縮こまって怯えている様子のミレニアに対し、カタリナは苦笑しながら、状況を説明した。前述したとおり、ミレニアは意識の無いままエネルギアの医務室に連れて来られたので、彼女に状況を説明する必要があると考えていたのだ。
「ここはエネルギア……空飛ぶ船の医務室です。あなたは意識を失っていたので、ここに運び込まれた記憶は無いはずです。まず、ここまでの説明はよろしいでしょうか?」
空飛ぶ船の医務室、などと説明すれば、大抵の者は混乱して、その先の言葉が頭に入ってこなくなるはずである、カタリナはそのことを理解していたので、矢継ぎ早に話を進めるようなことはしなかった。
対するミレニアは、やはり混乱していたようだが、大量の情報を頭に押し込まれる訳ではなかったためか、彼女の混乱が悪化するような事はなかったようだ。
「空飛ぶ……船?船なのに空を飛ぶんですか?」
「やはり、そこが引っ掛かりますよね。こんな感じです」ぽちっ
カタリナは壁にあったスイッチを押した。すると、医務室の中に三次元のホログラムが浮かび上がる。もともと、手術などのブリーフィングで使用するモニターだったのだが、今回、モニターに表示されたのは、エネルギアとその周辺地域。具体的には学院の姿だった。しかも、そこにいた人々や、森の木々まで、すべてが精細に再現されているというまるで魔法のようなモニターで——、
「…………」ぽかーん
——ミレニアの思考は一気に過負荷状態になってしまう。カタリナたちにとってはこれ以上無いほどの分かりやすい説明方法だったのかも知れないが、ミッドエデンの科学技術を知らないミレニアにとっては、エネルギアにしても、ホログラムモニターにしても、あるいは壁のスイッチや、天井で光るEL灯にしても、一つ一つが理解の度を超えてしまうものだったのである。
1文が長いのう……。




