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14.7-17 侵略17

サブタイトルの番号を間違えておったゆえ修正したのじゃ。

 場所は変わって……。


「さっきのあれは……何?」


 レストフェン大公国の隣の国の大きな城。そこにも、エネルギアの砲撃の音と、割られた雲の姿が見えていた。ただ、流石にエネルギア本体の姿や、レールキャノンで撃ち出された弾体の姿までは、距離が離れすぎていて見えず……。城にいた人々からは、何が起こったのかまでは分からなかったようだ。


 大きな音が鳴り響いたとき、偶然、テラスに出てきていた女性は、レストフェン大公国の方角から響いてきただろうその大きな音を聞いて、険しい表情を浮かべていた。何が起こったのか、音と割れた雲だけでは想像がつかなかったこと。そして、何より、レストフェン大公国で自分たちが()()()()()()に影響が出ていないかどうか、心配していたための表情だった。


 そんな彼女の目の前には、軍事を司る大臣の姿があった。ちょうどテラスで彼と会合しているときに、大きな音が響き渡ってきたのだ。


 大臣もまた、音と光景を見ていたので、何が起こったのか推測しようとするが——、


「大きな魔法を使ったのか、あるいは火山のようなものが噴火したのか……。現時点では情報不足。レストフェンに忍ばせた下の者たちに情報を集めさせますわ」


——エネルギアを知らない彼にも、流石に何が起こったのかは推測出来なかったようだ。


 対する女性は、すぐさま答えを言えなかった大臣のことを責めるような事はしなかった。彼に全幅の信頼を置いていたのだ。知らないのなら、本当に突然の出来事なのだろう、と。


「お願いするわ?最近、ジョセフィーヌたちに妙な動きがあるって話だし、何かやろうとしているのかも知れないもの」


「御意に」


 大臣の返答を聞いた女性は、安心したかのようにフッと微笑むと、その場に用意されていた茶に口を付けた。そして茶で口を潤わせてから、大臣に向かって問いかける。


「それで、レストフェンの掌握具合はどう?順調なのかしら?」


 レストフェン大公国の侵略作戦は順調なのか……。女性はどんな返答が飛んでくるのか楽しみにするかのように問いかけた。


 対する大臣は、やれやれ困った人だ、と言わんばかりに肩を竦めてから、こう返答する。


「昨日、今日で、事態は大きく変わらんです。現状は順調。大公は学院に追い詰めておりますし、冒険者たちの掌握も完了しております。その上、レストフェンの貴族たちも、過半数を買収済み。もはやジョセフィーヌ一派は虫の息でしょう」


「それなら良いのだけれど、何か胸騒ぎのようなものを感じるのよ。私たちの知らないところで、何か大変な事が起こっているような気がすると言うか……」


「それは、先ほどの大きな音とも関係が?」


「ただの直感よ?多分、知ってると思うけれど、私ね、小心者なのよ。自分の手の上にはない心配事があると、不安で不安で心配なの」


「えぇ、存じておりますとも。では殿下がご安心できるよう、計画を早めることにしましょう」


「それは……我が国から派兵をすると言ってるのかしら?」


「最早、レストフェンの公都は、我らの手中同然。彼奴らが我が国の軍の侵入を阻むことはないでしょう。しかし、そうですなぁ……他国が気にするかも知れませんゆえ、先ほどの大きな音を利用して、こんな言い訳をすると良いかと。……レストフェンを襲った未曾有の自然災害に、かの国の者たちを救助すべく、我が国から兵を派遣する、と。さすれば、誰も侵略——ゴホンッ、派兵を非難することはありますまい」


「なるほどね。ではそのように取り計らってちょうだい」


「御意」


 会話を終える頃には、女性の表情からはすっかりと懸念が抜け去っていた。回りくどく、面倒な作戦を実行して、追い込んでいたレストフェン大公国が、もう少しで手に入りそうだったからだ。


 派兵が実行に移されれば、あとは時間の問題……。彼女はこの時点でそう確信していたのである。


 そんな彼女の表情が跡形無く崩れ去ったのは、その日の夜になってのことだった。


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